独行法反対首都圏ネットワーク

地域の支援、連携が不可欠(5/28北國新聞社説)
(2000.5.28 [he-forum 944] 北國新聞社説05/28)

『北國新聞』2000年5月28日付社説

地域の支援、連携が不可欠

 文部省は国立大を独立行政法人化し、来年度中にも新制度の詳細をまとめることを決めた。これまで国に守られてきた「護送船団」の大学がそれぞれ法人格を与えられた新しい組織に変わることになり、大学が独自色を出さなければ存続が危うくなる可能性がある。金大、富大も法人化に備えた取り組みを始めているが、地域との連携を密にし、十分な支援が得られる改革に努めてもらいたい。

 法人化で大学がどう変わるのか、見えてこない部分が多いが、地域の大学にとっては大きな懸念が先に立つ。文部省は「大学の自主性を大幅に拡大し、教育研究の進展を図る」利点があるとする。しかし、それは護送船団の中核をなしてきた旧帝大などの大学には通用しても、規模や予算が格段に違う大学には厳しい制度となる。似たような学部や学科が分散する北陸では、大学間の大胆な連携、学部の統廃合が迫られよう。

 さらに、国が大学の予算にどうかかわっていくのかも、大きな問題となる。法人化では、企業などからの研究費収入を増やす利点が指摘されている。地域の産業界や自治体などとの連携が求められるのだが、北陸などの場合、大企業が集中する地域に比べてハンディがある。財政基盤の強弱は、教職員の待遇や学生の授業料などに必要以上の格差をつける結果を招きかねない。文部省は特例措置によって大学の自主性を確保するとしているが、地域の実情に配慮した財政措置が不可欠であろう。

 文部省は制度の具体案をまって、十五年度以降に独立行政法人に移行させる方針という。スケジュールは着々と進むが、大学側の対応にはまだ遅れが目立つ。大学や学部の自治の建前が、急激な変革への対応を鈍くしてきたことは否めない。国立大がこれまで以上に、地域の教育や産業、医療などに貢献するために、大学側のより積極的な取り組みを期待したい。

 法人化は避けられぬ時代の流れであろう。さらに、少子化の進展で、大学・短大の志願者数と入学者が同数になる「全入時代」が十年以内に到来するとされている。法人化への対応には、私大を含めた競争の戦略も求められている。地方の大学の切り捨てにつながるという警戒感が根強いが、そうならないために、大学側の努力に加え、地域からも望ましい大学像を積極的に提示して改革に反映させたい。



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