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21世紀のわが国を託する私学の振興方策等について〔中間報告〕
/自民党文教部会私学振興プロジェクトチーム
(20005.27 [he-forum 940] 自民党文教部会情報)
http://www.jimin.or.jp/jimin/saishin2000/seisaku-017.html
21世紀のわが国を託する私学の振興方策等について〔中間報告〕
平成12年5月18日
文教部会
私学振興プロジェクトチーム
文教部会 私学振興プロジェクトチーム(主査 小川 元衆院議員)が5月18日に決定した提言(中間報告)は、5月23日の文教部会・文教制度調査会合同会議に報告され了承された。
提言文は以下のとおり。
わが国の教育は、戦後優れた人材を多く輩出し、わが国の発展を支えてきた。しかしながら、今日の続発する青少年の諸問題は、現在の教育が行き詰まっている証拠である。このため、今年3月には、総理の主導の下、「教育改革国民会議」が設けられ、教育改革について国民的な議論が行われている。今後、これらの議論や国民運動により、「心の教育」の充実、多様な選択が可能な学校教育の実現、世界に誇れる大学教育・学術研究の推進などの教育改革を行うことになるが、これらの改革は政治主導で積極的かつ大胆に進める必要がある。
教育改革を進めていく上で、私立学校に対する国民の期待は大きいものがある。在学者についてみると、幼稚園の8割、高等学校の3割、大学の8割、専修学校の9割を私学が占めており、わが国の学校教育の普及発展に大きく貢献している。同時に、私立学校は、小・中学校を含めて、建学の精神に基づき、特色ある教育研究を推進することで、国民の多様なニーズに応えつつ、様々な先導的な取り組みや学校教育のモデルとなる優れた教育研究の実践を通じて、教育改革をリードするなど重要な役割を果たしている。
また、これからのわが国の学校教育の健全で力強い発展のためには、学校間の競争を促し、親や子供が学校を選択することによって教育機関が切磋琢磨することにより、真に子供たちのための教育ができる環境を至急つくる必要がある。
しかしながら、国、地方公共団体の私立学校に対する財政支援等の状況を見ると、国公立学校に比べ著しく劣っているのが現状である。我々は、今後、私学振興助成法がめざす経常費2分の1補助の実現を図るなどにより、現行の極端な国・公立優先の財政支援を抜本的に改め、子供を私学に通わせたい家庭が、経済的理由により断念することがないような環境づくりを行う必要がある。
先頃、当プロジェクトチームで実施した自民党全国会議員に対するアンケート調査結果においても、初等中等教育、高等教育を通じて抜本的な私学振興を図るべしとの意見が圧倒的多数を占めた。今後、国・公・私立学校が、共通の基盤の上で、競争し、お互いが刺激し合ってより良い教育研究活動を展開できる条件を早急に整備する必要があり、このための私学振興策として、次のようなものが考えられる。
考えられる施策
1.幼稚園から高等学校までの私立学校について
(1)全般的事項
○ 幼稚園から高校までの経常費に係る国の財政支援の大幅な拡充
・国の経常費補助金と地方交付税措置を合わせた、国としての財政支援を、2分の1補助の実現をめざして大幅に拡充する。
・国の経常費補助金については、平成13年度にも1,000億円を目指し、その上で5年間を目途に経常費に対する国の補助金の割合を10%とする等の目標を設定して、毎年度の予算を着実に増額する。
○ 個人・企業からの寄付等に対する思い切った税制優遇措置
・企業等が私立学校に寄付を行う場合に、損金算入できる限度額を現在の2倍から3倍に拡大する。
・個人の学校に対する寄付については、国公私立を通じて、全額非課税とし、特に、1万円以下の寄付については税額控除とする。
・損金算入限度額を使い切っていない企業が多いことを踏まえて、わが党や文部省が、企業に対して私学に対する寄付促進を強力に要請する。また、教育改革国民会議など様々な場においても、このことが取り上げられるべきである。
・私立学校においては、企業や個人が寄付を行う動機付けについて各種の工夫・努力を行う必要がある。
・少子・高齢化社会の進展を展望して、リバース・モーゲージ手法による個人からの資産の寄贈・遺贈を促進することについては、当面、リバース・モーゲージ手法そのものの税制上の取扱いを注視しつつ、学校法人に対する寄付への適用について研究を積み重ねていく。
○ 私学入学者へのバウチャー制度の導入
・平成12年度税制改正で年少扶養控除の上乗せ分が削減されたこともあり、各都道府県で実施されている授業料軽減補助の実態等を踏まえつつ、私立高校入学時にバウチャーを支給するなどの措置を講じる。
○ 父母負担の軽減に配慮した私学教育費減税の実施
・児童手当の増額と年少扶養控除の取扱いについては、平成13年度税制改正及び予算編成に向けて与党間で協議されることとなっているが、教育費の父母負担の軽減などの観点から扶養控除額が加算され、その後、児童手当の財源として振替えられた経緯を踏まえて、私学教育費減税等の実施を図るべきである。
○ 私学教育費の負担軽減に配慮した贈与税の控除額の思い切った拡大
・家計にとって大きな負担となっている私学教育費の現状を踏まえて、祖父母等が孫などの教育費用に充てるために贈与した財産については、これが非課税となるように現行の基礎控除額(60万円)を大幅に拡大する。
(2)個別の施策
○ 私学の特色を生かした取組み等に対する補助の推進
・私学においても不登校児童・生徒などを積極的に受け入れることが期待されており、これらの児童・生徒に関して優れた教育活動を展開している意欲のある私学に対する特別な補助や中高一貫教育のモデルとなるような取り組みに対する補助を充実・強化する。
○ 魅力ある教育が実施できる施設・設備等整備に係る補助の拡充
・高等学校から小学校までが対象となっている私立高等学校等教育近代化等施設整備費補助金の抜本的改革や情報化等を推進するための設備補助の強化など私学の魅力ある教育を強力に推進・支援できるよう拡充する。
・老朽校舎の建て替えに係る利子助成制度については、大学等と同様、対象範囲の拡大を含め、私学のニーズに適切に対応できるよう見直す。
・これらの補助金や助成制度については、各都道府県において、上乗せ補助等が整備されるよう、地方交付税措置を含めて、積極的に働きかける。
○ 幼稚園の特性に配慮した助成措置の拡充
・幼稚園と保育所の公的財政支援の格差にも配慮して、経常費補助金の幼稚園に対する補助単価を増額する。
・幼児期の教育の重要性にかんがみ、地域における育児センターや家庭教育センターとしての機能を強化するための経常費や施設整備に対する補助を拡充する。
・父母の教育費負担を軽減するため、幼稚園就園奨励費を拡充する。
・家庭や地域との連携などの活動に着目して、個人立幼稚園等を含めて設置者の如何を問わずに支援を行う各種施策を推進する。
○ 初等中等教育段階の私立学校の設置促進と定員確保
・幼稚園から高等学校までの私立学校について、規模が小さくても特色のある私学の設置が促進されるよう、各都道府県に対して積極的に働きかける。
・各都道府県における公立高校と私立高校の収容定員に係る協議において、私学の意見が十分反映されるよう、各都道府県に対して働きかける。
・公立学校の空き教室・校舎の私学に対する無償貸与等を積極的に進める。
2.私立大学等について
(1)全般的事項
○ 今後10年間における高等教育に対する国の財政支出の倍増
・増加分のうち基礎的経費については、例えば、国・私の区別なく学生数に応じて配分するなど、経常費に対する2分の1補助の実現をめざして、私立大学等を中心に拡充する。
○ 私立大学の研究活動に対する財政支援の拡充
・私立大学における研究基盤の拡充が、わが国の科学技術の発展・強化のために不可欠であることから、ソフト・ハード両面に対する財政支援を拡充する。
○ 希望者全員を支援できるような奨学金の拡充
・特に私立大学や私立高等学校等に通う学生・生徒や親の家計負担が重くなっていることを考慮して、能力と意欲を持つ者に経済的援助を与えるため、奨学金を拡充する。
○ 個人・企業からの寄付等に対する思い切った税制優遇措置
・初等中等教育段階の私立学校と共通する施策として、外部からの資金確保のための税制上の優遇措置を積極的に講ずる。これに加えて、特に受託研究を通じた産学連携に係る私立大学の研究資金の非課税化を早急に実現する。
○ 私学教育費の負担軽減に配慮した贈与税の控除額の思い切った拡大
・初等中等教育段階の私立学校と共通する施策として、私立大学等の教育費用に充てるために贈与された財産については、これが非課税となるように現行の基礎控除額を大幅に拡大する。
(2)個別の施策
○ 経常費補助を通じた私学の特色ある教育研究の重点的な支援
・昨今の定員充足状況等を踏まえて配分方法の見直しを行うとともに、専門大学院をはじめとする大学院の高度な教育研究や短期大学の特色を生かした活動など、意欲的な魅力ある教育研究に対する特別補助を拡充する。
○ 私立大学の施設・設備等の整備に対する補助の抜本的拡充
・優れた学術研究プロジェクトや情報化等に係る施設等整備に対する国の補助を拡充・強化する。
・設備補助についても、私立大学等のニーズを踏まえ、抜本的に拡充する。
・老朽校舎の建て替えに係る利子助成制度について、対象範囲の拡大を含め、私学のニーズに適切に対応できるよう見直す。
○ 私立大学における留学生受入の積極的な推進
・わが国における留学生政策の重要性にかんがみ、私立大学が、国・公立大学と対等に、留学生を積極的に受け入れることができるよう、私費外国人留学生援助、国費留学生の計画的な受入や留学生宿舎の安定的確保などの諸事業について、私学に対する支援を拡充・強化する。
○ 私学の特色を生かせるような諸規制の見直し
・教育に熱意と能力のある人材が年齢に関係なく教授等となることができるよう、大学等の設置認可に関して、教員資格の基準や審査方法等を見直す。
・短期大学の学科の改組等が迅速に行えるよう、審査期間の短縮など設置認可手続きの簡素化を進める。
○ 専修学校・各種学校に対する私学助成の拡充
・専修学校が、大学卒業生や社会人をも対象として、専門職業能力の開発・訓練に重要な役割を果たしている現状を踏まえて、技術革新等に伴う先端設備・装置等の適時の設置と更新に対応できるよう、補助を拡充する。
・専修学校・各種学校に係る地方交付税措置については、その単価が各都道府県の補助金額の実態とかけ離れており、地方交付税交付額を大幅に拡充する。
・日本育英会奨学金貸与事業については、専修学校の学生に対する支援を拡充することとし、特に、無利子奨学金の対象者数を大幅に増加する。
・実学や職業資格を重視して専修学校で学ぶ外国人留学生が増加している実態を踏まえて、専修学校に係る国の留学生支援策を拡充する。
これらの私学振興策をどう組み合わせて実施することが目的を達成する上で最も効果的か、財源をどうするか、あるいは法改正の要否などの問題については、今後、更に精査するとともに、平成13年度概算要求等にむけて、具体的施策や目標達成年度などについて詰めていくこととする。
国公私立を通じた課題の検討
私学振興策を検討する過程において、国立、公立を含めた学校制度全般にかかわる課題も数多く指摘されたところである。とりわけ、以下のような諸課題についての検討が重要と考えられ、引き続き、文教部会や文教制度調査会はもとより、党内の関係する組織などにおいて、幅広く議論が行われる必要がある。
○ 科学技術の分野と人文・社会科学系のバランスの取れた学術振興
○ 奨学金制度の拡充
○ 学校教育法第59条の教授会の規定の見直し
○ 短期大学の位置づけの見直し
○ 幼稚園と保育所の関係
○ 専修・各種学校における職能教育の教育訓練制度全体における位置づけとそれに応じた振興方策の在り方