独行法反対首都圏ネットワーク

[he-forum 1105] 神戸新聞社説07/16

『神戸新聞』2000年7月16日付社説

県立大の統合/分権時代開く知的拠点に


 大学改革の流れの中で、統合、連携の動きが加速している。国立大学の独立

行政法人化問題も含め、過熱といってもいいほどのブームである。



 行政改革、少子化という外圧に加えて、高等教育の在り方そのものが時代の

要請にこたえていないという内外の危機感がある。



 明治、戦後に次ぐ第三の大学改革という位置づけと時代認識、変革への意欲

については異論はない。



 ただ、受験生への人気取りだけが先行したり、バスに乗り遅れないための統

合・連携や、行革のための改革であっては意味はない。改革によって、どんな

成果を国民、県民にフィードバックするのか、明確なメッセージを伴ったもの

でなければならない。



 兵庫県立大学の在り方について検討していた「県立大学検討懇話会」(座長

=新野幸次郎・元神戸大学長)が、このほどまとめた中間報告で、神戸商科大、

姫路工業大、県立看護大の改革案を提言した。



 改革の基本は三大学を統合し、新しい県立大学を設置するというものだ。連

合案、連携案も検討されたが、最もドラスティックで実効が上がる「統合」が

望ましいと結論づけている。



 改革の方向としては、(1)課題探求能力の充実などを主眼にした教育、指

導法の改善(2)学際重視、産学連携の強化を目指す研究機能の強化(3)兵

庫県域の特性に着目し、各地域への貢献をさらに進める(4)人事、財務制度

の規制緩和など管理運営体制の改革(5)各大学の特性と教育資源をミックス

した総合力の発展充実―を上げている。



 県立三大学は、これまで多彩で多様な学問成果をあげ、個性豊かな業績を残

してきた。現行のままでも発展的に生き残れる可能性は十分にある。



 しかし単科大学の“限界”も指摘される一方、二十一世紀の研究、教育成果

は、例えば文理一体といった学問分野の総合化の中でこそ生まれよう。



 そうした意味から、懇話会の提言は大学改革に当たっての必要条件で、その

理念、手法、方向については一定の理解をしたい。



 もちろん、問題もある。総合キャンパスはどうするのか。伝統的な校名、特

に、神戸、姫路などという「冠」が消滅することによる当該地域への影響も、

過小評価すべきではない。



 そして、県立大学が統合することで何が変わるのか。地域はどんな果実を手

にできるのか。総合化などによっていかなる成果がもたらされるのか。最終報

告では、もっと具体的で、明確なメッセージを発信してもらいたい。



 分権社会になるであろう二十一世紀の大学、ことに県立大学に対する地域の

期待は、さらに強まる。改革は、分権時代を開く「知的拠点」の構築という側

面も忘れてはならない。



(掲載日: 20000716 )





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