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2000.9.12[he-forum 1274] 東京大学新聞09/12
『東京大学新聞』2000年9月12日付
任期制・文理の違い ・・・論点もさまざま 益田名誉教授「高齢化は活力の低下に」 小林副学長「若手のポスト減らさない」 優秀な人材を大学に残すためか、それとも若手の伸びを妨げるだけか―。 東大における教官の定年延長に反対する元教官らが3日、「東京大学の停年 延長を危惧するシンポジウム」を開催した。学士会館本館(千代田区神田)で 午後1時から6時まで行われ、元教官、現職教官ら約70人が参加した。これ は7月の評議会で蓮實総長が提案した、定年の年齢を2013年度までに段階 的に60歳から65歳に引き上げる、という案に反対するもの。小林正彦副学 長ら大学の要職についている教授らも招かれており、定年延長をめぐり激しい 議論が交わされた。 今回のシンポジウムのきっかけとなったのは、8月下旬にできた「問題提起 書」。定年延長に反対する意見がまとめられている。中心となって活動したの は、今年3月に理学系研究科を定年で退官した益田隆司名誉教授(現・電気通 信大学教授)。この「問題提起書」をもとに、元教官11人が世話人となって シンポジウムが開催された。 定年延長の弊害としては、優秀な若手研究者のポストが確保できないことを 挙げる声が多い。大学の活力が低下するという心配もある。 また、東大は定年を延長する理由として、[年齢による差別をせず柔軟な人 材活用をするため」としているが、「定年をなくすならともかく65歳という 年齢を設定することに合理的必然性はない」「年金支給年齢の引き上げにあわ せた保身対策にすぎない」などといった批判がなされた。 小林副学長は「柔軟な人材活用」という理由については「確かに欺瞞(ぎま ん)的である」と認めたものの、定年延長によって若手のポストが現在より減 ることはないという点を強調した。 議論のなかで、任期制の導入、文理による研究事情の違い、有効な研究評価 制度のあり方など、「定年延長反対」の側の立場の違いも明らかになった。ま た、予算の配分や教官のnoblesse oblige(高い身分に伴う義務)などに関連 して東大が「特別の大学」であるかどうかについて意識の違いが見られた。 定年延長についての最終的な結論は次回9月19日の評議会で出される。評 議員でシンポジウムに参加したのは、延長に反対している先端科学技術研究セ ンター長の岡部洋一教授のみであった。