独行法反対首都圏ネットワーク

5・12「四大学緊急集会」の参加記(東京外語大教職組)
(2000.5.17 [he-forum 896] 四大学緊急集会参加記)

 2000年5月12日に開催された「四大学緊急集会」の参加記が、東京外国語大学教職員組合執行委員より寄せられましたので、配信します。

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 教職員相互間の交流と情報共有の重要性を確認
―「独立行政法人化問題と
 いわゆる『五大学連合』についての四大学緊急集会」に参加して―


 5月12日、一橋大学を会場に、「五大学連合」問題に関する情報交換と検討を主眼とする集会が開かれた。これは東京医科歯科大学、東京外国語大学、東京工業大学、一橋大学の教職員組合が共同開催したもので、金曜の夜に急遽設定されたにも関わらず、四大学から40名以上が参加して午後6時30分から9時過ぎまで討論を行った。

 会議では、四大学の学内における「五大学連合」問題をめぐる状況報告および千葉大学小沢弘明氏による「独立行政法人化問題の現状と大学の種別化について」の報告があり、それらに基づく参加者の意見・情報交換が行われた。

 五大学連合構想なるものが、学長たちの懇談の席から浮上した昨年11月以来、半年が経過したが、この構想は独立行政法人化に対応した国立大学改革・再編成のパイロットケースとしてマスメディアにもしばしばとり上げられ、全国各地域の国立大学における合従連衡を誘発・促進する役割を果たしてきた。

 ところが、当該各大学では<未だ討議・検討の段階ではない>としてなんらの学内討議も行われておらず、教職員のほとんどはこの連合構想の具体像に関してマスメディア情報以上のことを知りえない状況にある。<UCLA型キャンパス><事務一元化><教養教育の一元化><一法人化><留学生教育一元化>等々のアイデアが語られたり打ち消されたりしているが、構想を担うのが「五大学」ならぬ四大学となるのか、それとも三大学となるのかを含め、その実態は全く曖昧なままである。各大学での断片的な情報や風説に振り回され、この問題に主体的に対応できないまま、大学相互間の誤解や不信感すら生まれかねない状態だといえよう。

 このような状況下で緊急に必要なのは、各大学での情報を持ち寄って繋ぎ合わせることにより、五大学連合構想をめぐる事態の認識を客観化し、共有することである。その第一歩として、今回の集会は企画された。

 五大学連合に関しては以下の「基本方針」が公表されている。

(1) 共同研究プロジェクトや学際的な領域での協力を、五大学の間で行うことにより、国際的な研究水準の維持・達成を目指す。
(2) 履修や進学に関して学生の選択の幅を拡げると共に、五大学の協力により、より良い教育が可能となり、優秀な学生をより多く確保できる。

 そしてこの基本方針を合意点として、東京芸術大学を除く四大学間の実務者会議が2月9日以来、月1〜2回のペースで、学長レベル、学生部長・副学長レベル、事務局長レベルの3分科会を設定しつつ重ねられてきている。

 この実務者会議の内容に関して、集会では以下の情報が明らかにされた。

(1) 大学間情報ネットワーク、dual degree、相互間の学生内地留学制度、共同講義などの論点が検討されている。
(2) 文部省職員から「カリフォルニア州の高等教育行政」に関するレクチャーを受けたが、その実施は無理という結論になった。
(3) 「一法人=五大学」案をマスコミにリークしたことを外大学長が陳謝した。
(4) 留学生教育の検討に際し、外大から留学生教育の外大への一元化が提案されたが否定された。

 各大学の報告を通じて鮮明になったのは、各学長による「連合」問題の提起のしかたに大きな相違があり、それに応じて学内での受け止め方にもかなりの温度差があることである。

 上述の基本方針の文面は、各大学がそれぞれ従来から実施・あるいは模索してきた他大学との連携・協力の発展を謳ったもので、組織的な一元化や再編には全く言及しておらず、その限り異論の出る筋合いのものではない。五大学連合を巡っては、この基本方針が額面どおりに受容されているだけのクールな大学と、それ以上の「夢」が語られ、それへの反動も大きいホットな大学との温度差が存在するようだ。敢えてならべるならば、熱い順に外大、一橋大、東工大、医科歯科大となろう。

(1) 最もホットなのが、この構想の仕掛け人が学長である東京外国語大学であろう。この問題に関する個人的行動・発言は控えるようにという教授会での申し入れにも関わらず、学長はマスメディアで様々なプランを打ち上げ、学内に逆輸入している。「一法人」案に関してもいち早く資料を学内配布している。学長のパフォーマンスに対する不信感や警戒感も強いが、大学サバイバルの切り札として連合構想に期待を寄せる教員の存在も無視できない。教員の危機意識や不遇感と微妙に共振する面もあるという。

(2) 一橋の学長は連合構想は大学の将来にとってプラスになりこそすれマイナスにならないと確信する立場から、積極的に検討する姿勢を示している。とはいえ、その内容は単位互換、共同授業、共同研究など補完・連携に限定しており、総合大学化や教養教育一元化などの方向性は否定している。もっとも「一法人」案に関しては、全面否定はしていないという。

(3) 東工大では従来から一橋大との共同への模索はされており、その意味で連携の推進という期待はある。構想はあくまでも連携というレベルで、特に反対する理由もないという程度に軽く受け止められており、学内の関心も低い。連合構想の浮上時に教養教育一元化に関して該当教員から懸念が表明されたが、学長はその可能性を否定した。「一法人」案に対しても学長は反対を表明している。学長は選挙時に独立行政法人反対を表明しており、現在もその姿勢を変えていない。

(4) 医科歯科大でも連合構想に対しては単位互換制度程度の受け止めがなされており、関心も低いという。学長は独法化反対の表明をしている。

 参加者からは、このような大学間の相違が、学長の独法化に対する姿勢とも対応していること、その意味で連合構想と独法化との連関にもっと注意すべきことが指摘された。

 小沢氏の報告は自民党文教部会・文教制度調査会の5・9提言を軸に、独法化をめぐる最新の動向を纏めたもので、大いに参考になった。詳細は割愛するが、特例法ないしは調整法による「国立大学法人」の方向性が強まったこと、政治状況の変化もあって公務員定数25%削減計画が実質的に消滅したことにより、法人化が定数削減の手段ではなくあくまでも大学改革の手段だという主張が正面化していることなどが指摘された。
 また、国の指揮・関与の下で大学の再編統合、選別と淘汰の進展も指摘し、五大学連合構想を新潟大や広島大を中心とした改組構想とならぶ「法人化を先取りした組織改変」として位置付けた。
 連合構想をこのような全国的な視野で捉え返すことが重要であることが再認識された次第である。

 集会の主催者側からは、冒頭、(1)連合構想が全国の国立大学関係者に疑心暗鬼を生じさせることにより、独法化受容の梃子となっていること、(2)大学の連合が重複部分のリストラを必然的に含むものであること、(3)構想の基本方針は誰もが否定しない連携のメリットを謳っているが、それを実現する具体的方策に関しては何も示されず、かえって従来の大学間の協力・信頼関係が崩されていること、
(4)学内では従来の公共的議論のルールを破壊する方式が強行されていること、への注意が提起された。

 さらに、閉会時にも、(1)従来にないトップダウン型の意思形成方式が強行されていること、(2)情報公開が必要であること、(3)大学の差別的再編成の先駆となる危険性のあること、が指摘され、

 今後の方針として(4)各大学教職員相互の連絡・情報交換体制を構築することが提案された。

 そして、これらの提起・提案は参加者によって確認された。

 大学間の連絡、情報交換そして討議の方法としては、このような会議を持ち回りで開催する、あるいはHPやEmailによる情報公開、意見交換の場を設置するなどの方法が考えられる。そのような、体制を至急つくりあげることの必要性を改めて強調しておきたい。



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