独行法反対首都圏ネットワーク


国立大学の独立法人化問題に関する声明(静岡大学教育学部教授会)
(2000.7.28 [reform:03033] 国立大学の独立法人化問題に関する声明(静岡大学教育学部教授会))

静岡大学教育学部は、今回の文部大臣の表明、「国立大の独法化は既定路線」とす
る報道、今後の教員需要の減少を根拠と
し、これらと連動した国立教員養成系大学・学部の整理統廃合の動きに対して、反対
声明を出しましたので、掲載します。
国立大学協会や日本教育大学協会に送付するとともに、静岡大学学長や各部局長にも
送るとともに、学生にも掲示する
こととなりました。
 国立教員養成系大学・学部の将来像について、各大学や関心ある方々との情報交換
や意見交換ができれば、幸いです。


梅澤 収
静岡大学教育学部
eloumez@ipc.shizuoka.ac.jp
                      国立大学の独立行政法人化問題に関する声明
                                      
                                            平成12年7月27日
                                      
                                        静岡大学教育学部教授会

 平成12年5月26日文部大臣は、国立大学長・大学共同利用機関長等会議におい

て、国立大学の独立行政法人化について
の考え方と今後の方針を正式に表明した。それによれば「独立行政法人制度の下で、
大学の特性に配慮しつつ、国立大学を
独立行政法人化する方向で、法令面での措置や運用面での対応など制度の内容につい
ての具体的な検討に、速やかに着手し
たい」、「今後の国立大学等の在り方に関する懇談会」の下に設置される「調査検討
会議」が平成13年度中にまとめる報告を踏
まえ「独立行政法人化後の大学の在り方について、最終的な結論を得たい」というも
のである。
 静岡大学教育学部教授会は、平成11年10月14日に「国立大学の独立行政法人
化問題に対する見解−文部省「検討の方向」
について−」を作成し学長に提出した経緯がある。今回の文部大臣の表明、「独立行
政法人化は既定路線」とする報道、国立教員
養成系大学・学部の整理統合の動きに関して、教育学部教授会は改めて見解を出すこ
ととした。

1.教育・研究は大学の自主性・自律性に基づいて行われるべきであり、その制度を

確実に保 障することなく、国立大学を独立行
 政法人化することに反対する。

  国立大学は、自由な基礎研究、創造的研究、教育活動を通じて次世代へ文化と科

学を継承 し、平和で豊かな生活づくりに貢献
する役割を担うものである。そのために、教育公務員特 例法等によって、学問の自
由(憲法23条)が制度的に保障されてきた。
  しかるに、独立行政法人は、通則法によれば、主務大臣が法人の長の任命・中期
目標の提 示・中期計画の認可を行い、業績評
価に応じて運営費交付金の配分の決定や業務の改善要求 がなされる制度である。そ
れが学問の自由に基づく大学の組織運営の基
盤を根本的に揺るが すものであることから、文部省は、大学の特性に配慮する特例
措置(特例法又は調整法)を 具体的に検討する
ことを表明したが、漠然とした方向が示されただけで、その具体的内容  (学長の
任免、中期目標・計画、評価、組織運営等)は不明
確なままである。
  また、経済的効率性を基本原則とする独立行政法人は、中期目標等の評価に際し
て運営費 交付金の漸減や組織の効率的運営
が求められ、国立大学の存立基盤は脆弱化する一方となる 可能性が大きい。
  このような懸念を払拭せずに、国立大学を独立行政法人化することに反対する。


2.独立行政法人化を念頭に置いた経済的効率性の観点から、教員採用者数が少ない

ことを根 拠にして、国立教員養成系大学・学部
 を整理統合することに反対する。
  文部省は、本年7月「国立教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会」を発
足させ、 長期的観点に立った検討を行う予定である。
新聞報道(読売新聞夕刊2000.6.25)によれば、 「国立の教員養成大学、学部の再
編に着手する方針を固め(た)…、教育大、教育学部の
統廃合や、他学部への改組転換などを軸に論議を進め(る)…、養成課程の卒業者の
教員就職 率が3割に落ち込み、本来の役割が薄れ
ている実態や、国立大の独立行政法人化も踏まえた 対応で、『エリート校』化が指
摘される附属学校の在り方なども併せて検討する」という
ことである。
  このような独立行政法人化を念頭に置いた経済的効率性の観点から、教員採用者
数が少な いことを根拠として、国立教員養成系大
学・学部を整理統合する動きがあることは遺憾であ る。
  これからの国立教員養成系大学・学部は、教員免許取得だけでなく、現職教員の
再教育の 場として、また生涯学習社会や子ども・子育
て等の人間形成に関する地域の教育・研究のた めの高等教育機関として、整備充実
を図ることが社会的に求められている。
  国立教員養成系大学・学部は、文系、理系、芸術系、体育系にわたる多くの専門
分野の教 官スタッフを必要とする「特殊性」を持つが、
今後はこの特殊性を活かし、先の社会的役割 に応えられる教育・研究組織として、
現代的に再生させることが重要である。

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