独行法反対首都圏ネットワーク

北教大札幌教職組定期総会決議・声明
(2000.5.26 [he-forum 929] 北教大札幌教職組定期総会決議・声明)

 北海道教育大学札幌教職員組合の書記長・大内です.

 北海道教育大学札幌教職員組合は,5月26日(金)午後5時20分より開かれた1999年度定期総会の名において,国立大学の独立行政法人化問題について以下のように決議し,学内はもとより広範な学外への声明としても採択しました.

-------------------------------------------------------------------------------

       国立大学の独立行政法人化に反対する決議および声明

 昨年9月20日、文部省が国立大学の独立行政法人化に受け入れを前提とした「検討の方向」を示して以来、各国立大学において白熱した論議がなされ、「検討の方向」にみられる「特例措置」や「配慮」と独立行政法人通則法との関係の矛盾からくる多くの問題点が明らかにされ、全国各地において教職員組合声明を始め、教授会声明(見解、意見)、有志教官声明、学会声明などで触れられてきた。
 その問題の根源は、言うまでもなく法案策定時に対象になかった大学に行財政改革の観点を目的とした独立行政法人制度を適用することにある。国が大学計画の根本となる中期目標を指示して大学には実施計画のみを認可する仕組みは教育研究の自由を奪うこと、学長を始めとする大学の人事・組織面での国の介入は教育研究の自由に不可欠な大学自治を脅かすこと、さらに運営面においては企業会計原則に基づく経営の効率化を求め、競争原理に基づく厳しい評価により統廃合を含む再編を進め、最終的に可能な限り国の財政削減に資すること、これらが独立行政法人制度の目的・性格から必然である。この制度が適用されれば、欧米先進国に比べても貧弱なわが国の大学の教育研究の基盤を直撃し、授業料の値上げを始めとする国民の高等教育費の負担増を強い、また地域によっては大学が消滅して地域の文化・経済・産業へ大きく影響することも予想され、わが国の高等教育の将来に大打撃をもたらすであろう。
 文部省の「検討の方向」においては、大学の特殊性から「特例措置」や「配慮」に触れているが、独立行政法人通則法の枠内のものであり、上記の問題を解決することにはなり得ないことが明らかになり、本組合では全大教の提起する署名活動を始めとする反対運動に取り組み、本学学長へは再三にわたり反対の立場を堅持するよう要望してきたところである。
 この期に及び、自民党政務調査会は同党高等教育研究グループの論議、同文教部会・文教制度調査会の結論(5月9日)を経て、5月11日に「提言 これからの国立大学の在り方について」と題する政策を発表した。この政策は文部省の「検討の方向」に比べ、むしろ独立行政法人制度の構造的仕組みを最大限活用しながら、学問の自由と大学の自治を否定する次の4点に要約される危険な内容を持っている。

 第1に、欧米先進国に比べ見劣りするわが国の高等教育、学術研究への公的投資の拡充と、「独立行政法人通則法を100%適用することは・・・不適切である」として「調整法」(特例法)の必要性に触れる一方で、独立行政法人制度を「目標・計画の設定や定期的な業績評価といった仕組みを通じて国の意志を法人運営に反映させうる法人制度」と位置づけ、「仕組みを活用することは適切な方法である」として「国策としての学術研究や高等教育の在り方を踏まえ、各大学の運営や組織編成に相当の関りを持つ必要がある」と、独立行政法人通則法を大学管理・統制の全般に及ぶ手段として活用することを明確にしていることである。
 第2に、国立大学の運営の見直しとして、学長人事、教授会の役割にこれまでにない不当な介入を提言していることである。学長人事では、これまで「慣行的に全学選挙によって選考が行われる結果、必ずしも適任者が選ばれない」として、このため「学外第三者や『タックス・ペイヤー』たるもの」を加えた新たな「推薦委員会」によるものと提言する。また、教授会、評議会、運営諮問会議の役割分担化を理由に教授会中心の大学運営を否定し、学長の強いリーダーシップを求めている。これらは教育研究の自由の根幹となる大学自治に反することである。

 第3に、「国際的な競争力を高め、世界最高水準の教育研究を実現する」こと、「研究重点大学、教育重点大学、教養型大学、実践的な職業人の養成大学」など「大学の個性化・多様化」を進めることを提言しているが、その方法は「大学の自主性を尊重する」と述べながら、その実は競争的原理に基づいて「大学運営をめぐる競争的環境」を整備し、各大学の運営・教育研究の業績を国の評価に基づいて予算の重点配分を進めながら「最終的には、国の責任において、積極的に再編統合を推進する」としている。これは教育の機会均等の一つを担ってきた国立大学の相当の縮減も狙うもので、それは学部の規模に関係する学問領域にも「学問の進展や社会的需要、さらには各地域における国立大学の役割なども考慮しつつ、適切に見直しを進める」として、波及することである。

 第4に、教員の身分に関し、上述の競争的環境の整備の一環として「任期制の積極的な導入」、「優秀と認められる教員にテニュア(任期の付かない在職権)を付与する」ことを提言しているが、教員の任期制については、大学における学問の自由は身分の安定によって裏付けられることから制定された教特法の精神に反すること、このため教員の任期制が導入されても実際には若手の教員・大学院生の失業問題から発生する人材確保から現実には進まなかった点を無視していることである。

 以上の問題点に流れるものは、国が大学における教育研究の自由、大学の自治を国の管理・統制により大幅に制限し、あるいは構造上自動的に制限されることであり、かつて戦前の国家統制のもとに置かれた大学の反省から生み出された憲法第23条(学問の自由)や文部省設置法第6条(文部省の権限を定め、大学等に対しては「指導と助言」に限定)に多々抵触する点があることは否めない。

 文部省はかかる自民党の提言を踏まえ、新たな国立大学の法人化の具体策をまとめ、国立大学長等会議、国大協に示して回答を求めると言われる。もし文部省の具体策が独立行政法人通則法の目的はもとより、この度の自民党の提言に沿うようなものであれば、われわれ大学人は直接高等教育を担う責任から断固反対し、問題点を国民の皆さんに訴えるとともに、国の将来を決定する重要な高等教育、大学改革はこれまでにも組合が進めてきた「国民のための大学づくり」の精神から、今後もより良い改革を目指すことを決意する。

 以上、決議する。

2000年5月26日
北海道教育大学札幌教職員組合 1999年度定期総会



目次に戻る

東職ホームページに戻る