独行法反対首都圏ネットワーク

文部省高等教育局の佐々木正峰局長に聞く(5/18教育新聞)
(2000.5.20 [he-forum 904] 教育新聞05/18)

http://www.kyobun.co.jp/
『教育新聞』2000年5月18日号

国立大学の独立行政法人化問題
 文部省高等教育局の佐々木正峰局長に聞く

――まず、国立大学の独立行政法人化構想の経緯をお話ください。

局長=国立大学の独立行政法人化については、平成11年4月の閣議決定により、「大学の自主性を尊重しつつ大学改革の一環として検討し、平成15年度までに結論を得る」とされた。
 文部省では、昨年9月20日に全国の国立大学長らを集めた会議で、大学の自主性・自律性の尊重など、その特性に配慮した特例措置を講ずることなど、国立大学を独立行政法人にする場合に必要な条件を明らかにし、平成12年度のできるだけ早い時期に基本的な方向を示すこととした。
 4月末には、自民党の文教部会・文教制度調査会の提言が同党行政改革推進本部幹部会によって了承され、大学の特性を踏まえ、「通則法」との間で一定の調整を行うことの必要性が認められた。

 ――「調整法」という言葉が使われているが。

局長=「通則法」との調整をするための法律ということで、「調整法」という言葉が使用されているが、併せて「特例法」という表現もなされている。

 ――文部省は、平成12年度の早い時期に基本的な考えを示すとしているが、いつ頃になるのか。

局長=なるべく早い時点で、文部省としても、独立行政法人化するかどうかの考え方を関係者にお示ししたい。いずれにしても、議院内閣制のもとで、与党がどのような考え方をするのか、一定の基本的な方向性が明らかにならないままで、文部省の一存で走るわけにはいかない。関係者のご理解をいただいた上で、文部省としての対応を進めていきたい。

―― 独立行政法人化に対する文部省の基本的な考え方は。

局長=文部省はこれまで、国の発展を図り、社会を活性化していくためには、高等教育に積極的に公的資金を投入していくべきだとの考え方を終始一貫して取ってきた。そのための予算要求もしてきた。
 国立大学の独立行政法人化が単に行革のためというのでは困るが、その後の審議や最終報告、さらに閣議決定において、独立行政法人化問題は、大学改革の一環として検討するものであることが明確になった。
 であれば、大学の教育・研究の進展という観点から、独立行政法人制度の下で、大学の特性を踏まえた独立行政法人という形を考えることもできる。大学改革の流れの中に位置づけて検討することもできると考えていくようになった。

―― 仮に国立大学が独立行政法人になった場合、産学連携は活性化するだろうか。

局長=現在の大学の役割を考えたとき、社会と積極的に関わり、発展に寄与することは、大事なことである。その意味で、産学連携は、とても重要な要素だ。各大学においても、この問題に積極的に取り組んでほしい。
 独立行政法人制度というのは、国の機関から離れて、独立の法人格などを持つことなので、人事、会計、財務など、国の機関であるが故の制約から当然外れるものも出てくる。その意味で、各大学の教育・研究に対する取り組みなどは、より一層自由になる。それによって、産学連携もしやすくなるといえる。

――教育・研究の自由との関連、私学との違いは。

局長=大学改革は、臨教審の答申を受けたあと、大学審議会が設置され、数多くの形の答申などが出され、それを踏まえて改革が進められてきたが、改革のトーン、基調は、一口で言えば、大学の自由度を増すとともに、社会的存在としての大学の責任を明確にするということである。その意味で、自主性・自律性の増進と自己責任の確立が大事である。
 私学についても、より一層自由度を増すような方向で、設置認可などについても、改善を図っている。
 国立大学の場合は、あくまでも国の機関で、国が何らかの形で関わっていくのは当然のことであるが、私立大学の場合は、建学の精神の基づいて、国の制約から離れて自由な教育・研究ができることに、両者の基本的な差異がある。仮に国立大学が独立行政法人化されたとしても、法人化された国立大学と私立大学が国との関わりにおいて、全く同じであるとはいえない。
 例えば、独立法人化されれば、まず、国が中期目標を指示し、中期計画も国が認可することになっている。私学はそうしたことはなく、独自の対応ができる。
 また、教育研究活動の毎年の実績についても、独立行政法人であれば、文部科学省のもとに置かれる評価委員会が評価することになる。私学はそのような評価はない。このように、全く私学と同じ自由があるというわけではない。



目次に戻る

東職ホームページに戻る