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2000.8.10 [he-forum 1177] 読売新聞8/9
2000年8月9日付・読売社説(1)
IT(情報技術)の急進展によって、科学研究の現場でも大変革が始まっている。 技術革新と歩調を合わせて改革に取り組まなければ、研究基盤はぜい弱になり、日 本の研究・開発は後れをとることになる。 九六年度から五年計画で実施された第一次科学技術基本計画は、研究投資の数値目 標の十七兆円を達成して区切りをつけた。来年度から第二次基本計画が始まるが、 その策定作業が大詰めを迎えている。 科学技術会議などで論議されてきた策定への検討課題が固まったが、いずれも重要 なものばかりである。基本計画は、科学技術の振興によって目指すべき国の戦略と して、次のようなものをあげている。 少子高齢社会と情報技術革命への対応、地球規模でのエネルギー・食料の確保、地 球環境を守るための循環型社会の構築など長期的に取り組むべき重要課題だ。 これらの目標達成には、研究環境の抜本的な改革が必要としている。 その一つが、公募型の研究助成の倍増と間接経費(オーバーヘッド)の導入だ。間 接経費は、個々の研究費から約30%を、その属する研究機関の他の研究や管理・ 運営費に回すものだ。科学研究の分野に競争原理と協調体制の導入を目指す施策だ 。 さらに、若手研究者の自立性、流動性を促進するため、三十歳半ばまでは、原則と して任期付き任用とし、助手・助教授制度を再検討する。研究成果の評価システム は透明性、公正さを確保し、評価結果を研究資源の配分に反映させるとしている。 老朽化の目立つ大学の施設改善は、最重要課題と位置づけ、重点的に整備し、産官 学の連携も促進する。また研究機関の独立行政法人への移行にあたっては、予算執 行や組織運営の弾力化を図る。 いずれも重要な課題であり、妥当な指摘も多いが、いくつか注文しておきたい。 まず研究投資の額だ。第一次と同様に、数値目標をあげる必要がある。国の負担す る研究費を欧米先進国並みにするには、少なくとも三割以上の増額が必要だ。 さらに、省庁縦割りを排除しながら施策を実行するには、強力な司令塔が必要であ る。来年一月から発足する総合科学技術会議の役割を確立することが大事だ。 人材の流動性がなければ、研究現場は活気づかない。米国では、流動性が高い研究 者ほど研究業績もいい。論文もよく書くし特許もより多く取得する。外国人研究者 が多いのも活気につながっている。日本でもこのような研究社会を早く実現したい 。 特許出願にあたって科学論文を引用する回数が、最近五年間で急激に増えている。 基礎研究と産業の結びつきが強くなってきていることを示すものだ。 日米の引用回数を比較すると、米国が圧倒的に多い。製造技術分野では、かつて日 本は米国とほぼ互角だったが、九七年から急激に日米差が出てきている。 国際競争に勝てる研究基盤を、早急に構築しなければならない。