独行法反対首都圏ネットワーク

東邦大学職組、国立大学の独立行政法人化に反対する声明
(2000.5.4 [he-forum 867] 東邦大学職組の声明)

 東邦大学(千葉県船橋市、東京都大田区などにキャンパス)教職員組合の声明です。

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国立大学の独立行政法人化に反対する声明

 国立大学の独立行政法人化(以下、「国立大の独法化」と略)について大学関係者や団体、マスコミ等の意見表明の動きが活発化しています。しかし、私立大学関係者の中には“「国立大の独法化」は国立大学の問題で私立大学には関係ない”と考えている人たちも少なくありません。私達、東邦大学教職員組合は3月10日、「国立大の独法化」の問題点を、私立大学との関わりにも注目して具体的に検証するための学習会を開催しました。学習会には組合の内外から多数の参加者がありました。学習会では「国立大の独法化」の背景、および「独法化」の基本を定めた独立行政法人通則法(以下、「通則法」と略)の特徴と問題点について議論しました。
 第一に、「通則法」のもとでの「独法化」とは、“行政的に定められた目標”に従って業務を行う国立の機関を独立させ、行政法人として半ば民営化することで、大学を想定したものでありません。
 この法律のもとで国立大学の独法化が実施されると、教育と研究の目標を定めることが大学から主務省である教育科学技術省(「中央省庁等改革基本法」施行後文部省が移行する省)に移されます。その結果大学は主務省が定めた目標に従って教育と研究を実施する機関にすぎないものになります。人事、財政についても、主務省の徹底した管理の下に置かれ、大学組織の改廃、教職員のリストラが主務省の意向一つで行われかねません。
 この法律のもとで独法化された大学は名前とは裏腹に“独立”したものではなく、行政の従属機関になってしまい、学問と教育の論理は通りにくくなります。そこでは次のような弊害が直ちに現れるでしょう。

(1)長期的視野に立った教育や研究を進めることが困難になる。
(2)各大学は主務省の評価を得るために競い合わされ、教育や研究上の自立性はきわめて危ういものになる。
(3)大学間や学問分野間の教育・研究条件の格差が一層拡がる。

 第二に、通則法によって「独法化された国立大」には、私立学校に適用されている「学校法人会計基準」よりさらに企業的な会計原則が適用されます。「国立大学」が収益事業化されかねません。この結果受益者負担が加速し、今でも異常に高い学生・父母の学費負担が一層重くなることが予想されます。私達は毎年取り組んでいる私大助成請願署名運動の中で、私大助成・奨学制度の抜本的拡充を求める父母の切実な声に接しています(東京私大教連発行、「私立大学新入生の家計負担調査」1985−1999参照)。また1998年6月の東邦大学教職員組合、東邦大学生協、東邦大学学生自治会の三者による『私学助成大幅増額を求める教職員、学生、父母の集会』において、私達は国際人権規約の示す高等教育の無償化の方向を見据えつつ私学への大幅助成を求める集会宣言を採択しました。私達はさらなる学費増を強いるであろう政策を許すことは出来ません。
 戦後、私立大学と国立大学は、様々な矛盾をはらみながらも、各々の違いを生かしつつ共存し高等教育を支える体制を築いてきました。独法化のもとで「国立大学」が収益事業化することになれば、両者は競合関係のみが強調され、高等教育の中に新たな混乱をもたらすでしょう。実際、本学の一部に「国立大の独法化」を前提にして競合関係だけを強調した大学サバイバル論が起こって来ています。同時に、一部私立大学経営者の“収益マインドとリストラ策”を加速することが危惧されます。
 第三に、「国立大の独法化」は、国の行政の減量化(公務員定員の25%削減)の単なる数合わせのために浮上したものであり、大学改革の論議から起こったものでありません。「国立大の独法化」の無理はここにあります。政府は、「国立大の独法化」の矛盾と反対する世論に対応するために大学に対して特例的な措置を講ずることを検討していますが、その内容は、「通則法」のもとで「独法化」することからくる本質的矛盾を解決するものではありません。
 また、政府が国民生活の諸分野で押し進めている規制緩和策は、大企業の市場利益を高める一方で、国民の雇用・営業環境を悪化させ国民生活からゆとりを喪失させています。こうした国民の状況に、一部マスコミ等による大学リストラ論が交錯し本来の大学改革の論議が浸透しにくくなっています。この様な中で国立大学はもとより、すべての大学が“国民のための高等教育”を発展させて行く大学改革の具体的方策を大学共同の運動として示すことが必要でしょう。私達はその立場から1999年3月の第30回定期大会において『大学の管理強化をはかる大学審答申の法制化に反対する声明』を採択し「大学自らが社会的使命への自覚にたって自主的民主的に改革に取り組むことが急務である」ことを確認しました。

 「国立大の独法化」は日本国憲法と教育基本法が示す「学問の自由」、「大学の自治」および「教育の機会均等」を否定するものです。高等教育に対するグローバル スタンダードは1998年に世界162カ国の参加のもとに採択されたユネスコの『21世紀に向けての高等教育世界宣言』に示されており、この宣言の基本的な柱は日本国憲法と教育基本法の原則につらなるものです。私達は以上の見地から「国立大の独法化」に強く反対することを声明します。

2000年
 3月10日 東邦大学教職員組合学習会参加者一同
 3月15日 東邦大学教職員組合執行委員会
 4月19日 東邦大学教職員組合合同職場会議



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