独行法反対首都圏ネットワーク

2000.9.5[he-forum 1245] 福井新聞社説09/04
『福井新聞』2000年9月4日付社説

国立大再編・求められる地域からの視点

 国立大再編に向けた動きが加速している。本県でも、福井大で文部省の教育
系学部統合再編計画が持ち上がり、福井医科大では全国の八医科大の統合構想
が明らかになった。

 大学再編の動きは、少子化による学生数激減に備え活発化した。二〇〇九年
には入学希望者が大学の定員と同数になる「全入時代」を迎える。こうした状
況を背景に国が大学の行財政改革を矢継ぎ早に打ち出し、国立大の再編論議が
一気に加速。とりわけ大学を国から切り離して法人格を与える「独立行政法人
化」の導入は、地方国立大の危機感を高めている。

 再編の口火を切ったのは山梨大と山梨医科大の統合だった。昨年一月に話が
持ち上がり、今年五月に調印した。地方大と医科単科大の統合は、文部省も積
極的に後押ししており、全国十一の新設医科単科大と地元大学再編のモデルケー
スとみられた。事実、香川大と香川医大など既に検討に入っているところもあ
る。福井大、福井医科大の両学長はメリットが見いだせないとして消極的姿勢
だったが、最終的にはこれに沿った形で再編が進むとの見方もあった。

 しかし、夏場に入って事態は急転回。文部省は、都道府県の枠を超えた教育
系学部の統合再編方針を打ち出した。福井大にとっては、両輪の片方が他県の
大学に統合される可能性があり、教育関係者に衝撃が走った。同大の教育地域
科学部が他県の大学に統合されるようなことになれば、本県の教育システムも
根底から見直しを迫られる。

 一方、福井医大では全国の八医科大の大統合構想が明らかになった。東京医
科歯科大を核に全国の八医科単科大が統合し、医療研究分野で国際的な競争力
を発揮しようという狙い。法人化を”逆手”にとった構想で、日本ではこれま
でなかった形態だ。

 少子化に伴う大学再編の荒波の中で、福井大は国の再編策を突きつけられ、
福井医科大はその前に自ら打って出た格好。しかし、いずれにしても再編の正
否は、地域のニーズにどうこたえ、何ができるかにかかっている。

 福井大教育学部が戦後の本県の教育に果たしてきた役割はだれもが認めると
ころ。だが、これからの時代、現状の形態でよいのか論議が必要になろう。福
井医科大が医療研究の先端を担うことになれば素晴らしいが、それも研究成果
が地域に還元されてのことだ。

 地域にとって地元の大学は知的財産。国の見直し策は「まず効率化ありき」
で、必ずしも地域の実情を考慮しているとは言い難い。再編に向けた動きは今
後、目を離せない状況が続くが、地域の視点に立った論議を期待する。 

目次に戻る

東職ホームページに戻る