独行法反対首都圏ネットワーク |
2000.8.02 [he-forum 1162] 日本経済新聞社説06/03
『日本経済新聞』2000年6月3日付社説
国立大学の独立行政法人化問題で「他の政府機関と同じ条件での法人化は大 学の自治を損なう」などとして反対の立場をとってきた国立大学協会(会長・ 蓮實重彦東大学長)が「通則法に特例法を設けて大学の自主性に配慮する」な どとした文部省の条件付き法人化案を受け入れ、来年度中にも国立大学の新た な枠組みがまとまる見通しとなった。明治以来120年余り続いてきた国立大学 が自由と自己責任に基づく新たな設置形態に生まれ変わる。 中曽根弘文文相が国立大学長・大学共同利用機関長会議で説明した法人化案 では、国からの運営交付金の使途が大幅に大学の裁量に任されるなど、自主・ 自立性の拡大がもたらす法人化の利点を指摘した上で、学長の任免や教員人事、 中期計画とその評価などで「大学の教育研究の特性を踏まえて通則法との間で 一定の調整が必要」とした。 また財務会計面では運営交付金の措置方法や企業会計原則の適用方法などに ついて検討を重ね、法人の名称や移行方法などを含めて、有識者らで新たに設 ける調査検討会議が来年度中に結論をまとめるという。 国の行財政改革の一環としてこの問題が浮上して以降、文部省と国大協は反 対の立場をとってきたが、省庁再編の波の中で国立大だけが現状のままで例外 的に存続することは困難と判断。人事や教育研究の計画・目標などで、大学の 特性を踏まえて自主性を確保するという自民党の条件付きの提言を受け入れ、 法人化容認に傾いた。文部省案は公立大の法人化も同様に求めており、新たな 設置形態のもとで私学を含めた大学全体が競争を広げ、その成果を税の配分な どに反映させる基盤が整う。 国立大学の法人化問題は日本の大学改革の根幹にかかわる残された最大の課 題だった。それがようやく軌道にのる見通しとなったが、全国で99ある国立大 の中には併合や吸収などを危ぶむ声も少なくない。 護送船団に守られてきた国立大学を独立行政法人化するそもそもの目的は、 国公私立にわたる大学が個性と教育研究の質を高め、競争を通じて国際的な知 の水準を確保することである。公正な評価を通して、競争基盤を確保するしく みを急ぎたい。