独行法反対首都圏ネットワーク

独立行政法人 地方大学の切り捨てが心配だ(5/28南日本新聞社説)
(2000.5.28 [he-forum 948] 南日本新聞社説05/28)

『南日本新聞』2000年5月28日付社説

独立行政法人 地方大学の切り捨てが心配だ

 文部省が、国立大学を独立行政法人にする方針を正式に表明した。国の行政組織の一部としての位置付けから、独立した法人格を持つ大学に変わる、というものである。

 法人化によって、大学が自主性を発揮する余地が広がるなら歓迎すべきだが、これまでの動きを見る限り、問題も少なくない。効率性を求めるあまり、大学の自主性が損なわれるようでは、何のための法人化なのかと問いたい。

 大学の教育研究活動は、大学人の自由な発想が尊重されて初めて実が上がる。大学を博物館や図書館など他の行政組織とひとくくりにして、法人化するには無理がある。

 にもかかわらず、政府の目指す法人化は国家行政組織のスリム化を目的に、国家公務員数の削減を最優先したものだ。大学の自治や独自性にかかわる課題は二の次になっている。大学を国のコントロール下に置こうという姿勢があからさまだ。国立大学協会が反発してきた理由もそのへんにある。

 文部省は、大学に関しては独立行政法人通則法を直接適用せず、特例法などを制定して自主性を尊重する考えだ。それでも予算や人事、研究教育体制といった具体的な内容は不透明のままで、不安はぬぐいきれない。

 法人化で懸念されるのは、大学間の格差がいっそう拡大されることだ。人気のある大学とそうでない大学に二極化される恐れがある。授業料も一律でなくなるし、学生の募集にも影響が出るだろう。統合や再編が進み、最終的には消えていく大学も出てこよう。

 こうした危機感は特に地方の国立大学に強い。文部省は「法人化しても独立採算性ではなく、これまで通り運営費交付金が手当てされる」というが、国家財政の危機的状況からすると、うのみにはできない。選別と淘汰(とうた)は避けられず、地方大学の切り捨てにつながる事態は予想できる。

 地方大学は、これまで地域の発展のために大きく貢献してきた実績を持つ。今後も教育、文化、産業など多面的な分野で重要な役割を担うことは間違いない。

 文部省は、近く専門家会議を発足させ、具体的な制度づくりの検討に入るが、こうした実態を考慮して、大学改革を進めてほしい。並行して、大学側にも魅力ある大学をつくる努力が求められる。



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