独行法反対首都圏ネットワーク

国立大学 理想の法人目指す一歩に(5/27毎日社説)
(2000.5.28 [he-forum 945] <毎日新聞社説>国立大学 理想の法人目指す一歩に)

<社説>国立大学 理想の法人目指す一歩に

毎日新聞ニュース速報

 文部省が国立大学の独立行政法人化に踏み切ることを決め、26日、全国99の国立大学学長に伝えた。国立という設置形態に手が加えられるのは、大学制度120年余の歴史でも初めてのことだ。ここ十数年進められている数々の改革の中でも、最も重要な転換といえる。

 しかし皮肉なことに、この重要な転換は、当事者である国立大学、文部省の発意によって、大学改革の理念から提起されたものではなかった。省庁再編に伴う行政改革の一環として、国の業務の効率化、公務員定数削減を眼目に持ち出されたのである。このことが、事の本質をゆがめ、複雑にした。

 国立大学が多くの問題を抱えているのは事実だ。組織や人事、財政の細部に至るまで、国に縛られている硬直化したシステムが、大学の教育研究の活性化を阻む要因になっていることは否定できない。親方日の丸意識から、旧態依然の現状に安住、改革を怠ってきたことが沈滞を招いているとの批判も免れない。国立大学という設置形態が、これから先も今のままでいいとは思えない。法人化に向けての検討は必然だろう。

 ただ、法人化にあたっては、さまざまな形態がありえた。教育研究機関にふさわしい法人を探る努力が必要だった。しかし今回は、初めから独立行政法人という枠内での検討を余儀なくされた。文部省、大学審議会、大学関係者が真剣な取り組みを怠ってきたツケというほかはない。

 文部省の方針は、独立行政法人制度を前提とするものの、主務大臣による(学)長の任免、中期目標・計画、評価などについては、通則法とは別に、調整法か特例法を新たに制定して対応するというものだ。今後有識者による検討会議を開催して、具体的な作業に入る。来年度中に結論をまとめ、実施に移すという。

 事ここに至っては、独立行政法人制度のもとで少しでも大学にふさわしい法人に近づけていくよう努めることが、当面の課題になるだろう。通則法をそのまま国立大学に適用するには無理があり、調整法で対応するという文部省方針は、現実的といえる。ただ、具体的な肉付けはすべてこれからだ。検討会議には広い視野からの丁寧な論議を望みたい。

 法人化は、個別大学の自由度を増す半面、厳しい競争を強いる。弱肉強食となるのは避けられず、地方や教員養成系など基盤の弱い大学には何らかの配慮が必要だ。大学関係者は、自らの存在意義をアピールし、理解を得るよう努力してほしい。

 長期的には、21世紀の日本の高等教育をどうするのかという視点からの新たな取り組みが欠かせない。

 日本の高等教育に対する公的投資水準は、欧米諸国に比べて極めて低い。抜本的な改善が必要だ。

 国立と私立の関係にもメスを入れる時期が来ている。大学も学生も、70%以上は私立だ。しかし国立大学に1兆5000億円の税金が投入されているのに対し、私立大学には3000億円の私学助成が出ているにすぎない。大学・短大進学率50%の時代に、これだけの格差を正当付ける理由は見いだしにくい。

 これからの時代の「国立」大学の存在意義は何なのか、どんな法人が望ましいのか、私立の法人はどうあるべきなのか、公的投資の配分はどうするのか、根本的なところからの論議が求められている。

[2000-05-27-23:29]



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