独行法反対首都圏ネットワーク

第三者評価機関(大学評価・学位授与機構)の設立とその準備
/阿部博之(東北大総長)
(2000.5.4 [he-forum 864] 『じゅあ』03/24)

he-forum 829 の関連文献です。

『じゅあ』第24号2000年3月24日発行、編集・発行 財団法人大学基準協会

第三者評価機関(大学評価・学位授与機構)の設立とその準備

阿部博之本協会理事、東北大学総長

平成12年(2000年)4月から、大学共同利用機関と同様の組織としての大学評価・学位授与機構が設置され、業務を開始することになった。いわゆる第三者評価機関である。大学審議会答申(平成10年10月26日)によれば、次のように述べられている。“大学は公共的機関であり、公財政の支援を受ける対象である。大学が社会的存在としてその活動状況等を社会に対して一層明らかにしていくためには、より透明性・客観性の高い第三者評価を推進し、広く社会に公表することが必要である。”あわせて“その主たる対象を国立大学とすることが必要である。”とも述べている。

わが国においては、このような第三者評価は初めての試みであることから、当然のことであるが、様々な不安が交錯し、そのこともあって種々の議論が展開されてきた。
国立大学協会(国大協)は大学評価に関する特別委員会を平成10年(1998年)3月に設置し、検討を開始した。第三者評価の必要性については、議論の結果、積極的に認めるべきであるとの意見が大勢を占めており、納税者である国民への説明責任からみて第三者評価は当然の義務と考えている。ただし様々な問題点が指摘された。

これとは別に、科研費による大学評価機関に関する研究会を、平成10年(1998年)9月に設置した。諸外国の事例について調査研究し、わが国における評価法の在り方等について、国立のみならず私立の大学をも視野に入れながら検討を行った。すでに昨年6月に、大学評価機関に関する研究(中間まとめ)(平
成10-11年度科学研究費補助金(基盤研究(B))課題番号10400012)を報告している。

特に学術研究の評価については、学術審議会においても大学等の機関評価の必要性や方法について基本的な考え方を審議した。検討結果は昨年6月29日付けの学術審議会答申にまとめられている。

さて大学評価・学位授与機構は、学位授与機構を改組拡充し、評価の事業をもあわせて実施する新機関として発足するものである。文部省から独立した機関としてピア・レビュー等による評価を行い、運営は大学関係者等が共同してあたるという性格を持っている。評価事業は次の三つの柱からなっている。
(1)大学評価事業、(2)大学評価に関する調査研究事業、(3)評価情報の収集・分析・提供事業。また評価の主たる対象は国立大学とし、公私立大学については、設置者の希望により評価の対象となる、とされている。

これに先立ち、大学評価機関(仮称)創設準備委員会を設置し、一年間にわたって、基本事項の審議を行った。

第三者評価機関の基本的な目的はまず、長期的な視点から大学(大学共同利用機関を含む)における教育研究の高度化・活性化をもたらすことにある。評価を、短期的な視点からみた非効率の切り捨ての道具とすれば、結局は日本の教育研究活動の水準を低下させることになる。同時に第三者評価機関には透明性が求められる。論理的な一貫性、厳格性が必要であることは事実であるが、それを過度に強調することになってはならない。また、より実効のあるものにするためには、初めから完全な制度を目指すのではなく、様々な試行を積み重ねつつ、進行していくシステムであることが望ましい。

第三者評価機関の基本は、大学と社会との間に生産的な緊張関係を作り出すことにある。そうした関係を基本としつつ、活発な活動を支える管理・運営組織を工夫しなければならない。評価結果についての異議の申し立て手続きなどを確立することも必要である。また、大学評価の様々な方法について実証的に分析する能力をもつことが重要である。

以上は、大学評価機関の創設にあたっての要望または留意事項の一端である。
実はほかに性格の異なる評価・認定が併存している。大学設置・学校法人審議会による設置審査、大学基準協会による加盟判定審査・相互評価、新設の日本技術者教育認定機構(JABEE)による審査・認定、学協会や学術審議会による学術研究にかかわる諸審査等である。これらとの交通整理、共存の検討も引き続く課題である。

いずれにしても、米国型でもない、英国型でもない、日本型の権威(権力ではない)ある評価機関をどうつくり上げていくか、が問われているのである。なお、仮に独立行政法人化した場合の第三者評価機関の在り方については、国大協においても、上記の創設準備委員会においても議論はなされていないことを付記しておく。



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