独行法反対首都圏ネットワーク

独立行政法人化問題 週報抄(北大・辻下氏、8/3)
(2000.8.4 [he-forum 1166] 国大独行法化問題週報抄)

独立行政法人化問題 週報抄 Weekly Reports No.18 2000.8.3 Ver. 1
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/wr-18-00803.html
(...は略した部分です)
==目次================================================================
[18-1]文部省からの調査検討会議設立通知文書が明らかにしたこと
[18-2]国立大学協会設置形態検討特別委員会の議事概要
[18-3]国立大学教員から国立大学協会への要望書
[18-4]大学審議会パブリックコメント募集への意見提出
[18-5] 北海道新聞8月3日夕刊記事 「公共事業見直し省庁枠も対象に」
[18-L]独立行政法人化問題のサイトへのリンク
======================================================================
7月31日に第一回独立行政法人化調査検討会議が開かれたが、まだ内容は伝わっていない。教育改革国民会議の中間まとめが出て、大学についての提言もある。これについては次号で触れたい。

======================================================================
[18-1]文部省からの調査検討会議設立通知文書が明らかにしたこと
======================================================================
文部省は7月19日に調査検討会議に関する文書[18-1-1]を全国立大学に配付した。これを読んで<嵌められた>と思ったのは国立大学教員だけでなく国立大学長の中にも少なくなかったはずだ。

この文書には国立大学学長を含む60名の名簿[18-1-2]が添付されていたが、それは「参加者名簿」ではなく「協力者名簿」と記されていた。これにより、<協力を受ける側>である文部省が会議の主であることが、間接的にではあるが、明確に規定された、と言えるだろう。

予想外なことがもう一点あった。6月国立大学協会総会(以下6月総会と略)前には「第1グループ:法人の基本問題」と文部省が説明[18-1-3]したものが「組織業務委員会」という名称になり、「独法化後の国立大学の組織、業務等に関する調査検討」を行なうと規定された。これには、7月19日の第2回国立大学協会設置形態検討特別委員会でも疑義の声があったと聞く。

もう少し、7月19日の文部省文書[18-1-2]を見てみよう。
----------------------------------------------------------------------
3構成
ア)協力者は、当面、以下の委員会に所属して、調査検討を行う。
「組織業務委員会」
独法化後の国立大学の組織、業務等に関する調査検討
「目標評価委員会」
独法化後の国立大学の目標、計画、評価の仕組みに関する調査検討
「人事制度委員会」
独法化後の国立大学の人事制度に関する調査検討
「財務会計制度委員会」
独法化後の国立大学の財務会計制度に関する調査検討
----------------------------------------------------------------------
「独法化後の国立大学の」という修飾語を不自然に繰り返すことで、調査検討会議を独立行政法人化自身の是非検討の場と勘違いしないように釘を差したと言うことができよう。

調査検討会議は、徹頭徹尾、国大独法化の制度設計調査検討に特化した会議であり、調整法で独立行政法人化を正真正銘の<国立大学法人化>に「換骨奪胎」するような意図の実現の余地などないことは誰が見ても明らかになった。

総会直前の6月9日の文部省による会議内容説明[18-1-3]から7月19日文書[18-1-2]への変化は<背信行為>としか言いようがないものであり、国立大学教員だけでなく国立大学長の間でも憤りが高まっていると想像される。実際、7月19日のような説明が6月9日の段階であれば、6月14日の総会で参加合意はなかった筈だ。想像するに、「法人化の基本問題」という曖昧な言葉に国立大学長達の多くが、独立行政法人化を前提としない議論も調査検討会議で展開できるという幻想を抱き判断を間違えたに違いない。

国大協は8月10日の次回特別委員会で、6月総会合意の撤回を真剣に検討しなければならない。このような交渉戦略上の横着な仕掛けに最初から譲歩すれば、国立大学長達が本気で日本の大学の将来を考えて会議に臨もうとしているとは誰も信じないだろう。

----------------------------------------------------------------------
[18-1-1]文部省文書:「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」に
ついて(2000.7.19)
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/tkk/00724.html
----------------------------------------------------------------------
[18-1-2]文部省文書:国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議協力者
名簿(2000.7.19)
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/tkk/meibo.html
(分類は発行者の独断)
(国立大学長16名)(国立大学副学長3名)(国立大学部局長2名) (国立大学教員 9名)
(共同利用機関長等4名)(文部省所轄機関 2名)(国立大学事務局長 3名)
(公立大学長3名)(私立大学長 6名) (私立大学教員3名) (学校法人等理事長4名)
(財界人 4名)(マスコミ関係者4名)(その他 2名)
----------------------------------------------------------------------
[18-1-3]調査検討会議についての6月9日文部省説明より
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/006/20-chousakentoukaigi.html
...
======================================================================
[18-2]国立大学協会の設置形態検討特別委員会の議事概要
======================================================================
7月3日、7月19日に会合が開かれた。7月3日の議事概要[18-2-1]と19日配付資料[18-2-2]が7月24日に北海道大学でも公開された。内容は調査検討会議の準備会の様相を最初から示している。

特別委員会での検討課題としてリストされたものには(下の8項目を見てもわかるが)重複するものも多い。今はブレーンストーミングの段階と考えるべきであろうか。なお、この68項目以外の検討すべきことについて北海道大学では(少なくとも理学研究科では)全教員から意見を募った。発行者もその機会を尊重し7項目[18-2-3]を出した。

----------------------------------------------------------------------
[18-2-1]第1回 設置形態検討特別委員会2000.7.3(議事の概略)
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/kdk/00705-giji1.html
...
----------------------------------------------------------------------
[18-2-2]第2回 設置形態検討特別委員会2000.7.19(配付資料)
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/kdk/00719-giji2.html
...
----------------------------------------------------------------------
[18-2-3]国立大学協会特別委員会で検討すべき項目の追加希望
(北大学長が北大教員に意見提出を求めたのに応じて出したもの)
...
(7)独自法案準備専門委員会の創設
・文部省の法案作成と平行して国立大学協会自身の(独立行政法人化とは全く別種の)法案作成作業を行なう専門委員会を設けるべきではないか。(通則法の換骨奪胎という一本の道しか用意しないのは戦略的に弱い。別法案を準備しすることは、最悪の場合に国民に問うことはできる一方、そのことにより、交渉上の発言力を強める効果がある。また、その専門委員会の活動自身が国民への大きなアピールの効果がある。)
・(独自法案準備専門委員会創設とは直接関係しないが)国立大学教員有志が<高等教育法>案を作成した場合、国立大学協会としてどのように取り扱うべきか。

======================================================================
[18-3] 国立大学教員から国立大学協会への要望書
======================================================================
調査検討会議への参加を取り消し、国民に向かって組織的に独立行政法人化問題について理解を求め、新しい大学像を具体的に提示すことを求める要望書を59大学の360名の国大教員が連名で国立大学協会会長および99国立大学長宛に7月27日に提出[18-3-1]し、呼びかけ人が佐賀・岡山・札幌で記者会見をし、佐賀・岡山では報道された[18-3-2].署名は8月23日まで続けているが、調査検討会議の性格が7月19日文書で明確になってきた今、参加撤回の重要性ははるかに大きくなった。この点を豊島氏が詳しく論じている[18-3-3]。

----------------------------------------------------------------------
[18-3-1]要望書
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/007/27-houkoku.html
----------------------------------------------------------------------
[18-3-2]新聞報道
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/007/27-houkoku.html#saga
----------------------------------------------------------------------
[18-3-3]豊島耕一氏「「調査検討会議」参加による行政法人化協力は許されない」
http://couscous.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/kentokaigi.html
Ver. 1.1
1. はじめに
...
2. 「調査検討会議」の性格は明白
...
3. 「会議」への参加は正当化できない
参加を正当化する理論のいくつかは予想できるので,それについて考察してみよう.

[理論1] 独立行政法人化は避けられないので,それができるだけ「大学等の特性に配慮し」たものとなるようにするには,これに参加して意見を言う方が得策である.

[批判] 「避けられない」という判断をする前に,そのためのどれだけの努力をしたのか,また今後する余地がないのか,ということが問われる.学長や国大協会長らがみずからテレビに出演してこの制度の問題点をわかりやすく国民に説明する努力をしたのだろうか.それどころか,国大協総会の4項目を「独立行政法人化容認」として報道されるという絶大なアナウンス効果に対しても,何の対策も打っていないではないか.

 あるいは著名人であれば,その名声という「文化資本」を社会全体に役立てることを考えてほしいものだが,そのような努力をどれだけやったのだろうか.「お上」から声がかかれば何でも出ていく,という態度は政治的に非常に偏った態度と言うべきである.

 また,国会に提出される法案の骨格さえ出来ていない段階での「避けられない」(注2)ものという決定論的な判断は,判断者の「自分(たち)は何の行動も起こさない」という態度と組み合わせないかぎり極めて難解である.

 ずっと独立行政法人反対と言っていたのが,文部省が態度を変えるや否や,避けられないものと見方を変えるのでは,国大協は「親方日の丸」的性格をマル出しにしたことになろう.文部省による長年の訓育の成果だろうが,このような態度こそまさに「改革」されなければならない.

[理論2] 会議に出て阻止する,あるいは「換骨奪胎」する.

[批判] このような主張をする人はまずいないとは思う.もしそれができれば大したものだが,できなかった時は会議を盛り立ててしまったという「結果責任」が問われる.

[理論3] 情報収集のため.[批判] その情報をどこに持っていって,何のために使うのだろうか.国大協が独立行政法人化を阻止すべき有力な「対案」を作る気概があり,そのような
センターが存在するのであれば,なにがしか役に立つこともあるのかも知れない.しかし国大協にはその気力もないように見える.国大協内部の「設置形態検討特別委員会」も文部省の「会議」の下請けになる公算が大である.また大学教員にスパイ活動は似合わないし,正攻法で行くのには公開された情報で十分である.

4. 巻き返しの余地はある...
 「事ここに至っては」とか「大勢には逆らえない」と感じている人も多いと思う.しかしほんのわずかの抵抗が実は多くの命を救い,些細な無関心が多くの命を奪うのに手を貸すという歴史の教訓はどのような場面でも当てはまるのではないだろうか.「学問の自由」という大学にとっての「命」に関しても同じだろう.当事者には勝ち負けを「予測」するより重要な役割があるのだ.
(2000.7.31)...
----------------------------------------------------------------------

======================================================================
[18-4]大学審議会パブリックコメント募集への意見提出
======================================================================
大学審議会の「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について(審議概要)」へのパブリックコメント募集[18-4-1]が7月28日に締め切られた。大学を根底から改造する独立行政法人化について、大学審議会が何も検討しようとしないことは、大学審議会が何の自律性もないことを国民の前に証明するものである。大学審議会は文部大臣に勧告する権限を持っており、どの諮問事項にも関係せざるを得ない独立行政法人化について沈黙を保つとすれば、日本の高等教育を左右する地位に座しながら責任ある検討・判断を怠った責任を20名の委員は一生背負わなければならない。この旨をパブリックコメント[18-4-2]として大学審議会室に提出した。
----------------------------------------------------------------------
[18-4-1]パブリックコメントの募集
http://www.monbu.go.jp/pcomment/00000095/
----------------------------------------------------------------------
[18-4-2] 発行者の意見提出
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/007/28-tjst-pcomment.html
より。...
(1)【独立行政法人化問題に言及してほしい】

周知のように、国立大学制度を廃止し、独立行政法人制度に基づく大学法人制度の設計が、文部省と国立大学が中心となって始まった。この件について貴審議会が沈黙を保つことは、己が存在理由を否定するに等しいことである。独立行政法人化について直接諮問されていないとは言え、このような大変革に言及せずに、種々の諮問事項を具体的に論じることは困難なはずである。

独立行政法人化には運営上の観点から多くのメリットがあると言われながら、大学という存在の独自性を破壊し日本の学術社会が弱体化するリスクが限りなく大きいことが、多くの学術関係者によって指摘されている。貴審議会は、当事者である文部省と国立大学とは違う視点に立てるはずで、ぜひ自主的に、国立大学の独立行政法人化について議論し、メリットだけでなく、リスクへの対策について検討し、報告の中で敢えて独立行政法人化問題についても見解を述べることを強く望みたい。

国立大学の根底が揺らいでいる現状に何も言及せずに、今回の審議概要に示されるような、視野を不自然に限った答申を出すとすれば、大学審議会は自律性など全くない存在であることを広く国民に宣言するものであり、20名の委員の皆さま方は国民に対する負託を放棄するものと見なされても申し開きは困難ではないか。審議会委員の皆さま方が責任の大きさを自覚し、矜持を持ってこの問題について責任ある発言を敢えてすることを期待する。

(2)【大学審議会のこれまでの答申の問題性】
...
(3)【今回の審議概要にある提言に伴うリスクについて】
...
(a)【「大学のグローバル化」のリスク】
...
(b)【「国際競争力をつける」ことの意味が退化するリスク】
...
(c)【「重点的配分」のリスク】
...
(d)【大学の種別化のリスク】
...
(e)【「改革の常態化」による大学の疲弊というリスク】

今の国立大学が疲弊していることを認識しているだろうか。原因は、絶えず改革が強制されているからだ。現在は、<独立行政法人化後の生き残り>に追い立てられ、派手な改革を案出することに99国立大学はエネルギーを費やしている。教育・研究に携るものを、最も苦手とする宣伝的業務に縛りつけることで国立大学の人的資源を浪費すれば、国際的競争に耐える底力を国立大学が失うリスクが大きい。

(4)【国際競争力がない真の原因】
...
【結語】
...審議会委員の皆さま20名が、21世紀の大学を左右する位置にいる責任の大きさに畏怖の念を持たれ、これからの世代への責任感の上に立って、独自の考えと判断を反映した答申を構築されますよう、切にお願い申し上げます。

辻下 徹
======================================================================
[18-5] 北海道新聞8月3日夕刊記事 「公共事業見直し省庁枠も対象に」より
======================================================================
「森喜朗首相は3日午前、自民党の亀井静香政調会長と国会内で会い、党側が検討中の公共事業見直しに関する中間報告を受け、従来の省庁シェアにとらわれずに抜本的に事業を見直す方針を確認した。...会談後、首相は記者団に「学校も公共事業だ。文部省は小さな予算しかないが、建設省でやればもっと立派なものができる。引きだしはどこでもいい」と述べ、従来の省庁の管轄に合せた事業体系を見直す必要性を指摘した」

「省庁管轄に合せた事業体系の見直し」こそ国民の大半が待って待って諦めかけていたことだ。指摘にとどめず万難を排し断固実行に移して欲しい。「建設省でやればもっと立派なものができる」という言い方は「建設省の権限の予算」を前提とする対症療法の響きがあり、また、立派な校舎ができるという意味かも知れないが、「建設省なら大学については門外漢だから金は出しても口までは出さないだろうから立派な高等教育体制ができる」との発言と解釈することにしたい。
======================================================================
[18-L]独立行政法人化問題のサイトへのリンク
◆国立大学独立行政法人化問題サイトの入り口
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/
◆国立大学独立行政法人化問題を余りよく知らない読者のために
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/index.html#gaiyou
◆国立大学独立行政法人化問題の基礎文献案内
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/index.html#intro
◆国立大学独立行政法人化問題資料集(東北大学職員組合サイト)
http://ha5.seikyou.ne.jp/home/touhokudai-syokuso/sp98-1/sp98-1.html
...
======================================================================
発行者: 辻下 徹
homepage: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst/
e-mail: tujisita@geocities.co.jp
バックナンバー
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/backnumber.html
登録・解除手続き http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/
発行部数(2000.8.3現在)
CocodeMail:304 / Mag2:515 / Pubzine:25 /Macky!:25 / emaga:19 / melma:6 /直送 約 200
=====================================================================
End of Weekly Reports No.18 2000-8-3
**この週報は発行者の個人的な意思で行っています**
===================================================================



目次に戻る

東職ホームページに戻る