独行法反対首都圏ネットワーク

独立行政法人化問題週報抄 No 12
(2000.6.4 [he-forum 974] 独立行政法人化問題週報抄 No 12)

(少し転送が遅れましたが。重複して受取られた場合はご容赦下さい。 辻下)

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独立行政法人化問題 週報 Weekly Reports No.12 2000.5.29 Ver. 1.1
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/wr-12-00529.html
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【先週(5/22−27)の動き】
 中曽根文相は5月26日に国立大学長・大学共同利用機関長会議を召集し、文部省の現時点での考え方と今後の方針について1万字を超える<説明>[12-1]をした。独立行政法人の利点を述べ「今後の国立大学等の在り方に関する懇談会」の下に調査検討会議を開催して経済界・言論界からの有識者も加えて独立行政法人化の検討を進める方針を述べた。公立大学についても法人化を検討することも同時に表明した。
 会議後の記者会見で、蓮見国立大学協会会長は、「文相の提案は調整法の制定など、私たちが主張してきた点にも初めて触れている。文部省と同じテーブルにつく可能性は出てきたが、国大協としての公式見解は近く開催する総会(6/13・14)で決める」(北海道新聞5/27)と述べた。

【国立大学長会議と国立大学協会について】
 国立大学長会議は、文部省の外局である国立大学の長を召集する、文部省主催の会議。概ね上意下達の場。定例は3ヶ月ごとに開かれる。5月26日の会議は臨時。
 それに対して、国立大学協会は、文部省とは完全に独立した国立大学が自主的に形成し運営されている組織である。会則の一部を添付する[12-9]。

【マスコミの報道】
 マスコミ[12-3]の多くは、国立大学の法人化が決まったと報じており、大学でもそう考える者も少なくないようだ。大学幹部の中には5/26文相解説のスタイルが気に入っている者もいる。

 しかし、法人化の中身を危惧する新聞報道も少なくない(例:[12-8])。選挙前に国立大学協会が独立行政法人化を受け入れることに反対する声もあり、マスコミ報道は昨年の9/20文部省方針[12-2]の後の報道と同様に、先走っていただけということになる可能性もかなり残っている。

 なお、5/26朝日に掲載されたインタビュー記事の中で、有馬前文部大臣は「私学助成を増やすには..『独法化』して国から直接お金を流す仕組みにするのが有効だ」とアドバイスしている。国公私大に「公平に」税金を投入するという名目で、日本の大学をすべて<独立行政法人大学化>し、国策のための大学総動員体制を樹立することも視野にあるようだ。

【学問の自由を奪う方針】
 1万字の説明中で、学問の自由を剥奪することを前提とした説明がある。「この点、国立大学は、私立大学と異なり、国の意思に基づいて設置され、主として国費によって支えられてきたことから、これまでも、...国全体としての高等教育政策や学術政策を踏まえつつ、各大学において主体的な取り組みが進められてきました。...そして、このような国と国立大学との関係は、独立行政法人制度の下においても、互いの責任の範囲をより明確にしつつ、基本的には維持されるべきものと考えており、したがって、国立大学を独立行政法人化する際には、大学の教育研究の特性を踏まえ、大学の主体性を尊重するための一定の調整を図ることが、不可欠であると考えております。」
換言すると、「これまで、国策を尊重しながら大学が自由に研究をしてきてくれたので、独立行政法人化後は、大学の意向を尊重しながら国が大学に目標を与えます」ということだ。研究・教育の主導権が大学から国に移行することは不問にした上での些細な配慮に過ぎない。文部省は、行政の教育内容への介入を禁じる教育基本法第10条と学問の自由を保障する憲法第23条を失念していると言えよう。

【5/11自民党案と5/26文相説明の関係】
 文部省は1月以来自民党との表面下の折衝を続け3/22麻生委員会提言では文部省案に近いものとなったが、最後に太田行革本部事務局長の強硬な意見により自民党務調査会5/11提言となったという[12-4]。太田前総務庁長官は昨年1月に有馬前文部大臣を言い負かして独立行政法人化を飲ませた論客である。自民党提言では、文部省が昨年9月に大学に提示した特例措置(学長の学内選抜、公務員身分、第三者評価機構による評価等)は形骸化し独立行政法人通則法を基盤とする内容になった[12-8]。しかし5/26文相説明では自民党提言にある厳しい内容には触れず、「調査検討会議」に国立大学が参加することにより大学の望む内容に法人化が実現可能であるかのような錯覚を起こさせる。

 文部省が総選挙直前に決着を付けたがるのはなぜだろうか。次の2つの読みが想像される:

(1)現政権が継投する場合。このときは5月11日自民党提言が最終案となることは決まっている。文部省は単に交渉がうまくいかなかったと国立大学に通知すればよいだけである、官庁には責任というものは一切ないからだ。

(2)新政権が誕生する場合。このときには自民党5/11提言は無意味になるだけでなく、民主党が政権をとれば国立大学民営化・文部省解体路線が浮上する可能性がある。それを防ぐためには国立大学独立行政法人化を既製事実にして置くことが必要だ。

国立大学が選挙前に独立行政法人化の既製事実を作ることに協力するような非常識な振舞をすれば、国立大学協会理事会に属する国立大学の一部と文部省との間に裏取引があるのではないか、という疑心暗鬼も生じる。

【評議会の使命】各大学で、6月13/14日国立大学協会総会に向けて種々の動きが始まっている。独立行政法人化に一番乗りをしようと意気込んでいるようにしか思えない動きをしている大学が幾つか知られているが、学内の同意をどこまで得ることができるか不明だ。

 4月に施行された改正国立学校設置法によれば、評議会は反対表明をしても学長は総合的に判断して独立行政法人化を受け入れてもよいことになっている。経営的視点まで入れた判断は学長が個人の責任で下す。従って、評議会は経営的観点を考えることなく正論に基づき反対表明をすればよい。すべての国立大学が評議会で反対表明することにより、独立行政法人化を国立大学は決して望んでいない、ということを明確に意思表明できるのである。

【学長の責任】ところで、同僚が問いかけたことだが、独立行政法人化を決断した場合に、学長達は退職した後に、その責任をどうやって取るのだろうか。在職中だけ責任を取ればよいというのであれば、10年後にしか顕現化しない問題点など気にも留めないのは当然とも言える。これは官僚や政治家の責任にも共通する問題点である。指導者に権限が集中しつつある昨今、指導者の決断の個人的責任が引退後も消えないシステムを構築することが急務だ。そうすることで指導者が長期的な展望の下で慎重に判断するようになるかも知れない。

【意見の紹介】略

【引用した資料のURL】
[12-1]2000.5.26国立大学長・大学共同利用機関長等会議における文部大臣説明
 http://www.monbu.go.jp/news/00000456/
 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00526-monbu.html (目次付)

[12-2]1999.9.20国立大学長・大学共同利用機関所長等会議における文部大臣あいさつ
 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/99920-monbu.html

文部省の検討の方向
 http://www.monbu.go.jp/news/00000368/

[12-3]新聞報道5/27-29
 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00527-houdou.html

[12-4]共同通信ニュース速報05/26 16:24より
 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00527-houdou.html#kyoudou

[12-5](発行者)「国立大学の責任」より
 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00528-to-all.html

[12-6][reform:02830 事態は変わったか」より
 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00529-asai.html

[12-7] [reform:02829 大学を評価し変えようとする者の条件] より
 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00529-kondou.html

[12-8]『四国新聞』2000年5月29日付社説より
 http://www.geocities.co.jp/Cafe/3141/dgh/00527-houdou.html#shikoku

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[12-9]国立大学協会則より抜粋
 http://www.geocities.co.jp/Cafe/3141/dgh/kokudaikyou-kaisoku.html

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◆その他の資料
 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/

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発行者: 辻下 徹
 homepage: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst/
 e-mail: tujisita@geocities.co.jp

独法問題会議室: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/room.bbs

バックナンバー:
 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/backnumber.html

発行部数(2000.5.29現在)
CocodeMail:270 / Mag2:423 / Pubzine:25 /Macky!:21 / emaga 21

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End of Weekly Reports No.12 2000-5-29
**この週報は発行者の個人的な意思で行っています**
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