独行法反対首都圏ネットワーク

=科学技術会議総合計画部会開く=産学連携で激論展開
(2000.6.18 [he-forum 1036] 科学新聞06/09)

『科学新聞』2000年6月9日付

研究者の流動化や特許など
=科学技術会議総合計画部会開く=
産学連携で激論展開

 平成13年度から始まる次期科学技術基本計画を検討している科学技術会議総合計画部会は5月31日、産学官連携、研究施設、評価など、システムの改革方策について検討を行った。特に産学連携では、民間も含めた研究者の流動化や特許の活用方策などについて激しい議論が展開された。

 産学連携を促進するためには、その前提としての情報・人的交流が不可欠となるが、現実にはそういった視点からの交流はあまり行われていない。また、ポスドク一万人計画によってポスドクや大学院博士課程の学生が増え、日本の研究環境は活性化したが、新たな問題として研究者としてのポストを得られない浪人も増加している。議論では、これらの問題を解決するため、若手研究者の求職情報をインターネット上で公開し、民間企業がいつでも参照できるようにするという提案がなされた。

 また、これまで特許は個人所有が主流であったが、基本的には機関が管理することとし、その特許が利益を生んだ場合は個人にも還元する仕組みを作るべきであるとした。しかし、アカデミックな研究者の多くは、金銭が還元されることよりも、むしろ自らの研究成果が世界中で役立ち、名声が上がることの方を望んでいる。現在の特許の多くは防衛目的のために、企業が死蔵させてしまっている。そのため議論では、機関の事務局機能を強化し、経営感覚と営業センスのある特許部門を作る必要があるとした。

 現行基本計画の目的の一つは、劣悪な環境を改善し”頭脳の墓場”国立大学を活性化することにあった。そして、現行計画前の5年間と今年度までの5年間を比べると、科学技術関係経費は4.5兆円増加した。しかし、国立大学の施設費は1兆1千86億円から1兆688億円まで減少している。この5年間に財政構造改革があったことも原因の一つだが、より大きな問題は当初予算には多額の施設費を付けられないという予算構造上の問題がある。そのため、ある文部省幹部も「補正予算による場当たり的な整備しかできない」と認めている。議論でも、予算構造自体を変えられないかと意見が出されたが、科学技術会議のレベルでの議論はあまり現実的ではない。現在の予算構造の中でいかにこれらの問題を解決していくかが、今後の重要な論点になるだろう。

解説

 現在の研究システムは多くの問題をはらんでおり、しかも複合的に重なり合っている。例えば、海外の企業などでは学部学生やマスターの学生より、むしろ視野の広いポスドクを採用する。しかし、机も与えられない狭い環境で、研究プロジェクトの一パーツとして研究をしている状況では、幅広い視野を育むことは難しい。こういった幾つもの問題を解決するために当面必要なことは、科学技術関係経費と高等教育への公財政支出を大幅に増加させることだろう。



目次に戻る

東職ホームページに戻る