独行法反対首都圏ネットワーク

石井紫郎「学術公法人」私案を読んで
(2000.6.5 [he-forum 976] 石井紫郎「学術公法人」私案を読んで)

高等教育フォーラム読者各位 6/5/00

 山形大学理学部の品川です。
 先般本フォーラムで紹介されていましたジュリスト6月1日号掲載の国際日本文化センター教授の石井紫郎氏による「学術公法人」私案を拝読いたしました。先日の文部大臣説明の感想と合わせて、若干の感想を述べたいと思います。

 5月26日の国立大学長共同利用機関長など会議での文部大臣の説明では、独立行政法人通則法に基づく国立大学の独立行政法人化であっても、幾つかの運用上の配慮をすれば、現在の文部省によるがんじがらめの拘束と規制から解き放たれ、大学の独立と自主性が獲得できるなどと強調されていました。しかし、その説明の根拠となっている5月9日の自民党文教部会による提言を見る限り、国策による国立大学の統制を強化する意志が明確に示されている一方、大学の自主性、独立性の象徴とも言える「大学自治」「教授会自治」は極力規制し、排除しようとしています。
 ここに、問題の本質があるように思います。もし、文部省が国立大学の規制を緩和し、その独立性・自主性を高めようという意図での法人化を考えるのであれば、どうしてそれ程までに「独立行政法人通則法」の枠内での独法化に固執する必要があるのか説明していただかなければなりません。通則法とは全く別の法人化ではなぜいけないのかについて納得できる説明がなければなりません。にもかかわらず、通則法にあくまでこだわるのは、今回の法人化が、国立大学の独立性・自主性の確保が目的ではなく、限られた資源の中で、いかに国立大学を効率的かつ効果的に、国策による新産業政策に奉仕させるようにできるかという、大学の管理統制を目的にしているからでしょう。

 その意味で、文部省が大学の自主性・独立性の確保を、法人化の根拠にしようとしている点に対する有効な反撃の一つとして、石井氏の提案されているような通則法によらない法人化「学術公法人」化は、一考に値すると思います。氏の説明と個々の条文私案を見る限り、大学に適応する場合の通則法の最大の欠陥である法人の主務省への法人の従属性を排除し、法人たる大学の自主性を尊重する多くの条項が盛り込まれており、基本的には賛同できる案のように思います。

 ただ、私が読んで若干気になったのは、法人の長たる学長の任免について「第二十一条 法人の長は、大臣が任命する。」としか規定してない点です。ここは、例えば、「法人の長は、評議会の指名に基づき、大臣が任命する。」などと規定すべきではないかと思いました。

 いずれにしましても、独法化をめぐる情勢がここまで来て、世論も国立大学がこれまでの設置形態で存続することに否定的な現在、それならば、政府による財政的支援の保障を前提として、通則法に依らない法人化を全面に立てて闘うのも一つの道かと思う次第です(注 ただし、これは、あくまで私個人の感想であって、全大教中執の議論とは一切関係ありません)。



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