独行法反対首都圏ネットワーク

[he-forum 1111] 民主教育研究所

民主教育研究所 http://www2.justnet.ne.jp/~minken/index.htm
研究委員会 (第5期=2000年4月〜2002年4月)

「高等教育」研究委員会


 5月29日、民主教育研究所会議室において、堀尾輝久代表運営委員を迎えて

高等教育研究委員会が立ちあがりました。委員長、幹事を選出して研究委員会

の体制が確認され、年間の研究計画などについて論議しました。



 この数年の間、高等教育政策の具体化がトップダウンの手法によって急速に、

しかもめまぐるしく展開し、大学・大学院のありかたは激変してきました。日

本の学術や科学技術を国家や財界の戦略に直結させる科学技術基本政策によっ

て、高等教育諸機関のありかたが大きく変えられようとしているばかりでなく、

そうした政策を具体化しやすいように、学問の自由と自治的な組織運営の仕組

みを管理主義的・統制的なものにする制度変革が次々と進行しています。また、

国立大学独立行政法人化の動きにみられるように、学問・研究の分野に競争と

効率性を導入し受益者負担を強いる市場原理がまかり通ろうとしています。そ

れと同時に、大学入試にかかわる問題や大学入試方式に大きく規定される高等

学校教育の歪みは深刻な段階にきています。さらに、"大学大衆化"の状況は、

大学教育における授業実践や生活指導を教育的課題とすることを提起していま

す。



 一方における管理と競争への傾斜、他方における「社会的ニーズ」に応えら

れる大学づくりのハザマで、リストラの恐怖と学生の「学力低下」・生活指導

に追立てられながら、大学関係者は長時間過密労働の中で孤立しています。大

学での教育は、日本の未来社会の主権者がどう育つかという全社会的問題であ

るばかりでなく、大学関係者の労働条件や学生指導の苦悩などは、教育に携わ

るもの共通の課題でもあります。



 ところが、そうした事態が、日本の教育全体や学術体制の根幹を転換するも

のになるという危惧や、国民の生活や福祉・健康・安全、教育などに重大な影

響を及ぼすことになるという認識どころか、進行している大学の変貌や科学技

術政策の再編の実情すらなかなか広く認識されないという状況を生んできまし

た。その深刻な問題や国民的課題が広く認識されない事態を生んできた背景に

は、大学の教育運動が複雑な政治状況におかれる情勢も強く反映しているとも

いえるでしょう。また、これまで、高等教育における政策・制度・教育実践・

労働条件などのいずれ問題も、他の学校種とは異なる質をもつものとして認識

され、扱われてきた傾向もあります。大学は「自治と自由」の"聖域"であり、

そこでの問題は、大学人の「自主・自治」のもとで扱われるべき課題だという

伝統的な大学観とともに、一部の人たちのための"高度な教育・研究"機関であっ

て、そこでの問題は、"特殊問題"という認識が反映していたからでしょう。す

なわち、高等教育問題は、大学人や学生運動の課題で、「大学内部問題」とい

う関心事にとどまっていたといえる側面もありました。しかしながら、高等教

育問題は、大学入試のありかた、授業料高騰化、大学における教員養成・再研

修、学生の「学力低下」問題などわかりやすい問題のどれひとつに注目しても

全国民的に論議されるべき深刻な内容をはらんでいます。



 こうした問題意識のもとに、99年12月に東京・代々木オリンピック・センター

で開かれた全国教育研究交流集会において、高等教育問題の分科会が設置され

たことをはじめとして、高等教育問題を考える委員会の準備会が中野光氏を責

任者として積み上げられてきました。これまでに四回の準備会を経て、今回の

正式な委員会発足となりました。委員長には、山口和孝(埼玉大学)、幹事に

は光本滋(中央大学大学院)があたることになりました。第一回委員会では、

国立大学独立行政法人化問題をめぐって文部省の見解が表明された国立大学長

会議文書、独立行政法人化に反対する国立大学農学系学部長会議声明(案)、

日本教育大学協会独立行政法人化特別委員会の文書などの検討をおこないまし

た。



 今年度は、すでに教育・科学者運動の中でとりくまれてきた高等教育問題に

関する諸分析・諸提言の蓄積を確認し、民研委員会として特徴のある研究課題

と方法を明確にすることからとりかかり、現下の高等教育問題が広く国民的関

心の視野の中で論議されるための課題を提案できるようにしたいと考えていま

す。次回は、日本の教育改革をともに考える会の『21世紀への教育改革をとも

に考える』提言や日本科学者会議大学問題委員会編の『21世紀の大学像を求め

て――競争・管理から共同・自治の大学づくりの提言』をもとに、高等教育の

抱える本質的問題の所在を分析することになっています。

(文責=山口和孝)


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