独行法反対首都圏ネットワーク |
[he-forum 1107] 中国新聞社説07/17
『中国新聞』2000年7月17日付社説全国九十九すべての国立大学と大学共同利用機関を国から独立した行政法人 とする「国立大独立行政法人化」の動きがピッチを上げてきた。広島大もこれ に対応、先取りした形でさまざまな改革を進めている。評価できる面も多い中 で、問題点も残る。「学問の自由」「大学の自治」の大原則を譲れぬ一線とし たうえで、思い切った改革を望む。 独立行政法人化に対する広島大の基本的な考えは(1)「独立行政法人通則 法」の一律適用には反対。大学の特性や役割に見合った特例法を制定し、大学 の教育研究の活性化につながる管理運営がなされることが不可欠(2)そのう えで大学が法人格を持つことは、大学の将来にとってプラスになる可能性が高 いと判断する(原田康夫学長)―の二つである。 特例法の制定は、すでに文部省も方針としている。広島大の特色は、そのう えで法人格を持つことを「プラス」と判断している点にある。少子・高齢化社 会にあって、生き残りのために独立行政法人化という「外圧」を逆に利用しよ うとの姿勢だ。国の押し付けに黙って従ったり、ただ反対するより前向きであ る。 同大はすでに「人事と金で大学人の意識改革を迫る」という独立行政法人化 の精神を先取りしたとも言える改革を次々実施している。今年四月からは、大 学評議会制度を大幅に変えた。従来は、評議会で決まっても学部に持ちかえり、 一学部でも学部教授会で反対があると実施は難しかった。これを評議会メンバー を増やし、人事、財政、情報、組織の四部会を新たに設置。評議会決定は絶対 のものとした。 予算は本年度から大学全体の共通経費を従来の一三%から二〇%に増やし、 重点傾斜配分をとり入れた。これによって従来、あまり変動のなかった学部予 算が、新規プロジェクトの評価などによって増減が出てきた。人事面でも全国 で珍しい教授の任期制を導入した。当面、今月から医学部総合薬学科で始め、 本年度中に医学部の残る学科、文学部などで実施の予定でいる。任期十年、再 任五年で、実質的影響は小さいと見られるが、いったん教授になれば定年まで 保証されたこれまでの制度に比べれば大きな変化だ。 いずれも注目できる制度である。財政的にも人事的にも「親方日の丸」的発 想の多い国立大学が、現状のままでいいとはだれも思わない。その意味でも広 島大のこうした試みは評価できる。だが、人事、財政を武器に微温的な大学の 体質に風穴を開けようとの試みは、効果の大きい「劇薬」だけに使い方は慎重 さが必要だ。予算の傾斜配分、教授の再任などは、ガラス張りの評価が一方に あって初めて納得できるものとなる。学問の評価は近視眼的な損得勘定だけで はできない点に難しさがある。 独立行政法人化の危うさも、ともすれば目前のバランスシートに目を奪われ かねない点にある。「学問の自由」「大学の自治」を保障し、長い目での学問 研究、教育のため、どんな制度が望ましいのかを第一義に前進してもらいたい。