独行法反対首都圏ネットワーク |
独立行政法人化問題週報抄 No 14
(2000.6.20 [he-forum 1039] 独立行政法人化問題週報抄 No
14)
北大の辻下です。
蓮見会長の記者会見の詳しい内容(by日本科学者会議)[14-4-1]を見ると東京新聞の「事実上の法人化宣言」報道は意図的な誤報であることが明確です。国立大学協会は即時に公式に抗議すべきだと思います。
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独立行政法人化問題 週報抄 Weekly Reports No.14 2000.6.19 Ver. 1.1
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/wr-14-00619.html
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(先週は休刊しました。重要な時期に申し訳ありません。)
【最近の動き】
6月13/14日の国立大学協会総会に向けて、様々な大学で声明や要望書が出され、調査検討会議へ参加しないよう訴える声が全国的に広がった。北大でも6月7日の評議会で、調査検討会議への参加の是非を議論することを総会で提案してよいかどうかを総長が評議員に意見を問うたが、否定的な意見が評議員から複数上がった[14-1]。また、会則28条にしたがって国立大学協会に一般教員自身からいくつもの意見書が提出された[14-2]。その中でも、東大社研の田端氏が起草した共同要望書[14-2-1]には、12日の夕方から翌朝の朝までに、全国36大学から115の賛同が集まった。13日に、国立大学協会事務局にこれらの要望書等が提出された。東大職員組合の総長交渉[14-3]での蓮見総長の発言から、調査検討会議へ国立大学協会として参加することを予想した人は少なかったようだ。
しかし、14日の総会後の記者会見[14-4]で蓮見会長は、1997年の国立大学協会の反対決議[14-5]は変わらないこと、協会内に設置形態特別検討委員会を設けて独自の案を策定すること、調査検討会議(4分科会計約60名)に国立大学協会として10名弱を送り積極的に参加すること、「学術文化基本計画」の策定を課題とする議論の場の設定を要求すること、の4点で合意に達したと発表した。東京新聞は事実上の法人化宣言であると報道した[14-6]が、これは誤報であり、記者会見[14-4-1]で蓮見会長は、理想的な形の独立行政法人化であれば受け入れるという形では合意を問うていないし問うても合意は得られなかっただろう、ということを強調している。
翌日15日の文部省召集の定例国立大学長会議で、同日高等教育局長に就任した工藤智規氏は、国立大学に「強すぎる教授会」「研究偏重主義」「悪平等」の3つの悪癖があると批判したに留まらず冗談めいて「学位を出さない大学院には予算を出さないぐらいのことは必要かもしれない」とまで述べたが大学への「エール」だったという[14-7]。これに対して大学から文部省へのエールとして4つの悪癖が発行者によって指摘されている[14-7-1]。
【国立大学協会総会合意を巡る諸意見】
14日の夜のNHK「あすを読む: 国立大学が変わる」[14-8]では独立行政法人化の背景を詳しく説明して文部省と大学双方に対して慎重な議論の展開を求めている。東京新聞15日の朝刊[14-6]は「国大協の実質的法人化宣言」という表現をとっている。共同通信速報[14-9]では、「国大協は、通則法に添って大学の特殊事情を考慮した「特例法」を制定するなど、国立大側の意見を十分反映した法人化の在り方を探りたいとしている。」と述べており、やはり、調整法+通則法での独立行政法人化容認、という捉え方をしている。
大学側では、色々な受け取り方があると思われるが、国立大学協会が分裂することなく調査検討会議に参加することにより、独立行政法人化の詳細を検討する中で全大学が一致協力して学問の自由と運営の自由の双方が保障された法人化の実現を目指す第二ラウンドの戦いに入ってよかった、という見方が多いようだ。
しかし、蓮見会長は記者会見[14-4-1]で、理想的な独立行政法人化や、理想的な法人化なら受け入れるといった合意をしたわけではないことを強調しているだけでなく、「最終的にまったく理想的な形態がそこに成立しなければその後新たな問題が起こるだろうというふうに考えます。」と述べ、国立大学制度に留まる可能性も残っていると解釈できる発言をしている。この発言からすれば最終的な法人化案ができた段階で法人化そのものの是非を問う可能性もあるようにも受取れるが、一方では、そのような可能性は幻想ではないかとも言える。
独立行政法人化を白紙に戻すことが最善の解決と考える多くの者の中には、総会合意の内容を知って落胆したが、第二ラウンドで戦う方向に気持ちを切り替えようと努力する者も居るであろう。学問の自由の重要性を強調してきた人の中にも調査検討会議に論客を送り込んで論陣を張ることで事態が好転できると期待している人もいる。発行者も15日の段階では同様の気持ちであった[14-11]。
しかし、こういった期待は、そもそも正論で事態が大学に好ましい方向に変えられるのならば、最初から独立行政法人化を拒否できたはずだ、という点を看過しているように思われる。事の成否を決めるのは、学外に「学問の自由」とはどういうものかを理解する人を増やすことであり、極めて壊れやすい「学問の自由」こそ国費で維持しなければならないものである、という当然の議論が通るような状況を作りださない限り、どのような論陣を張っても無視されるだけなことは自明である。そのことは、15日の国立大学長会議での工藤高等教育局長の発言[14-7]からもほぼ確実に予想されることである。
発行者は、調査検討会議へ参加するという形式で始まる第二ラウンドへの期待は幻想である、という確信を次第に深めているが、それ以前に第一ラウンドが終わったという判断が誤っていることを豊島耕一氏が指摘した。
【豊島耕一氏の指摘】
18日に佐賀大学の豊島耕一氏は重要な問題点を指摘した[14-12]:
(1)国大協として調査検討会議に参加することにより会議結果に国立大学全体が従わざるを得なくなったこと
(2)このような重大な方針を大学での議論抜きに決めてしまったが、そのよ
うな権限は大学の代表として総会に出席しているに過ぎない学長にはないこと
そして、国立大学協会総会の合意事項の中で調査検討会議への参加を取り消すことを学長に要求することを呼びかけた。
【国立大学がすべきこと】
国大協は次の3点をすみやかに行うべきである。
(1)事実上の法人化宣言、と報道した東京新聞に対し公式に抗議し、何を合意していないか、を明確にする。
(2)調査検討会議に参加することは、会議の結論に国立大学協会が従うことを約束するものではないことを明確にする(必要があればオブザーバとしての参加に変更する)。
(3)最終的な具体的法人化案が定まったとき、それを受け入れるかどうか、
国立大学構成員全員の意思を問う場を設けることを約束する。
各大学で上の3点について学長の見解を確認し、国立大学協会に上の3点を要求するように求める。(2−3)については必要があれば臨時国立大学協会総会を開いて明確にするよう、求めるべきである。また、学長が総会合意について東京新聞と同様に解釈している場合にはその誤りを正すよう求める必要がある。
なお、各教員は直接会則28条に基づいて国立大学協会に意見書を出すことができる[14-13]。
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発行者: 辻下 徹
バックナンバー:
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/backnumber.html
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End of Weekly Reports No.14 2000-6-19
**この週報は発行者の個人的な意思で行っています**
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