独行法反対首都圏ネットワーク

2000.9.05[[he-forum 1244] 読売新聞社説09/04

[教員養成大学
 ◆学校現場との緊密な連携探れ◆

 国立の教員養成系大学・学部のあり方を検討する文部省の懇談会が発足した。
いじめや学級崩壊など教師の力量がかつてなく求められる時代に、これらの大
学が十分対応できてないと指摘されて久しい。論議の行方を注目したい。

 「私の専門は物理。教育のことは知らない」。教育学部でこう公言する教授
は珍しくない。理科など教科は教える。しかし、その教科をどう教えるかとい
うことをおろそかにしてきた実態が背景にある。

 教員養成系四十八大学の教員の60%までは、そんな教科専門教員で占めら
れている。どう教えるかを教える教科教育法の教員は14%に過ぎないのが実
情だ。

 現場に即した実践的な指導は、実際に学校の教壇に立ったことのある教員に
よるのが最も自然で効率もいい。ところが、現場経験のある教員養成大学の教
員はわずかに22%しかいないのである。

 問題行動の引き金ともなる学習上のつまずきはどこで起きやすいか。どうす
ればそれを克服できるか。そういった知識、能力こそが教師に今切実に求めら
れている。多くの教員養成系大学の現状は、その求めにあまりに無関心という
ほかない。

 教員養成系大学は何のために存在するのか。その今日的な役割とは何か。懇
談会では、そうした原点に立ち返り、抜本改革の具体的な方策を検討してほし
い。

 こうした内なる危機とは別に、教員養成系大学にはもう一つ、外側からも少
子化という危機が迫っている。教員採用率が急激に低下、ここでも存在意義を
厳しく問われる事態になっている。

 教員養成課程の卒業生で実際に教員に採用されたのは、昨年度はわずかに三
割だった。八割近かった二十年前から下がる一方で、昨年度は高かった大学で
も五割、低いところでは二割を切った。

 教員配置に最終責任を持つ文部省が、管轄下にある国立の教員養成系大学で
大量の就職浪人を送り出している現実は、どう考えてもおかしい。入学定員を
不断に見直して行く姿勢が必要だ。

 それに伴う全国的な教員養成系大学・学部の再編の可能性についても、懇談
会では検討されることになる。しかし、一県一教員養成系大学という原則が崩
れることには反対も根強くある。

 現場教員の研修や相談を受け入れ、人事交流も積極的に図る。教員養成系大
学が本当にそんな教育支援センターとして生まれ変わるなら、反対意見にも一
定の説得力が生まれる。懇談会には、大学の改革とセットで大いに議論してほ
しい。

 進学校化していると批判のある付属学校のあり方も、今回の懇談会の検討項
目の一つとされている。付属学校は教員養成にどのような役割を期待して設け
たのか。その設置目的と現状とに矛盾はないのか。厳しくメスを入れてほしい。

 子どもにとって「いい先生」を学校に送り出す。教員養成系大学に私たちが
望むのは、それ以上でも以下でもない。

目次に戻る

東職ホームページに戻る