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大学の設置形態と管理・財務に関する国際比較研究―第一次中間まとめ―(1)
(2000.3.29 [he-forum 756] 国立学校財務センター資料(1))
長文ですので、「はしがき」、「目次」、「I 概説」のみを、2回に分けて投稿します。なお、he-forum 636もご覧下さい。
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大学の設置形態と管理・財務に関する国際比較研究―第一次中間まとめ―
平成12年1月
国立学校財務センター
はしがき
国立学校財務センターは、国立大学の設置形態の検討に資するため、平成11年7月以来、「大学の設置形態と財務システムに関する調査研究」を実施してきた。
研究は、なお基礎作業の段階であるが、国立大学の独立行政法人化問題の検討が急速に進展しつつあることに鑑み、とりあえず、「大学の設置形態と管理・財務に関する国際比較」についての、これまでの調査研究の成果を中間的にとりまとめ、参考に供するものである。
研究開始後比較的短期間で一応の中間とりまとめができたのは、研究にご参加いただいた研究者、専門家の皆様のご協力の賜物であり、深く感謝申し上げたい。
平成12年1月18日
国立学校財務センター所長 大崎 仁
目次
I 概説........................1
II 各国の状況
1 アメリカ..................7
2 イギリス.................26
3 ドイツ...................44
4 フランス.................60
III 研究組織(名簿).............77
I 概説
大学設置形態と管理・財務について、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの四カ国を対象に調査研究を進めた。以下は、その成果の概要を独立行政法人化問題の検討に資することを念頭にとりまとめたものである。
1. 大学の設置形態
欧米各国とも、大学の設立、運営は、基本的に国家(州)の責任である。国(州)立大学が法人格を持っているため、民営と誤解する向きがあるが、イギリスのほかは、国公立機関であることは関係法律に明示されている。
私立大学はイギリス、フランス、ドイツではきわめて例外的存在であり、アメリカにおいてもその比重は減少している。
1)大学の国公立機関性
アメリカの一部の州立大学を除き、国(州)立大学はすべて法人格を有するが、 これは、大学の自治的運営を保障強化するための措置であり、国公立機関であることは、関係法律に明示されている。ただし、イギリスの大学については、歴史的経緯から独立性が強くかつ制度が複雑なため国立機関とまでは言い難いが、その国家的性格は明らかである。
2)連邦国家の特殊性
アメリカでは憲法修正第10条「この憲法により、合衆国に委譲されない権限・・・は、州または人民が保有する」の規定により、大学については州の権限であり、連邦は直接的権限を持たない。従って、州立大学が中心となる。
他方、ドイツの大学は邦立であるが、基本法第30条「国家の権能の行使及び国家の任務の遂行は、基本法が別段の定めをなさず、または許さない限り、邦(Land)の仕事である」の規定により、邦は、国家の任務の遂行として、大学の設置運営を行っており、邦立大学は、法律上国家機関として位置づけられている。また、連邦も基本法が認める一定の権限を行使できる。
3)私立大学
アメリカは、歴史的には私立大学が中心であったが、第二次世界大戦後、州立大学の発展がめざましく、1995年現在で私立大学は、学校数では、なお、55%(4年制73%、2年制28%)を占めているが、学生数では、22%(4年制30%、2年制4%)を占めるに過ぎない。
ヨーロッパ諸国では、私立大学はきわめて例外的な存在でありフランスでは、学位授与権のある私学はない。イギリスでは、バッキンガム大学1校のみである。ドイツでは少数の教会立等の大学はあるが、学生数の2%を占めるに過ぎない。
2. 大学の法的地位
各国とも、大学(私立大学を除く)の設立と法人格の付与は、大学の特性に即して、大学に関する基本的法律または州憲法で定められており、「独立行政法人」のような法人類型を大学に適用している例はない。
アメリカ、イギリスでは、理事会等の管理機関に法人格が付与され、フランス、ドイツでは、大学に法人格が付与されている。
1)法的地位の根拠
アメリカの一部州立大学を除き、大学はすべて法人である。
アメリカでは、州立大学については、州憲法または州法により大学が設立され、その管理を行う理事会に法人格が与えられる。一つの理事会が複数の大学を管理する場合が少なくない。
州憲法による大学と法人の設立は、州議会、州政府に対する大学の独立性を強化するための措置である。
私立大学は、私法人として認可される。
ドイツ、フランス、イギリスでは、次に示すように、高等教育に関する基本的法律で大学の法人格を定めている。
(1)ドイツ 「高等教育機関は、通常、公法上の法人であり、同時に国の機関である。高等教育機関は、他の法的形態においても設置することができる。高等教育機関は、法律の範囲内で自治権を有する。」(高等教育大綱法第58条)
(2)フランス 「高等教育及び研究を行う国家機関は、学術的・文化的・専門的性格を有する公施設であり、法人格並びに教育・学術面及び行財政面における自治権を亨受する。」(1984年高等教育法第20条)
(3)イギリス 1992年にポリテクニク(専門学校)等から昇格した新大学(1992年継続教育・高等教育法第76, 77条)は、1988年教育改革法による「高等教育法人」の地位を継続している(同法71条)。ただし、それ以前に設立された大学は、国王の勅許状による勅許法人である。
2)法人の性格と代表機関
アメリカ、イギリスでは大学の管理機関に法人格が付与される。従って、法人の代表機関は法人格を付与された理事会等の管理機関であり、学長は管理機関の主要メンバーである。
ドイツ、フランスでは、大学自体が法人である。従って、法人の代表機関は学長(総長)である。ドイツの場合には、学長(総長)、副学長(副総長)、事務総長で構成する学長(総長)部が代表機関となる場合がある。