独行法反対首都圏ネットワーク

読売新聞5/27付 社説「法人化を大学改革に生かせ」
(2000.5.27 [he-forum 939] 読売新聞社説05/27)

『読売新聞』2000年5月27日付社説

 ◆法人化を大学改革に生かせ◆

 国立大学を独立行政法人化することが本決まりとなった。文部省が制度の具体的検討を始めるが、真に大学改革につながる制度となるかどうか、課題は多い。

 独立行政法人は、民営化まではできない国の業務を、外部化することで効率的、効果的に遂行することを目的に構想された。しかし、自由な教育研究活動を目的とする大学が、経済的な側面からだけ規定されるのは言うまでもなく適切ではない。

 二十六日開かれた国立大学長会議で、文相は、独立行政法人の一般的な形を規定した通則法との間を調整する特例法を設ける考えを示した。これによって他のいずれの独立行政法人とも違う、大学の特性を生かした独自の制度が可能になるという。

 しかし、現時点ではその具体的な姿がまったく見えて来ない。多くの国立大学関係者が不安を抱いているのは当然だろう。

 例えば予算執行について文部省は、使途を特定しない国からの運営費交付金と、教育研究活動の評価を反映させた傾斜配分があり、柔軟さが増すと説明している。しかし、交付金と傾斜配分の比率はどうなるのかについては何も決まっていない。

 授業料についても現時点でははっきりしない。仮に完全に自由化されたら、高くても学生が集まる大学と安くしなければ集まらない大学など、大学間に格差が生じ、それが悪循環を招く可能性もある。

 こうした懸念は特に地方の国立大学に強い。現状では産業界などからの支援も少ない地方大学が、一気に中央の大学と対等の立場で競争することには無理があるとする主張にはそれなりの説得力がある。

 全国に均等に配置された国立大学が、これまで地域の教育、文化、産業の基盤を支えてきたのは間違いない。地方分権の流れからも今後重要性を増す地方大学への一定の配慮は必要だ。授業料に国がある程度関与するのもやむを得ないだろう。

 学長人事がどうなるかについても各大学の関心が高い。自民党が学長選考の見直しを打ち出していることもあって、大学の自主性が阻害されると受け止める向きもあるようだが、これは間違いだ。

 法人化されれば、教員の給与は大学ごとに労使協約で決める。組織改革なども基本的には大学の裁量に任される。学長にはそれらを混乱なくこなしていく強力なリーダーシップが求められることになる。

 学内力学などが優先し、人気投票のようになっているこれまでの選挙を見直すのは当然だ。大学の経営能力という観点から、学内外の幅広い層を集めて適任者を選ぶ仕組みを考える必要がある。

 これら新制度の詳細は、識者などによる調査検討会議を設け、来年度中に取りまとめるという。大学の活性化のため、学生そして国民のため、という基本を忘れずに、いい制度を立ち上げてほしい。

 少子化の進行で、大学が淘汰(とうた)される時代は近い。実際に統廃合の動きも出始めている。国公私立大学の配置はこの先どうあるべきなのか。国立大学の独立行政法人化を機に、その論議も始める必要がある。



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