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2000.7.29 [he-forum 1146] 神戸新聞社説07/28
『神戸新聞』2000年7月28日付社説
教育に対する「不満」と「不安」の感情が高まっている。この漠然とした国 民感情が、いわゆる教育不信を招く大きな原因だ。 小渕恵三元首相の私的諮問機関としてスタートし、森喜朗首相に引き継がれ た教育改革国民会議(江崎玲於奈座長)も、こうした国民感情を受けるように 組織され、幅広い視点から「改革論議」を重ねてきたわけだ。 第一分科会(人間性)、第二分科会(学校教育)、第三分科会(創造性)そ れぞれの議論がまとまり、このほど審議報告として発表された。 九月には中間報告がまとめられるが分科会報告の中には、軽々に見過ごせな い提言が盛り込まれている。 第一分科会では、教育基本法の改正や児童生徒への奉仕活動義務づけ▽第二 分科会では、教員評価制度や教員免許更新制度の導入▽第三分科会では、小学 校五歳入学、大学の飛び級入学制の採用―などである。 ドラスチックな改革を促すきっかけになるものもないわけではないが、こう したことだけで、教育不信を払拭できるのか、はなはだ疑問だと言わざるを得 ない。 同時に、この会議が、戦後教育に対して基本的に「ノー」という立場を鮮明 にしていることについても気がかりである。 確かに、たとえば、「悪平等主義」などとの批判も強まっている。そうであ るならば、どんな教育の理想像を描こうとしているのか、改革によってどんな 教育効果が得られるのか、戦後教育の清算によってもたらされる、いわば“国 民的利益”は何なのか。そこまで踏み込んだ提言がなされなければ、単なる戦 後批判に終わってしまう。 教育基本法の改正については、分科会内部では複雑な論議があった、という。 改正することによって、教育の諸課題が一気に解決するとは、委員の多くは思っ ていないようだ。それでも、改正をうたったのは、意図的だと受け止められて も仕方あるまい。 基本法の改正は、憲法改正と似た要素を持っている。はじめに改正ありきと いう姿勢から出た提言であれば、多くの合意は得られまい。 奉仕活動についても、悪いことではないが、義務ということになると、日本 人の特性からして、思わぬ方向に走り出さないとも限らない。 教員免許の更新制度は、あるいは必要かもしれない。しかし、不適格とされ た教師や、その担任クラスへの影響をどう最小限に押さえるか。導入後のアフ ターケアをどうするかについての言及がほしい。 教育改革は、国民の合意がなければ進められないし、効果も上がらない。分 科会報告を機に、更なる教育再興論議が起こることを期待し、それを踏まえた 中間報告を求めたい。