独行法反対首都圏ネットワーク

論 説 大学間の連携に期待(3/24岩手日報)
(2000.3.26 [he-forum 744] Iwate Nippo 03/24)

『岩手日報』2000年3月24日付社説

論 説
2000.03.24
大学間の連携に期待

 21世紀は「知の時代」といわれる。20世紀末の今、各分野に求められるのは、新たな世紀に向き合う態勢やシステムづくりである。大学も例外ではない。

 大学の改革が言われて久しい。大学審議会の答申によって大学設置基準が大綱化・自由化の方向へ改定されるなど、前進はみられる。しかし今もなお、日本の大学は閉鎖的で、機能が硬直したまま、社会的要請に必ずしもこたえていないという指摘もある。社会的要請が何を意味するかは意見が分かれるとしても、的を射ている指摘と言っていい。

 従来の大学設置基準の下で細かい規定に縛られていたときより確かに弾力化されてきている。だが、大衆化し、学生個々も一層多様になっている中では、もっと制約を取り払い、各大学の自発性や自由度を十分に発揮、それぞれが考えるところを実現できる条件づくりを整備することが望まれよう。

 こうした環境下にあって、これからの高等教育は、質の確保が大きな課題だ。このことは、岩手という地域全体の高等教育の在りようにも言えることだ。これまで以上に本県高等教育の面で特色を出す努力をする必要があろう。

単位互換の充実望む

 県内5大学の学長が「国公立や私立の枠を超えて高等教育充実のために連携が必要」との考えで一致、「いわて5大学学長会議」を設置した。
 呼びかけ人で幹事大学の海妻矩彦岩手大学長は先の初会合で「岩手の教育発展のため有益な取り組みをしよう」と強調したが、岩手の高等教育は5大学の連携によって改善・改革へ大きなステップを踏み出すことになる。

 参加は岩手大、県立大、岩手医大、富士大、盛岡大の5大学である。お互いに刺激し合って、教育研究を発展させていくことも期待できる。

 具体策の一つとして単位互換の導入がある。これは学生が、他の4大学の科目を受講し、そこで取得した単位は在籍大学の卒業要件の単位として認めるという制度である。規制緩和のもと大学の裁量を広げ、自主性を尊重するといっても各大学が単独で科目を拡充するのには限界があるのが現実である。

 所属大学にはない科目を選択できることは、人材養成の機能分担の意味からも歓迎できる。単位互換について初会合では、まず協議をスタートさせることを確認したが、各大学は研究教育を画一化、硬直化させず、多様な時代の要請にこたえるためにも、導入へ前向きな対処を望んでおきたい。

質的整備の努力必要

 5大学学長会議では、単位互換制のほか▽共同研究の展開▽図書館の共同利用▽共通して活用できるデータベースの構築▽共同ホームページの作製▽学生・留学生の交流−などが提案されている。

 共通に利用できるものは活用して、独自性の必要な分野については、各大学が創意工夫を凝らしていく。それらをさらに連携のネットワークに組み入れていく。これが実現できれば、極めて望ましい連携の在るべき方向であり、姿といえよう。

 今後の高等教育の基本的な在り方で最も重要なのは質的な整備の方向であろう。その質的充実については入学者選抜方法の改善や単位互換をはじめ研究指導委託などなど各大学間交流の推進、多様な履修コースの設定、外国人教員の任用や留学生の受け入れ態勢整備による国際化の進展、産学官の連携−などが強調されている。

 これらの方策を具体化、充実していくためには各大学の管理運営システムの改革が前提となる。学生たちが岩手県内の大学で学びたい、入学してよかったと実感できる5大学連携のエネルギーをどう引き出していくか、各学長の手腕と力量が問われる。期待したい。(中原祥皓)



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