独行法反対首都圏ネットワーク

文部省高等教育局大学課教育大学室石井稔室長挨拶
(2000.3.24 [he-forum 736] 文部省石井室長の見解)

 http://gauge.u-gakugei.ac.jp/cerd/cerd99/preface.htm

平成11年度国立大学教育実践研究関連センター協議会年報
平成12年2月
国立大学教育実践研究関連センター協議会

文部省高等教育局大学課教育大学室石井稔室長挨拶

 現在、教員養成大学は難問山積です。学部の有り方や附属学校の在り方を含め、解決していかなくてはならない問題がたくさんあります。その中で教育実践研究関連センターの果たす役割は非常に大きいと考えています。

 私は、この「教育実践」という言葉が正直に言うと分かったような分からないような感じでおり、例えば教育学部の課題として「理論と実践の統合」というようなキーワードがよく使われますけれども、具体的にそれは何だろうかと考えてみますと必ずしもちょっとピンと来ない…ピンと来ないというのは実践という言葉が悪いという意味ではなく、本当に教育学部の全ての先生方がそういう気持ちで取り組んでおられるのかなという疑問があるということです。

 それはそれと致しまして、現在の教員養成学部の課題等を含めて、少しお話をさせて頂きたいと思います。1つ目は、卒業生の教員就職率の低下の状況です。平成11年3月卒業者の教員就職率は32%まで落ち込みました。その前年が34.8%、その前年が40.8%ということですからかなりの勢いで落ち込んできております。すなわち、教員養成課程の3人に1人ぐらいしか教員になれていません。これは期限付きの臨時的な任用を含めての数字です。公立学校の先生方の年齢構成は分かっておりますので、しばらくこの冬の時代は続くのではなかろうかと考えています。

 2つ目は教員養成課程の五千人削減計画の進捗状況です。平成10年度から3年間で4745人の削減を行いました。平成12年度、今年4月の教員養成課程の入学定員は9770人で約1万人体制ということでございます。昭和61・62年度当時の入学定員から見ると約半分です。

 次に、3つ目と致しましては、平成12年度の概算要求の概要に若干触れておきたいと思います。このセンター協議会に最も関係の深い、教育実践総合センターへの改組が9大学で行われました。これで、いわゆる実践総合センターに改組致しましたのが48大学中28大学ということになります。大学から概算要求の説明を受けたときに2つの条件を私自身はつけています。その1つはセンターの先生だけがいじめや不登校の相談に応じるというのでは困る。百人が百人全部それに対応しろとは言いませんが、例えば教育心理学のように学部の講座にそういう専門の先生方がおられるでしょうから、いわば学部を挙げて、地元で困っている子供たちや父兄のために協力していこうという体制がとれているかどうか。もう1つは、大学の中で座して待っていて来る者は拒まずという程度では困ります。それでなくても、子供や父兄は大学の正門を入るのには躊躇してしまう、そうならないように、大学の内部で座して待っているというのではなく、外に出て相談に応じる、そのような体制がちゃんととれているかということを
確認して、そういうことができるところからいろいろな総合的な判断を致しましてセンター改組の採択をしているところです。

 一方、実践総合センターへの改組は平成8年度から行ってきている訳ですが、それを行ってどんな効果があがったのかということの説明が求められています。このセンターを置いた県のいじめや不登校が少なくなったというデータが出てくれば、それはこれに勝る説明はない訳ですが、それは難しいとしても、何か目に見える形での効果というものが説明できないかなと考えております。場合によっては先生方の方にもそういう宿題を投げかけるかもわかりませんので、そのときはよろしくお願いしたいと思います。

 次に、学校教育臨床専攻という、いわゆるスクールカウンセラー、臨床心理士の養成を目的とする、夜間の大学院を横浜国立大学・愛知教育大学の2大学に設置をする予定です。平成11年度は千葉大学と岡山大学に設置を致しました。これは、夜間ですから学校現場の、いわゆる荒れた学校にどのように対応していくかということを、現実にそこで教育に携わっている先生を受け入れて教育をしていきたい。つまり、現役学生の卒業まで待っていられない、今そこで困っている先生方に対応して頂きたいということから敢えて夜間という道を選んだ訳です。

 次に、教員養成カリキュラム開発研究センターを全国共同利用施設として東京学芸大学に平成12年の4月から設置する予定です。これは学校現場でいじめ・不登校に限らず総合学習をどのように展開していくか、あるいは理科離れ・活字離れにどう対応するかとかいろいろな問題が指摘されていますが、そういうことに対応できる教員をどのように養成していくかという教員養成のカリキュラムを開発していこうということです。これは当然、各大学につくるというものではありません。全国共同利用ということですから、本協議会の先生方にも、当然、利用する権利がありますので、ぜひご利用頂きたいと思っております。

 次に、「中等教育学校」を国立大学で3校設置致します。東大と奈良女子大学に現在の中学校・高等学校を改組して中等教育学校を、名古屋大学に中学校・高等学校を改組しまして併設型の中高一貫校を設置していくということです。中等教育学校の目的はゆとりのある中で子供たちの個性を伸ばしていくかということですけれども、これは言うは易くなかなか難しいということがあります。全国のモデルとなるようなカリキュラムを国立学校で開発していこうという意気込みで取り組んでいるところです。

 4つ目に予算とは関係ありませんけれども、独立行政法人化の現状を若干説明しておきたいと思います。独法化の話が出てきましたのは、もともとは国の行政機関のリストラというところから出てきた訳です。当初、文部省と致しましては反対しておりましたが、去年の9月くらいから若干方向転換をした訳です。これは1つは独立採算制ではないということが分かったということ、すなわち、国からそれなりの金が出ていくということが分かったということと、もう一つは、独法化反対反対と言っていても最終的には政府の関係機関が決める訳ですから、座して判決を待つというやり方ではなくて、国全体として避けては通れない議論であるのであれば、大学の自主性・自律性をどう確保していくか、あるいは教育研究の活性化をどう図っていくのかという目的の中で制度設計をしていって、それを政府の関係機関に堂々とぶつけていった方がいいのではないかということから、独法化の検討を始めた訳です。12年度の出来るだけ早い時期といいますから、今年の4月か5月かそれぐらいに結論を出しまして、細か
い制度設計はそれから若干時間をかけて検討していこうというのが基本的な考え方です。新聞等で賛否両論あることは事実ですし、大学の内部でも賛否両論あろうかと思いますけれども、いわゆるマスコミ等の論調は国立大学も今のままではいかんのではないかというのは大体共通した意見ではなかろうかと思っています。

 他方、独法化した時に教育養成学部固有の問題もあります。例えば、今回、文部省が教員養成課程5000人削減計画をたてましたが、独法化された場合、大学独自の判断で増やしたり減らしたりすることが可能なのかという問題があります。それからもう1つ附属学校を例にとりますと、今まで私どもは附属学校というのはエリート校にしてはならない、教育実習あるいは学部の研究に協力するという目的でつくられているものであって、いい上級学校へ進むことを目的とした教育をするということではないというように考えておりますが、例えば独法化された場合には、うちは進学校を目指すのだとか、あるいは今、附属学校からは30人学級にしてくれという強い要望がありますけれども、国立が公立に先んじて30人学級を取り入れていくのは文部省としてはそれはできないという基本方針であります。すなわち、そういうようなことが独法化されたら自由にできるのかと言えば、これはやはり自由には出来ないと考えております。多くの部分が国民の税金で賄われていくというのは変わらない訳ですので、独法化されたら何も文部省から干渉を受けないということではないと考えているところです。

 最後に、教育委員会との交流を私どもは是非進めて頂きたいということで都道府県の方にもお願いをしています。教員養成学部の卒業生の多くは学校の現場に出て行く訳です。俗な言い方をすれば、ユーザーというか、就職の受け皿である都道府県の教育委員会やあるいは学校現場がどういう人材を望んでいるのかということを理解しながら養成していかなければならないのではないかということです。例えば、福島大学にお願いしまして去年の11月に現職教員の大学院での受け入れはいかにあるべきかということでシンポジウムを開きましたところ、都道府県の教育委員会の方から大学院に行っても付加価値がついてこないのではないかという、かなり辛口の批評がございました。そういう本音の議論を繰り返していかないとなかなか良くならないのではないかと考えております。こういう意味で教育委員会の方にも私どもは是非上辺だけの議論ではなくて本当に必要な議論をして欲しいとお願いをしておるところです。先生方、また大学に帰られましたら、このセンター協議会の参加者として是非そういう方面からもご尽力頂ければ幸いと思っております。どうかよろしくお願い致します。



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