独行法反対首都圏ネットワーク

地方大学こそ改革早めよ(6/1徳島新聞社説)
(2000.6.1 [he-forum 964] 徳島新聞社説06/01)

『徳島新聞』2000年6月1日付社説

独立行政法人化

地方大学こそ改革早めよ

 全国にある99国立大学の独立行政法人化が、本決まりになった。文部省は近く、国立大学の独立行政法人化に向けた検討会議を設置し、2001年度中に新制度の詳細をまとめる。

 独立行政法人は、1996年の「橋本行革ビジョン」で導入の方向が示され、97年の行政改革会議の最終報告で地方分権とともに明記された。

 国の機関に法人格を与え、民間の経営手法を取り入れることで効率化を図るのが狙いで、行政改革の一環。国立の博物館、病院などは、順次、独立法人に移行することが決まっていた。

 しかし、行政改革を目的とした「独立行政法人通則法」を国立大学にそのまま適用すると、「主体性を損ない、教育研究の向上に結びつかない」(中曽根弘文文相)として、同法の下に特例措置を設ける考えも示されている。

 このため、独立行政法人となる国立大学の具体的な将来像は、検討会議の議論を待たなければならない。だが、国に守られてきた国立大学が、戦後初の大変革を求められるのは確かだ。

 日本の大学は、国・公・私立の設置形態にかかわらず、少子化により本格的な競争と淘汰(とうた)の時代を迎える。地方の大学は、特に厳しい環境にさらされることが予想され、国立大学の独立行政法人化を機に、地方大学こそ「生き残り」への改革、個性化が求められる。

 国立大学の教職員数は、約12万5000人に上り、郵政事業に次ぐ規模である。独立行政法人化は、国家公務員の削減、行政のスリム化を図る効率化の発想から生まれており、当初は反対していた文部省も、特例措置を設けることで国立大学を「聖域」としなかった。

 独立行政法人の共通規範である通則法は、主務大臣による役員任命のほか、大臣による中期目標の設定、外部機関による業績評価を定めている。

 文部省は、大学の自主、自律を尊重するため、国立大学については、このうち学長・教員人事、教育研究の目標設定、業績評価、組織の運営−に関して独自の法律を整備したうえで、2003年度以降には、すべての国立大学を独立行政法人に移行させたい考えだ。

 これに対し、国立大学サイドは「自主性が損なわれる恐れがある」と抵抗を続けてきた。だが、国による「護送船団方式」に守られ、予算や人事、組織の硬直化を見過ごしてきた「官体質」の変革が求められているのは確かで、独立行政法人化は時代の流れである。

 ただ、地方大学には危機感が強い。独立行政法人化には、産業界の支援拡大や予算の柔軟な使い方などのメリットがある半面、産業基盤が脆弱(ぜいじゃく)で全国均等に設置された地方大学と旧帝国大学を頂点とした都市の有力大学との格差がさらに大きくなりかねないためだ。

 また独立行政法人化後は、各大学が経営安定と生き残りを図るため、学生の獲得合戦を激化させることが予想され、地方の大学には不利である。

 それだけに、地方大学こそ改革のテンポを早めることが求められており、すでに山梨大学と山梨医科大学、香川大学と香川医科大学の合併構想など生き残りへの模索が表面化している。

 「10年後は、一部の有力校を残し、多くの国立大学が合併などでなくなっているかもしれない」と言われるほど独立行政法人化の影響は大きい。

 地方の大学としては有力校の1つである徳島大学や、教員養成のための単科大学の鳴門教育大学、さらに激しい学生の奪い合いに巻き込まれるであろう徳島の私立大学も無縁ではない。



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