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「主張 教授会は学長をしばるな」(産経新聞6/19)
(2000.6.19 [he-forum 1041] 産経新聞06/19)

『産経新聞』2000年6月19日付社説

主張 教授会は学長をしばるな

【大学活性化】

 文部省の新任の高等教育局長が国立大学長会議で、「日本の大学は教授会の権限が強すぎる」などと批判した。大学活性化の阻害要因にもなっていた教授会自治の行き過ぎに歯止めをかけ、学長の指導力発揮を促したものと受け止めたい。

 文部省の局長が居並ぶ学長たちの前で大学を批判するのは、異例のことだ。局長は「独特の大学自治が極端な形で定着している」「学長経験者から『自分には何の権限もなかった』という嘆きを聞いた」とも発言している。学長らの受け止め方は、苦笑と苦々しげな表情が半ばしたというが、そんな場合ではないだろう。

 日本の大学は昭和四十年代の全共闘運動の影響もあって、学生自治や教授会自治がことさら重んじられ、それをおさえようとした学長は糾弾された。その後、学生自治は自制する方向にあるが、教授会を中心とした学部自治は依然強く、学長が十分な指導力を発揮できない一因になっている。

 「自治」というと聞こえはよいが、日本の大学では、それが産業界など外部からの要請を遮断し、新しいものに挑戦する芽をつんできた面がある。こうした悪弊を改め、学長を中心としたスムーズな意思決定システムを確立する必要がある。これは、公私立大学にもいえることだ。

 米国の大学の学長は絶えず優れた教育者や研究者を求めて世界を駆けずり回っている。それが、国や民間企業からの予算獲得や優秀な学生の獲得につながるからだ。日本の学長も、少しはこのやり方を見習ってほしい。

 国立大学長の集まりである国立大学協会(国大協)も対応力を欠いている。大学に自主的な運営と競争意識を求める独立行政法人化問題について、文部省が昨年、原案を示したにもかかわらず、国大協側は有効な代案を出さず、ただ反対しているだけだ。これでは納税者は納得しない。

 以前の国大協は、もっと活気があった。大学の教育研究施設の老朽化が著しく、それを改善するための予算獲得という共通目標があったこともあるが、今は各大学自身が活性化のための機構改革を求められているのである。

 文部省の局長は、日本の大学の「悪平等」も批判した。教育や研究の評価に応じ、予算をさらに重点配分していく姿勢を示したものとみられる。

 現在、日本には九十九の国立大学がある。だが、これといった改革の意欲がみられず、学生にも企業にも魅力のない大学は、国立といえどもやがてつぶれる時代がくることを、学長らは自覚すべきだろう。



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