独行法反対首都圏ネットワーク

辻下氏(北大)文部大臣へのお願い
(2000.5.20 [he-forum 906] 国立大学法人化と憲法第23条)

文部大臣・科学技術庁長官
中曽根 弘文 殿

 初めまして。国立大学教員の辻下と申します。

 文部省が、自民党の5月11日の提言に沿って国立大学を法人化することを決めたことが報じられました。この件につきお願いがあります。

 独立行政法人通則法を基に国立大学を法人化することは、学術研究の内容に国が直接関与し学問の自由を構造的に侵害するため、憲法第23条「学問の自由は、これを保障する」に明白に違反します。自民党の提言の内容も、その点では何も違いはありません。

 今世紀前半に、「国費で運営されている大学は国策に従うのは当然である」という思い違いに大学が屈服して批判力を失い、日本は底知れぬ過ちを冒すことになりました。数百万の人の命が失われた直後の痛恨と後悔の念の中から、同じような愚行に到る芽が育たないよう祈る思いで智慧を絞った中の一つが憲法第23条でした。「国費で運営されている大学は国策に従うのは当然である」という思い違いは浅慮な心には正論としか見えないため、絶えず再生し、ちょうど今のように瞬く間に絶大な力に膨張し、大学を国策大学に退化させてしまう危険性は決してなくならないことを、その人達は洞見したのです。

 あなたが今されようとしていることは、まさに戦争直後に憲法第23条を設けた人達の恐れていたことそのものなのです。そして、それを思いとどまらせるために祈るような思いで憲法第23条を設けたのです。

 どうか、日本の国立大学を国策大学に退化させ、日本衰退の芽を作ることのないよう力を注いでください。一国立大学教員として、また日本の一市民として、切にお願い致します。

辻下 徹



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