独行法反対首都圏ネットワーク |
2000.7.28[he-forum 1140] 全私学新聞07/13
教育ニュース2000年7月13日付(『全私学新聞』提供)
深刻な少年非行、国立大学の独立行政法人化問題、文部省と科学技術庁との 統合、私学の更なる振興など、教育をめぐる課題は少なくないが、六月二十八 日、就任早々の小野元之・文部事務次官に、それら課題への対応を伺った。 (編集部) ◇ 少年による凶悪事件が頻発していますが、文部省としての対応は。 小野事務次官 十七歳による事件がいろいろ起きており憂慮している。文部 省としては心理学者や非行問題の専門家らに集まっていただき専門的な立場か ら分析・方策を検討していただく。また人間として守らなくてはいけない最低 限のことはきちんと教えていくしかない。学校でも家庭でも地域でも。子供向 けの道徳教育の教材も必要だ。 来年一月に文部省と科学技術庁が統合し、文部科学省になりますが。 事務次官 予算面、人事面、庁舎の問題、新しい組織をどう有機的に機能で きるようにしていくか、さまざまな努力をしている。基本的には文部省におけ る大学の教育研究の蓄積が科学技術政策とうまくマッチングして全体として学 術や科学技術の振興を図るようなシステムにしていきたい。庁舎については文 部省のほか、新しい研究三局は郵政省ビルに入ると思う。 教育改革国民会議が夏にも中間報告をまとめる見通しですが。 事務次官 教育改革国民会議からは文部省も意見を言ってほしいと要請を受 けており、分科会などでもお話し申し上げている。同会議は国民全体に考えて いただくためのシステム作りをしている。学校や教育行政当局だけではうまく いかない部分もあるので、政府全体で教育改革に取り組むことは良いことだと 思う。 自民党の私学振興プロジェクトチームが五月にまとめた中間報告については どう考えていますか。 事務次官 さまざまなご指摘をされている。それも参考にしながら、概算要 求、年末の予算編成に向けて努力していきたい。 来年度の財政的な環境はどうですか。 事務次官 財政上は非常に厳しいものがあると思う。そういう中で知恵を出 して、また私学振興プロジェクトチームも指摘されているように、私立学校の 果たしている役割は非常に大きいので、そのへんも念頭に置きながら概算要求 に向けて努力していきたい。 国立大学と私立大学では公的な財政支出額に大きな開きがありますが。 事務次官 研究面では国立大学でなければならない面がある。その一方で私 学の役割は大きいので私学への助成の仕方も考えていかなければいけない。 国立大学の独立行政法人化はすでに決定と考えてよいのでしょうか。 事務次官 これはそういう方向で努力していこうということで、関係者のご 理解をいただくための準備をしている。懇談会を設けて関係者の意見をお聞き したり、よりよい法人化ができるように折衝もしていかなければならない。世 界の先進国を見ても法人格を持っている国がほとんどで、我が国のように国の 一機関で法人格を持っていないのは諸外国でも例がない。法人格を持って自主 性を高めるとともに、行革のことも考えなくてはいけない。しかし一番に考え なくてはいけないのは大学の教育研究をどう充実するかだ。 国立大学の設置形態を見直していく中で、国立学校特別会計のあり方も再検 討されるのですか。 事務次官 議論は出てくると思う。また全体でやりくりできるという、特別 会計の良さもある。良さを生かしながら望ましい形を目指していくことだと思 う。 就学人口が減少する中で国立大学九十九校という数については。 事務次官 一部の大学では県内の大学で統合の話し合いをしているところも あるが、大学なので自主的に判断されることが望ましい。一つになった方が事 務的に、あるいは予算面、教育研究の面でもよいとなれば統合はありうる。 大学生の学力低下が問題となっていますが。 事務次官 進学率全体が短大も含めると五〇%近くなってきているので、進 学率が十数%のときとは違う状況がある。また大学によっては、受験科目を減 らせば、良い学生が集まるという考え方が一部にあり、入試の科目を減らして きたことによる学力低下もあるだろう。さらに世の中に一生懸命にやらなくて もよいという風潮があるのかもしれない。 日本の大学も入りやすく出にくいという方向に進んでいくのでしょうか。 事務次官 少しずつ進みつつある。この前、学校教育法の改正をして出口管 理をきちんとしようという方向に行っている。 最近は東京の品川区のように公立小学校などで学校選択ができる自治体が出 てきていますが。 事務次官 それは望ましいことだと思う。戦後、教育における悪平等が進み 過ぎている。公立なので競争原理だけでいいとは思わないが、通学区域の弾力 化、選択の自由が利くことも必要かもしれない。