独行法反対首都圏ネットワーク

朝日新聞05/27
(2000.5.27 [he-forum 937] 朝日新聞05/27)

『朝日新聞』2000年5月27日付

国立大の法人化表明
10年めど移行方針 公立大も視野に 文部省

文部省は二十六日、東京都内に国立大学の学長らを招集し、九十九すべての国立大と大学共同利用機関を国から独立した行政法人とする方針を正式に表明した。早ければ再来年の通常国会でで法人化のための法案を成立させ、「国立大学法人」などの名称で十年程度のうちに移行を完了させたい考えだ。さらに文部省は、全国に七十二校ある公立大学についても「国立大に準じた対応を検討する」とし、設置者である自治体から離れて法人化できる方向で制度を見直す考えを新たに明らかにした。国立大に加えて公立大も法人化の見通しが出てきたことで、大学の「護送船団」方式は崩れ、競争と淘汰の時代に入るのは必至の状況となった。 (2面に解説)
学長らの会議で中曽根弘文文相は「法人化すれば国の規制が緩和され、自主性が大幅に拡充する」と強調した。文部省は近く有識者による会議を置き、具体的なシステムづくりに入る。大学の自治を配慮した法律もつくるとしている。
「公立大の法人化」は、活性化の方策として浮上した。公立大は自治体財政に支えられているものの、独自の資金集めがしづらく、予算の使い道も融通が利かない欠点がある。文部省は自治省などと協議するが、省内には▽国立大にならい、新法を作って独立行政法人のような法人格を与える▽自治体出資の「公社」をつくって運営する方式をとる▽地方自治法などを改正し、設置者は自治体のままで運営の自由度を増す「実質的な法人化」を目指す―などの案がある。

国立大法人化
「弱肉強食」防ぐ必要
予算規模 最低限の保証不可欠

(解説)「国立大学に法人格を与える」という考え方は、実は四十年も前から大学関係者にあった。それはとりもなおさず、今の制度では、国立大は文部省の一機関でしかないため、「組織の改組もままならない」といった理由からだ。
しかし、政府が検討してきた法人化案は、こうした思いをくんだものではない。もともとは、政府が「二〇一〇年度までに国の直轄機関の人員を二五%削減する」との方針を掲げたことに始まっており、数合わせの手段として、約十二万五千人の教職員をもつ国立大に手をつけようとした経緯がある。
文部省は、自民党との交渉の中で「大学の事情に配慮した法律をつくる」という約束を取り付けたため、法人化を最終決定したという。学長人事などで大学の自主判断を優先できる見通しになり、一応は最低限の自治が確保できると判断した、としている。
文部省は公立大についても法人化を検討する考えだが、法人格を与えれば、「高待遇で実力のある研究者を招く」「寄付金や企業からの受託研究費を直接大学の収入にする」といったことが可能になる。有力大学には「飛躍の好機」ととらえるところも少なくないだろう。
ただし、法人化に際しては、「弱肉強食」の環境にしないことが強く求められる。一口に国立大学といっても、陣容や環境は千差万別だ。地方大学や教員養成系などの小規模大学には、「有力大学と同じ尺度で評価されたら、とてももたない」「予算配分が激減し、立ちゆかなくなる」という不安が強い。全体をバランスよく発展させるには、少なくとも現状の予算規模は各大学、各分野に「最低ライン」として保証することが絶対条件だ。その上で、自由競争によって上積みして獲得できる予算を増やす必要がある。
文部省が想定する「全国立大学の法人化」にも再考を求めたい。個々の大学の意見に耳を傾け、現在の形態で残りたいという要望があれば、受け入れをためらうべきではないだろう。
(社会部・村上 宣雄)



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