独行法反対首都圏ネットワーク

国立大学の存在意義/産経新聞3/26
(2000.3.30 [he-forum 762] Sankei Shinbun 03/26)

『産経新聞』2000年3月26日付

■斜断機
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【国立大学の存在意義】

 九日付朝日新聞に「国立大学の嘆きと苦悩」と題した意見広告が掲載されました。広告主は「国立大学の独立行政法人化に反対する大学人有志」です。よく見ると、「この意見広告について御意見等をお寄せ下さるようお願いします」とあり、失礼を顧みず、少々愚見を申し上げたく存じます。
 意見広告は「効率化と市場原理を柱とする『改革』の波」を批判し、「多くの欧米諸国では、利益追求にかたよらず、受益者負担を押しつけることなく、公費で教育研究活動を支えているのです。ところが、この日本では、高等教育と学術研究に対する公的な支出の割合が低迷を続けています」と言います。

 しかし、欧米の「教育研究活動を支えている」のは「公費」ではなく、篤志家の寄付金ではないでしょうか。「公費で教育研究活動を支えている」のは「欧米諸国」ではなく、自由とデモクラシーの恩恵に浴さない独裁国や開発途上国でしょう。問題は「公的な支出の割合」ではなく、篤志家の出現を阻むいびつな税制ではないでしょうか。

 意見広告は続けてこう言います。「私たち大学教職員は、今という時代の難関に立ち向かう専門家集団です。すぐには答えの出ない問題を、じっくり研究する。安い学費で、すぐれた教育をおこなう。教育研究の成果を広く人類社会に提供する−−国立大学の存在意義はここにある、と考えます」

 言葉尻を捕らえるようで恐縮ですが、「すぐには答えの出ない問題を、じっくり研究」している人々が「今という時代の難関」を解決できるはずがありません。「教育研究の成果を広く人類社会に提供する」前に、我々日本国民に提供するのが国立大学の使命でしょう。いや、学問研究に国境はないというなら、そもそも「国立大学」に「存在意義」などありません。日本は文部行政が高等教育を支配する唯一の先進国なのです。当事者の方々にはお気の毒ですが、やはり、国立大学にも「改革」は必要ではないでしょうか。

 社会基盤研究所客員研究員 潮匡人



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