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2000.8.20 [he-forum 1193] 河北新報08/20
『河北新報』2000年8月20日付
福島大大学院の教育学研究科と経済学研究科は平成13年4月、JR郡山 駅西口に郡山市が建設中の西口再開発ビルに、社会人向けのサテライト校(学 外教室)を開設する。大学を取り巻く状況が厳しさを増す中、地域の人材育成 に貢献するのが狙いだ。サテライト校は、福島大の地元、福島市も大学側に設 置の希望をそれとなく伝えていたが、今回の決定では全くの蚊帳の外。大学側 は「郡山市は交通の利便性もあり、県経済の中心地」と開設の理由を挙げてお り、県都福島市の熱意の乏しさと力量低下を示した形だ。(福島総局・大和孝 志) <地域貢献へ決断> 福島大大学院のサテライト校は、平成13年4月完成予定の再開発ビル(2 4階)に郡山市が設ける「ふれあい科学館」(仮称)の20階部分に開設する。 東北の国公立大としては初の設置で、授業は平日夜間や土曜日に行い、科学館 の空き時間を利用する。福島大の吉原泰助学長と藤森英二郡山市長が7月10 日、基本協定に調印した。 吉原学長は「大学はこれまで象牙(ぞうげ)の塔にこもっていたが、時代と ともに役割は変わっていく」と話し、地域貢献、生涯学習への取り組みの一つ としてサテライト校を位置付ける。少子化や独立行政法人化の流れに対する、 大学側の危機感が決断を促した。 一方、私立大しかない郡山市にとって、国立大のサテライト校開設は、人材 育成や高等教育振興のほか、都市のステータス確保への期待もある。再開発ビ ルには商業テナントなどのほか、県立定時制・通信制高校も入居。“経済都市” 郡山が、教育にも力を入れているという格好の宣伝材料にもなり得るというわ けだ。 設置の経緯について、郡山市教委は「大学側から申し出があった」としてい るが、ある郡山市議は「再開発ビル活用のため、郡山市が(誘致を)働き掛け たと聞いている。そこに生き残りをかける大学側の思惑が一致した」と解説す る。 <不信漏らす市長> 吉田修一福島市長は、郡山市への設置計画が表面化した際、「福島市に大学 側から一言の連絡もなかった」と不信感を漏らした。福島市でも市中心地への サテライト校設置を、大学側に申し出ていた経緯があったからだ。 福島大は、JR福島駅から約7キロ離れた福島市金谷川にあり、社会人が学 ぶにはいささか不便だ。生涯教育の充実とも絡めた利便性アップという観点か ら、市の中心部にサテライト校がほしいとの意見は多い。 福島大の美馬武千代経済学部長は、郡山市に設置する理由を、「県内各地か ら人が集まりやすい。距離的に来られなかった人のニーズにこたえた」と説明。 一方、福島市の梅津裕企画調整部次長は「市は既に福島大から最大の恩恵を受 けている。独占的に大学を抱え込むわけにはいかない」と、大学側の決定に理 解を示しながらも、「残念という思いはある」と話す。 <定まらない軸足> 経済面で郡山に遅れを取り、文化、学術の充実に活路を見いだすべき福島市。 同市がサテライト校の誘致に積極的に動かないまま、郡山に開設が決まってし まったことは、空洞化が進む中心市街地の活性化を図る上でも、適切な対応で あったかどうか。市内の学校関係者からは「福島市は教育の充実に金を使う気 がないのでは」と、市の姿勢をいぶかる声も聞こえてくる。 福島市は福島大の学部増設に力を入れる一方で、平成10年には、市内の私 立短大の4年制化計画に熱意を欠いたこともあり、支援を期待した短大側が4 年制化を断念。その後、市は早稲田大との提携構想を発表した経緯がある。丹 治仁志福島市議は「福島市の高等教育に対する姿勢は一貫性に欠ける」と指摘 しており、軸足の定まらない教育政策が今回の“誘致失敗”の遠因との見方も ある。