独行法反対首都圏ネットワーク

オピニオン 国公立大の独立行政法人化
公務員のまま?それとも非公務員? 教官の身分が焦点に(5/8朝日)
(2000.5.8 [he-forum 872] 朝日新聞05/08)

『朝日新聞』2000年5月8日付
オピニオン
国公立大の独立行政法人化
公務員のまま?それとも非公務員?
教官の身分が焦点に

国公立大学の独立行政法人化(独法化)をめざす動きが軌道に乗り始めている。大学に独立した法人格を与える基本方針に自民党の文教部会がゴーサインを出し、大学側からも、この方向で議論を進めることにさほど大きな反対の声は出ていないからだ。ただ、いまの静けさは、「教官の身分は公務員のままか非公務員か」という難題が先送りされているためにすぎない。教官の身分問題は「何のための改革なのか」という根本にかかわるだけに、政府・与党の調整が本格化すれば、いずれ難題の詰まった「パンドラの箱」が開くことは間違いない。 (「論座」編集部・曽我 豪)

教官の身分は、「独法化OK」の提言を三月末に出した自民党文教部会の高等教育研究グループ(麻生太郎座長)の論議でも、最大のテーマのはずだった。
国公立大の枠組みを維持するため、公務員身分の存続を求める町村信孝元文相ら文教族議員と、行政経費削減のために非公務員化を求める相沢英之元経企庁長官ら行革推進派議員との綱引きが、以前から続いていたからだ。
グループの議論は「文教族ペース」で進んだ。というのも、大学の独法化構想は橋本政権時代に財政構造改革路線の一環として打ち出されたものの、高等教育予算の削減などを恐れる文部省や国公立大の反発でたなざらしの状況が続いた。文教族議員が前向きにならない限り、構想は一歩も進まない構図だったからだ。
その文教族が、大学側を説得するカギが「教職員の身分は公務員型が望ましい」という文言だった。
「公務員」が保障されれば、法人の採算が悪化しても簡単に「リストラ」できないし、大学への国庫補助を確保する「基数」ともなりうる。同グループは当初、提言に「公務員型」の一文も盛り込もうとした。
だが、行革推進の立場からは、それは改革を損なう一文と映る。
行革推進派も大学側が望む学術研究費の充実には理解を示しているが、独法化で独立採算の原理を導入し、経費削減の方向にもっていくことが前提だ。公務員身分の保障が先行すると、改革逃れの「抜け道」になるとの懸念が消えない。
結局、グループがまとめた提言は、「高等教育・学術研究への公的投資の拡充」を盛り込みつつ、「護送船団方式からの脱脚」「競争的な環境の整備」も掲げるなど、両者の主張を併記する一方、対立が解けなかった教官の身分問題には触れなかった。
こうした中で、公務員身分の保障を今後の最大課題としてとらえる大学側の立場を明確にしたのが、月刊誌「論座」(朝日新聞社)六月号に掲載されたてい談に参加した有馬朗人・前文相(元東大学長)と青山善充・東大副学長、椎貝博美・山梨大学長だ。
青山氏は東大のこの問題の実務責任者で、椎貝氏は「独法化は大学の弱肉強食化を進めかねない」と懸念を表明してきた地方大のリーダーでもある。
両氏はともに、「高等教育予算の拡充」を条件に自民党グループの提言を評価したが、同時に教官の公務員身分が確保されるかどうかが提言で明確にされていない点に強い不満を示した。
自民党参議院議員として提言づくりに加わった有馬氏も、「文部省も私も初めから公務員型と決めている」と強調したが、一方で、独立行政法人となった大学の「公務員」が国の公務員削減計画の対象となるかどうかなど、「公務員型」の具体的な性格はまったく詰まっていないことも明らかにした。このため青山、椎貝両氏が、大学側が望む「公務員型」が実現するかどうか、疑問を投じる場面もあった。
自民党文教部会は二〇〇三年の独法化をめざして、五月中にも党行革本部の了解を取りつけ、関連法整備を進めたい考えだ=図参照。しかし、身分問題がこじれた場合、改革全体の見直しに発展する可能性も否定できない。
費用対効果というコスト論だけで割り切れない学術研究点高等教育の問題だけに、今後は何のための改革かという原点を忘れない論議が強く求められる。

国公立大の独立行政法人化
文教族 身分は公務員。高等教育予算は拡充せよ
行革族 身分は非公務員。市場原理を導入し行政経費を削れ

2000年3月 自民党文教部会が方針

2000年5月 自民党行革本部

文部省審議会で特例法案検討

2000年末まで 自民党が党議決定。与党協議を経て閣議決定

2001年から 通常国会で審議、成立へ

2003年 実現へ



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