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山梨大、山梨医大の統合決定 来月、合同で協議会設置
(2000.4.6 [he-forum 786] 山梨日日新聞04/06)
『山梨日日新聞』2000年4月6日付
山梨大、山梨医大の統合決定
全国初 2002年めざす
来月、合同で協議会設置
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山梨大(椎貝博美学長)は五日、各学部教授会と評議会を開き、山梨医科大(吉田洋二学長)との統合を推進することを決めた。山梨医科大は既に統合推進を決定しているため、国立大同士では全国初となる両大学の統合が事実上決まった。合同の協議会を設置して本格的な準備に入る予定で、早ければ二○○二年四月の統合実現を目指す。共同会見した椎貝、吉田両学長は「統合に向けた障害は基本的にない」と明言した。大学に効率的な運営を求めるため文部省が検討中の法人化と、少子化の進行で大学間の競争が激化するとみられる中で、両大学の決定は全国の国立大に大きな影響を与えそうだ。
五日は山梨大の教育人間科学、工学両学部の臨時教授会が開かれ、両教授会とも山梨医科大との統合推進を了承。これを受けて最高決定機関である評議会が開かれ、大学として山梨医科大との統合を進めることを決めた。
山梨医科大で行われた記者会見には、椎貝、吉田両学長が出席。「細かい問題はあるが、時間をかけても統合を実現したい」「基本的な障害はない。あったとしても統合に向けて進んでいかなければならない」と意欲を見せた。
統合推進の理由とメリットについて、椎貝学長は山梨医科大の開設に山梨大が深く関与した経緯を挙げながら「工学技術の開発をはじめ、医の倫理や医療教育など新しい研究が可能になる。学生にとっても交流の幅が広がる」と説明。吉田学長は「環境問題や高齢者福祉など、新しい視野での研究領域が立ち上げられる」とした。両大学は既に、学部を母体に持たない独立研究科(大学院に相当)の共同設置を打ち出している。
統合時期については、椎貝学長が「二○○二年四月の実現を目指したい」と明言し、吉田学長もこれに同意。今後の課題として、教員の研究環境の整備や教員組織の再編成などを挙げた。
今後は両大学内に準備を進める検討委員会を発足させ、五月中に合同協議会を設置して大学名や学長選出、大学院の在り方、教員配置などを協議していく。統合には国立学校設置法改正などの法整備も必要になるため、文部省とも協議を進める。両大学は昨年一月、統合に向けた協議をそれぞれ始めることを学長レベルで合意。山梨医科大は今年三月二十二日の教授会で統合推進を決定していた。
統合が実現すれば、国立大同士では一九四九年に新制大学が発足して以来、初めてのことになる。全国に九十九ある国立大の中で、ほかにも香川大と香川医科大が統合に向けた検討を進めている。
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山梨大・山梨医大統合 研究領域拡大に期待
「組織再編」懸念の声も
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国立大同士では全国初という大学統合が事実上決まった五日、山梨大と山梨医科大の教授陣や学生の間にはさまざまな反応が広がった。教授陣には「新しい大学像をつくり出す一歩になる」「研究の幅が広がる」などと歓迎の声が大勢を占める一方で、「教員配置はどうなるのか」と不安を漏らしたり、「統合の細かい内容は時間をかけて検討してほしい」と慎重な議論を促す意見も。学生たちも多くは「学習の機会が増える」と好意的に受け止めていたが、「今の学習環境がどのように変化するのだろう」と、先例のない事態に戸惑う声も聞かれた。
山梨大の伊藤洋工学部長は、統合によって新しい研究、教育領域が生まれるなどとメリットを説明して「新しい時代に整合するような協議を両大学間で進めていく」と強調。黒沢幸昭教育人間科学部長も統合で大学の基盤強化が図れるとしながら、「教授会では、一般教育の面で教育人間科学部の負担が増えるのではないかなどと心配な意見も出た」と明かした。
山梨医科大のある教授は「学術研究の幅が広がるなどの利点は計り知れない」と推進の立場。山梨大教育人間科学部のある教授は統合には賛成の態度を示しながらも「今後の議論は時間をかけるべきだ。教員組織の再編成はどうなるのかなどを明確にしてほしい」と望む。
学生の間では「医療の専門領域が学べるようになるならば、工学系のメリットは大きい」(山梨大大学院生)と好意的な見方が強い。山梨医科大医学部の一年の女子学生は「単科大では幅広い教養を身に付けることが難しいが、統合によってそれが可能になる」と歓迎。同大の大学院生は「学ぶ場が広がるのはいいこと。教育学部や工学部など異なる将来目的を持った学生たちとも交流できる」と受け
止めている。
中には「講義で向こうの大学に行かなければならない場合があれば、交通アクセスが不便なので大変だ」(山梨医科大の一年女子)と両大学が離れて立地している点に懸念を感じている学生も。また「統合の必然性がよく分からない。教育系にメリットがあるのかも疑問だ。要は大学の生き残りのため、私たちには直接大きな利点はないと思う」(山梨大教育人間科学部の四年女子)と厳しい声もあった。