独行法反対首都圏ネットワーク

国立大法人化・自主・自立性を損なうな(5/28琉球新報社説)
(2000.5.28 [he-forum 949] 琉球新報社説05/28)

『琉球新報』2000年5月28日付社説

国立大法人化・自主・自立性を損なうな

 文部省は、昨年九月から本格的な検討を進めてきた国立大学を国の組織の一部から切り離して独立行政法人化する方針を二十六日の国立大学長会議で正式に表明した。

 国の行政改革のひとつとして浮上した問題だが、この間、とりわけ大学関係者からは「教育・研究は効率性の観点になじまない」「いたずらな競争原理にさらされ統廃合が進む」など、批判、反発の声が出てきた。琉大でも「大学改革を考える教職員懇談会」で「教育の機会均等を脅かし、大学の自治を侵害する恐れがある」など、反対意見が強まっていた。

 しかし、表明は事実上の「決定通知」、国民的論議が深まっていない中での決定だ。これで百二十年の歴史がある日本の大学制度は、最大の変革期を迎えることになる。

 懸念の声に象徴されるように、大学の教育研究活動は、大学人の自由な発想が尊重されて初めて実があがる。自主性こそが学問研究をリードするエネルギーである。また、国づくりの根幹を支える人材を育てる役割を担うことから教育の視点は「百年の大計」と言われる。カネや時間がかかる。共通認識でもあろう。

 もちろんわれわれも現在の大学の在り方をまるごと肯定しているわけではなく、危機意識に触発されて大学内部からも変革の時代に対応した改革が端緒に現れてきている。

 法人化によって、組織、管理運営、予算・会計など、がんじがらめの国の規制から解放され、大学が自主性、自立性を発揮する余地が広がるなら大いに結構だ。だが、そこに文部省と水面下の綱引きをした自民党行革本部、文教部会、文教制度調査会の思惑が見え隠れする。

 自民側は、大学の特殊性に配慮し、大学の基本組織、目標・計画、評価、学長人事、名称について調整法の必要性は認めたが、国が運営や組織に相当関与するのは当然である。カネも出すが、口も出すとの露骨な姿勢だ。大学側にはかなり厳しい内容である。

 法人化で、大学の生命線である自主性、自立性が損なわれるようなことになると、何のための法人化かと言わざるを得ない。

 国立大学協会会長の蓮実重彦東大学長は一定の評価をしたが、「地方大学の衰退を招く」と反対姿勢も根強い。文相は公立大も法人格を持つことを可能とする方向で検討する意向も表明した。いずれにせよ国立大学が護送船団方式で守られてきた時代は終わる。

 少子化が進み、具体的に大学間の統合計画も進んでいる。特色と魅力ある大学づくりをしなければ淘汰される。

 法人化は今後、財政、人事、教育研究体制などの具体的な制度づくりが焦点となる。その中で大学側が、法人化には自主性・自立性の確保が不可欠であることを再確認して、制度づくりの論議で禍根を残さないように望みたい。



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