比較検討WGの検討結果について

 本WGは独立行政法人通則法と文部省の「検討の方向」 (9月20日)とを素材としつつ、主として後者について問題点を指摘する作業を中心に活動を行った。そして、この結果を対照表にまとめるとともに、重要な点について追加的な文書を添付することにした。
 以下、個々の論点とは別に、今後の学内での議論に際して留意すべき幾つかの点について概括的なコメントを行うことにしたい。

 1 「検討の方向」は大学の自主性、自律性に配慮しようという意図を示しつつも、それ故に、独立行政法人という枠組みそのもの、及びそれに従って構築された通則法の枠組みとの間で深刻な矛盾を惹起するに至っている。もし、独立行政法人に大学が移行した場合、大学評価や人事、組織の面でのこの「制度の二重状態」によって将来、大学がアイデンティティ・クライシスに陥る可能性が極めて高いこと、従って、説明責任を果たすのが極めて困難になることを示唆している。

 2 「検討の方向」においては財政の仕組みに関わる項目は内容が不明瞭か、ベンディング状態のものが多く、今のところ検討自体がほとんど困難であり、従って、独立行政法人下の大学の具体的なイメージを描くことは著しく困難であった。大学の自由度が高まるように言われつつも、実際にどのような姿になるかについて結論的なことをいうことはほとんど不可能である。これは組織の性格の曖昧さと深く結びついている可能性があり、なお検討を要する課題が残ったことを認めなければならない。

 3 評価については手続き上の問題に止まらず、その内容や人的資源の面で果たして有効なものが可能かどうか、その実現可能性について慎重な検討が求められる。また、同様のことは、大学の役員についても言いうるのであって、法的な枠組みと人的な現実との乖離を念頭においた実現可能なデザインを別に考えておく必要がある。

 4 公務員型・非公務員型という身分の問題について検討を行い、その法的効果の違い点についてはある程度明らかになった。しかし、どの程度大きな違いが発生するかについては十分に明らかになったとは言い難い。現在までの検討の結果、双方で極めて劇的な違いが出るという見解は少数である。

 5 「検討の方向」は制度の骨組みしか示しておらず、しかも、法人の長を初めとする役員のあり方に専ら焦点が当られ、研究教育の現場との関係が極めて希薄な議論しか出てこない。そのため、一般の教官が議論を深めることが困難である。これを深めるためには、大学内部における法人の長と部局との関係といったものをこれとは別に検討を行う必要がある。

 6 制度的な暖昧さに加え、大学の将来展望といったもの抜きの制度の構想であるため、独立行政法人問題は研究教育面での大学のあり方そのものについての議論とはほとんど結びつかないことになる。財政の問題を含め、大学の将来展望を視野に入れた形での議論が可能になるような環境を作ることが必要である。


東職コメント

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