独行法反対首都圏ネットワーク

2000.8.22[he-forum 1201] 岩手日報08/18 『岩手日報』2000年8月18日付

企画「冬の時代の大学改革」〜「法人」岩手大(上)

将来見据え検討加速


  岩手大はじめ全国99国立大の独立行政法人化が具体化へ動き出している。

時期を同じくして岩手と秋田、弘前の国立三大学は、単位互換や公開講座、国

際交流などで連携を検討。全国的にも大学の統廃合や連携、連合が具体化する

など国立大学改革はかつてない勢いで進む。少子化や国際化、生涯学習思想の

普及による学習ニーズの高まりなど教育を取り巻く波は高い。「独法化」をキー

ワードに、改革に挑む岩手大の取り組みを追った。



  「国立大の独法化とは1体どういうものなのか、1度話し合ってみません

か」―。北東北三国立大の学長懇談会は、吉田豊弘前大学長が発した問いかけ

がきっかけだった。



 今年2月に盛岡市内で初会合。4月に秋田、6月には弘前で集まりを持った。

その間、三大学連携へそれぞれ学内合意を取り付け、今月8日、岩手大で開い

た4度目の会合で同懇談会は推進会議に発展的に切り替わった。



 その4度目の集まりで、岩手大の海妻矩彦学長は「好むと好まざるとにかか

わらず独法化の動きが進んでいる。三大学の連携は、将来において何らかの形

で役に立つのではないか」とあいさつした。



 会議終了後の会見で「独法化にかかわるさまざまなことを話し合う場として

も有効―といった程度の意味合い」と真意≠説明した。しかし、三大学の

取り組みの底流に、将来的な独法化を意識した側面があることは間違いない。



 平成9年、行革に伴う国家公務員削減論議の中、国立大職員約12万500

0人の処遇をめぐって顕在化した独法化は当初、可能性の議論にとどまるかに

みえた。しかし昨年9月、その具体化に向け文部省が「検討の方向」を示すに

及んで、独法化はにわかに現実味を帯びた。



 岩手大事務局の野口1平庶務課長は「それまで、学内で独法化が話題になる

ことはほとんどなかった」と振り返る。これをきっかけに同月、海妻学長を委

員長に設置形態検討委が発足。岩手大でも、独法化の流れを意識した模索が始

まった。



 そして今年5月、当時の中曽根弘文文相は国立大学長らを集めた会議で「法

人化により大学の自主性が大幅に拡大し、教育研究の進展を図ることができる」

と独法化方針を正式表明。文部省が設置した調査検討会議に国大協も委員を送

り込むなど、行革に端を発した独法化は昨年から今年にかけて、国立大改革の

キーワードとして急浮上した。



 岩手大は同会議直後の6月初旬、独法化に関し初の全学説明会を開いた。さ

らに、設置形態検討委を「法人岩手大学将来構想検討委」に組織替え。法人化

の可能性を念頭に課題を精査、検討する態勢を整えた。



 一方、それまで繰り広げられてきた独法化の是非をめぐる「入り口論」は1

時棚上げ。実は海妻学長は、文相発言後の6月中旬に開かれた国大協総会で、

全大学の意向を集約した上で独法化に1定の判断が下されるものと予想してい

た節がある。



 期待≠ノ反し、国大協は最終決断を先送り。国の方針と学内世論のはざま

で、同学長は法人岩手大検討委の性格について「基本的に(独法化の)賛否を

決めているわけではない」と歯切れが悪い。



 <メ モ> 独立行政法人は行革に伴う国の省庁再編の1環。公益性が高い

業務を行う行政機関に法人格を与え、国から独立させる。運営に民間企業的な

手法を取り入れ効率化を図る。同法人通則法は▽法人役員は主務大臣が任命▽

達成すべき中期目標の策定▽第三者機関による業務内容の評価―など定めるほ

か、法人名、業務範囲などを規定した個別法により設立、運営される。



 文部省は国立大では、大学の自主性を尊重する特例を設ける方針で、来年度

中に具体案をまとめる。利点として▽国の交付金は使途を限定せず、繰り越し

も可能▽学内の手続きで学科再編ができる―などが挙げられる。



【写真=単位互換など連携事業の具体化を目指す(左から)岩手大・海妻矩彦、

弘前大・吉田豊、秋田大・徳田弘の3学長。底流に、独法化への「備え」も=

弘前市文京町・弘前大構内、6月3日】

  


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