独行法反対首都圏ネットワーク

産業技術力強化法案今月成立へ(4/12読売新聞)
(2000.4.13 [he-forum 817] 読売新聞04/12)

『読売新聞』2000年4月12日付
産業技術力強化法案今月成立へ
産学協力 本格化
学の成果、産で拡大
委託研究、公募・複数年も

日本の産業競争力強化の一環として、政府が策定した「産業競争力強化法案」が、開会中の通常国会で4月中に成立する見通しとなり、産学協力強化への期待が高まっている。大学の研究成果を産業界が活用する道を広げるのが法案の目的で、特に、情報通信やバイオテクノロジー、環境など今後の日本経済のリード役と期待される分野で、大学が持つ高度な研究能力や人材を生かした技術革新が進むことを狙っている。法案が成立すれば、国立大の教授が自分の専門分野でベンチャー企業を設立することも可能となり、成果が注目される。(山崎貴史)

教授も社長

「大学の先生方と連携して新しい事業をつくり出したい」

江頭邦雄味の素社長は、技術力強化法案ができれば国公立大の教授が起業することが可能になるのをにらんで、新たな事業展開に意欲を見せている。

国公立大の教官は、公務員の兼業禁止の観点から、国家公務員法によって民間企業の役員を兼ねることが禁止されている。大学での研究内容も、これまでは実用化につながりにくい基礎的な分野が中心で、大学の研究成果が産業に十分に生かされていないのが実状だった。

技術力強化法の目玉は、国公立大の教官や国公立試験研究所の研究員が、研究成果を事業化する場合に限って、人事院の承認に基づいて民間企業の社長を含む役員を兼務できるようにする点だ。

企業から国公立大への委託研究の制度も大幅に見直される。企業側が研究開発テーマを示し、公募方式で委託先を選ぶ制度を導入する。従来は、企業が大学に研究委託する際は、個別に委託先を見つけるのが一般的だった。

また、企業と大学が複数年の委託研究契約を結ぶことも可能にする。これまでは、大学等への委託研究は単年度契約が原則だったため、大学側は1年ごとに収支を合わせた明細書を提出しなければならなかったが、数年分まとめて受け取った資金を、研究の進み具合に応じて弾力的に利用できるようにする。

米では活発

アメリカでは、公立大の教官が企業の役員を兼ねることが可能なため、情報通信やバイオ産業などを中心に「大学と企業の人材交流が活発で、これが現在の好況を支える要因ともなっている」(日本総合研究所の山田久主任研究員)。

通産省によると、産業界が大学に提供した研究資金は、日本は700億円で大学の研究費全体の2.3%(96年度)に過ぎないのに対し、アメリカは2924億円で5.8%(97年度)に上った。

日本企業が研究開発のパートナーとしてアメリカの大学を選ぶ場合も多い。経団連が98年5月に会員企業280社を対象に実施した調査によると、日本企業が日本の大学に委託している研究費は1社当たり3100万円だったのに対し、アメリカの大学に対しては4200万円に達していた。

しかし、新法が成立すれば、「日本でも大学に研究委託できる道が広がり、日本の大学へ研究委託が増える」(千葉正人経団連産業技術委員会政策部会長) と期待されている。

体質に課題

経済活性化への「起爆剤」(大手電機メーカー役員)としての期待がかかる産業技術力強化法だが、「大学の成果の企業への移転が順調に進むかどうかは未知数」(民間シンクタンク)との指摘もある。日本の大学では、「研究成果の実用化よりも、論文の出来が重視される体質が根強く残る」(同)ためだ。

今後は、大学と企業が十分な意志疎通を図るとともに、技術の移転や公開を積極的に行う大学側の姿勢がこれまで以上に求められることになる。

技術分野



日本優位

同等

米国優位
相当 少々 少々 相当
エネルギー
環境
電子デバイス
通信機器システム
ソフトウェア・システム
情報家電
バイオテクノロジー
医療技術
製造技術
新素材
電子・光学材料
交通・建築・インフラ
技術経営・技術人材など

(通産省が99年に実施した日本の経営者に対するアンケートより)



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