独行法反対首都圏ネットワーク |
2000.8.29[he-forum 1224] 8/17福島民報-論説
文部省はかねて論議になっている福島大学を含む全国の国立大の独立行政法人化につい て先月三十一日に初の調査検討会議を開催し、大学の将来像の青写真づくりに乗り出した 。会議は・大学の組織のあり方・人事・財政・大学の目標設定と評価のあり方-を審議す る四つの委員会で構成されている。 現在のスケジュールでは来年度中に結論をまとめる。どのような原案が提示されること になるかは不明だが、すでに今年五月に開かれた国立大学長会議の席上で、当時の中一曽 根弘文文相が「法人化によって大学の自主性が大幅に拡大し、教育研究の推進を図ること ができる」と表明してゴーサインを出している。いよいよ具体化への第一歩を踏み出した と受け止めざるを得ない。 しかし前段で紹介した中曽根文相の発言が法人化の狙いだとして、本当にそれが必要な ことなのだろうかと非常に疑問に思うのである。国立、公立、私立を問わず大学の目的は 大きく「学術研究」と「学生の教育」の二点に絞られると思うが、今回の法人化の動きが この二つの目的の充実強化に役立つとはどうしても考えられないからである。 この問題については去る六月一日付の本欄でも「国立大法人化に県民の声を」というこ とで問題提起されており、効率化の追求が進めば県内から(地方から)大学が消えてしま う心配もあるのではないかと危倶(きぐ)されている。まさに近い将来に悪夢が現実のも のとなりかねない。 今回の法人化の動きはもともと国の行政改革の一環だ。来年一月には現在の一府二十一 省庁から一府十二省庁に再編される。この中で文部省所管の国立大ももっと行政効率を上 げるように−との主張が出てきた。しかし大学の運営は経済性とか採算性、あるいは効率 化などとは基本的になじまないものなのである。科学や学術研究のテーマの大半はいわゆ る”金もうけ”とは無縁のものだし、しかも一朝一夕に成果が見える研究はごくわずかだ ろう。 学生の教育についても大赤字であることは目に見えている。六月一日付の本紙論説でも 紹介されているが理工系、医歯薬系の学部を持たない福島大の場合でさえ、入学金や授業 料など学生の納付金が二十二億円なのに対し、大学の年間運営経費は約六十六億円に上る という。国立大はみな似たような状況であろう。 筆者は国立大の法人化を一種の第三セクター化、民営化への動きと考えている。もし実 施された場合には、少子化による進学者減少傾向の中で当然のように地味で不人気な学科 や採算の合わない学部、極端な場合は大学全体の整理統合が現実のものとなろう。学生や 地域の経済的負担の増加、学生と教職員の間の意思の疎通を欠く−などの事態も予想され る。早い話、学園が荒廃することは必至ではなかろうか。 逆に現行体制の中でも各大学は中央でも地方でも国際交流や提携、補完する単位の互換 制度の導入、経済界とのネットワーク形成、地域文化を向上させるための活動、開かれた キャンパスづくりなどの努力を惜しんでいない。こうした動さを積極的に支援していくこ との方が法人化を目指すことより、よりよい大学を実現する早道ではないかと思うがどう だろう。(渡辺智衛)