独行法反対首都圏ネットワーク

対照的な二つの論説
(2000.4.2 [he-forum 775] 最近の論説から)

 以下のような対照的な論説が出されています。

『中央公論』2000年3月号
「大学競争・選別の時代」

石 弘光(一橋大学学長)

大学は競争原理に馴染まないとして、文部省の護送船団行政にどっぷり浸かってきた全国99の国立大学も、国の財政危機が引き金で独立行政法人化は避けられなくなり、市場に淘汰される日を迎えようとしている。18歳人口の激減や「大学は出たけれど」という雇用状況の悪化から、戦後一貫して続いてきた大学の売り手市場は消滅し、大学は学生に選別される側に回るだろう。さほど遠くない大学淘汰の時代に備え、大学は研究至上主義から良質の教育サービスへの意識変革、学生による授業評価制度の導入、第三者による大学の客観的な評価を迫られよう。

『潮』2000年3月号
「『独立法人化』で問われる21世紀の文化政策」

石毛 直道(国立民族学博物館長)

国立大学や基礎研究にしたがう研究機関、文化施設などを、「効率化」を錦の御旗として、安易に独立法人化することは、21世紀の日本にとって国家的損失を招く可能性がある。国家戦略として文化大国をめざすフランスの文化関係予算が、国家予算の約1%に対し、日本は0.1%に過ぎない。先進諸国は軍事大国から経済大国、次いで文化大国と「心の豊かさ」を求め出している。文化は長い時間をかけて人びとの心の中に価値をつくりあげてゆくものなので、短期的にはペイしない。独創的な科学技術も「すぐには物の役にたたない」基礎的な科学研究の成果のうえに培われるものだ。だからこそ、国家が文化の最大のパトロンにならねばならない。



目次に戻る

東職ホームページに戻る