独行法反対首都圏ネットワーク

落語で独立行政法人化阻止訴える/金沢大学教職員組合
(2000.4.7 [he-forum 794] 落語「独立行政法人」)

青木健一@金沢大学です。(春休みの宿題処理中・・・)

 金沢大学教職員組合では、他の労働団体などと共同で、独立行政法人の問題点をわかりやすく伝える新作落語を制作依頼し、3月25日に金沢市中心部のホテルにて約百人の参加を得て、盛大に初演を行いました。以下にそれを伝える、一般新聞の記事2つと、金沢大学教職員組合ニュース852号の記事を転載します。
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北国新聞 平成12年3月26日(日曜日)

落語で独立行政法人化阻止訴える
  金沢大学教職員組合など

 金大教職員組合などでつくる「独立行政法人を笑って考える会」の「聞くまっし!『ギョーカク』落語〜国立の大学・病院が消えてしまう?〜」は二十五日、金沢市のシティモンドホテルで行われ、落語家の笑福亭松枝さんが新作落語で独立行政法人化阻止を訴えた。

 松枝さんは、会場の約百人を前に軽妙な語り「ストップ・ザ・独立行政法人」と題した落語を披露し、「病院はサービス業となり、患者は治さず、殺さずのお客さま。大学は授業料が跳ね上がり、研究費も削減、国民への影響は大きい」などと話した。引き続き、参加者との意見交換も行われた。
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北陸中日新聞 平成12年3月26日(日曜日)

[通風筒]
 国立病院、国立大学の独立行政法人化をテーマに、落語家の笑福亭松枝さんが二十五日、金沢市のホテルで創作落語を披露した=写真。

 主催は金沢大教職員組合など労働団体でつくる「独立行政法人化を笑って考える会」。同大理学部の青木健一助教授は「落語を通じて法人化の姿を明らかにし、笑いながら、真剣に考えてもらいたかった」。

 演目「ストップ・ザ・独立行政法人」は、法人化で廃止され、不動産業者に買収された国立病院が舞台。「三ヶ月以上の入院患者はしめ出されまっせ」などと荒れた病院の姿を予測。国立大学にも触れ「オゾン層の研究なんか『やめとけ、もうからん』となりまっせ」と警告した。
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組合ニュース852号

(独立行政法人化問題 連続教研集会第4弾)
聞くまっし!『ギョーカク』落語、開催される

 去る3月25日、金沢シティモンドホテルの1階ホールにおいて、「独立行政法人を笑って考える会」主催の落語会+シンポジウムが開催されました。この催し物は、もともと独立行政法人化問題に直面している大学と病院が協力して、一般市民にアピールできるような形のイベントを開催できないだろうか、と今年はじめから準備してきたものです。主催者は石川県医療労働組合連合会、石川県国家公務員労働組合共闘会議、石川県労働組合総連合、国家公務員労働組合共闘会議北陸地方協議会、全日本国立医療労働組合石川地区協議会、日本科学者会議石川支部、そして金沢大学教職員組合という7団体によって構成され、その意味では大変画期的な催し物であったと思われます。
主催者挨拶(本組合青木書記長)に続いて前半は、上方落語のベテランにして大実力者、笑福亭松枝師匠による新作落語「ストップ・ザ・独立行政法人」の高座でした。これは、主催者が大阪に活動基盤を持つ「労働運動、市民運動の落語応援団」である『笑工房』(小林康二代表)に新作の創作と公演を依頼したもので、この日がまさに「本邦初演」。小林氏による軽妙な紹介に続いての落語は、まさに「これぞプロ!」と大向こうを唸らせるような名演でした。ただ、「大学は笑いのネタにしにくい」とのことで、お話は国立病院から民営に転換した「ナショナル・ジ・オリエンタルランド病院」を舞台にした近未来ものとなっていたのは大学関係者としては少し残念でした。しかし、これは私達のアピールがまだまだ足りないことの証でもあったわけで、むしろ大学と市民の距離をもっと縮めていくための努力をせよ、という大きな宿題をもらった感がありました。それに、お話の中で最も印象的だったのは、民営化に伴う極端な人員削減で加重労働となり、ついには疲労困憊で倒れてしまう看護婦さんの姿であり、これは大学病院にも十分起きうる話である、と納得させられた次第です。病院関係の方で見逃された方は、組合事務所に当日のビデオがあるはずなので、是非ご覧になることをお勧めします。(筆者の個人的な趣味としては、今回のような涙を誘う人情モノよりも、あくまで「利益至上主義」に振り回される当事者達のドタバタを中心に据えた滑稽話の方が好きなのですが、そんなこととは関係なく、落語のデキとしてはかなり良い方たっだと思います。)
後半は、まず渦中にある病院と大学から、続いて既に行政改革の一環として民営化されたJRとNTTの現場からの報告でした。
 まず、保木井秀雄氏(全医労中央執行委員長)からは、2004年に独立行政法人への移行を控えている国立病院の統廃合論議の現状が報告されました。石川県下でも若松病院と医王病院の統合、山中病院と石川病院(加賀市)の統合議論が急速に進んでいるようですが、これによって、現在厚生省が緊急事態宣言を出している結核の治療に当たる国立病院は県内では七尾1箇所だけになるとのことで、国の政策の無責任さ、無軌道さを露呈する形になっているとの指摘が大変印象的でした。前半の落語とも関連することですが、医療の充実には十分な経費と人手が必要であることは今や世界中の医療に携わる人間の常識であり、日本政府の対応にはあきれかえるばかりです。
続いて末松大二郎氏(金沢大学理学部)は、パソコンとプロジェクタを駆使して、国立大学が独法化されることの危険性を大変わかりやすく解説されました。とくに、大学を果樹園にたとえ、早く実をつける果物だけが重視されるようになったら……という「お話」は、3年から5年の中期目標に基づいて予算配分や研究継続の可否が決定されることのいびつさ、教育や研究に「経済的効率性」を求めることの無定見さを大学関係者以外の方にも理解していただけるものではないかと思います。(会場に来られなかった方のために:桃栗三年柿八年とすると……?)
 藤野能章氏(国労石川県支部書記長)からは、山陽新幹線のトンネル崩落事故などに見られる最近の「鉄道安全神話」の崩壊について、地域ごとに機械的に分断され、しかも効率性重視が優先される現在のJRでは安全対策が十分に行われにくいとの指摘がありました。また公共交通の再生に向けては、さしあたって、第3セクターも含めて、国の事業として鉄道整備、経営基盤の安定ををはかっていくこと、分立経営の弊害を取り除くために全国ネットワーク体制の強化と維持をはかっていくこと、鉄道安全に関する各種委員会等を労使共同、地域密着型で設置・開催していくことなどが提起されました。
 最後に北川 進氏(通信産業労組石川県支部)からは、NTTがこの15年余りの間に従業員を半数以下に削減する一方で、それに反比例するかのように内部留保を高めてきた実態が明らかにされました。これは、民営化し、経済効率性十四路線に走った企業が辿る道を端的に表すもので、大変興味深いものでした。また大企業への接続料金などはどんどん値下げされる一方で、一般利用者に対するサービスや労働者の処遇は軽視、無視される傾向にあることも指摘され、将来、大学もそのように変貌していくのかと想像すると、首筋のあたりが寒くなる思いがしました。
 今回の催し物は、先にも述べたように、同じ問題に直面しながら、これまであまり実質的な相互協力を行う機会を持てずにいた各組合が、とりあえず同じテーブルにつき、お互いの認識を高めたという意味では、大変意義深いものであったと思われます。また、終了後は主催者構成団体の各責任者や富山大学の組合および富山県国公からの参加者に笑工房の小林氏を交えた交流の席が設けられ、今後も連絡を密にしていくことが確認されたことも、付記しておく必要があるでしょう。
 しかし他方で、同じような問題意識を持つ人に対してでさえ、大学がおかれている現状や独法化問題の深刻さを理解してもらうことが容易でないことを痛感させられるというほろ苦い側面があったことは否定できません。また、執行委員松浦氏(教育学部)の労作であるポスターの市内各所への配布や香林坊109前でのビラ撒き、マスコミ各社への売り込みなど、それなりに宣伝活動に工夫を凝らしたものの、入場者は主催者側の期待をやや下回ってしまったことは、今後のアピールの仕方を考えていく上で大きな反省材料となりました。
 独法化問題にかんしては、自民党内部から新たな国立大学法人化案が出されるなど、事態はますます混沌とする一方で、風雲急を告げつつあるようです。組合としての今後の取り組み方に関して、ぜひ皆さんのご意見をお寄せ下さるようお願いいたします。
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(以上)



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