独行法反対首都圏ネットワーク

3/21毎日新聞<ニュース キー 2000>省庁再編本格化
(2000.3.23 [he-forum 723] Mainichi Shinbun 03/21)

『毎日新聞』2000年3月21日付

ニュース キー 2000
省庁再編本格化
狙いは「省益優先封じ」 内閣府は人材次第
「独立行政法人」見直しも 反対や別構想 国大協など足並み

2001年1月に現行の1府21省庁を1府12省庁体制へ再編する中央省庁改革に向け、霞が関の準備作業が本格化してきた。「官僚任せから政治家主導へ」のスローガンの下、行政のスリム化など改革が掲げた理念をどう具体化するのか。23日に中央省庁改革シンポジウム「活力ある21世紀に向けて―改革の意義と次の課題」(中央省庁等改革推進本部主催、毎日新聞社後援、午後1時から東京・大手町の経団連ホールで)が開催されるのを前に、今後の課題などを探った。

「統合省庁に対し大きくなった内閣府が各役所に威令を行うため、首相が官邸にどっしりと座って指揮をしないといけない」―。17日の記者会見で、首相の国会答弁の機会が減ったことを聞かれた小渕恵三首相は、こう切り返した。
14日には、統合されて4省になる11省庁の幹部を官邸に呼んでヒアリングも始め、「統合のメリットをはっきりさせ、国民に説明しなければならない」などと指示している。
内閣府は予算編成の基本方針を審議する経済財政諮問会議などを抱え、首相の「頭脳集団」として各省庁にニラミを利かせる。
ただ、内閣府は組織の枠組みが決まっているだけで「どういう役所にするかは人材次第」(政府関係者)の状態。総理府、経企庁、沖縄開発庁と「イメージの違う役所」(官邸関係者)の寄せ集めの感は否めず、財務省など各省庁に対抗できる有能な人材を、各省庁からの出向で集めなければならない悩みもある。
このため、官邸関係者は「特定省庁の指定ポストにならないように、内閣府が主体的に人事を運用しなければならない」と指摘する。
さらに、新設の内閣府事務次官も事務方トップの官房副長官ともども、各省庁との対抗上「大物」を据える必要があり、今後の人選は難航が見込まれる。
首相は周辺に「これまで役所の人事は、役人が決めて大臣は黙ってサインしてきた。官僚にとっては、私も担当大臣もいない方が都合がいいんだ。でも、これからが本当の行革だ」と強調している。
「国もリストラや財政再建を求められている中、『省益優先』の動きを封じたい」(政府関係者)との意向からだ。
 役人の間からは「役所の人材を一番よく知っているのは役所の人間だ」(経済省庁幹部)との声があり、統合に参加する省庁では、事務次官をはじめ幹部人事をめぐる水面下の動きが懸念されるが、首相は「省庁統合で事務次官人事をたすき掛けにしてはならない」とクギを刺している。

◆警察は聖域だった?
国家公安委員会をはじめ公安審査会や中労委など八つの「行政委員会」は、金融庁に統合する金融再生委を除き、すべてそのまま新体制に移行する。だが、新潟県警へのカラ監察問題発覚で、こうした行政委員会制度の機能不全が一気にクローズアップされた。
省庁再編の骨格を決めた政府の行革会議でも、行政委員会制度のあり方そのものをめぐる議論は「欠落していた」(元委員)というが、国家公安委についてだけは1997年5月から8月にかけて激しいやり取りがあった。委員の渡辺恒雄・読売新聞社長が「GHQ(連合国軍総指令部)占領下で警察権力を骨抜きにする意図で設置された。週1回集まってお茶を飲んでいるだけで、重要な役割を果たしていない」と不要論をぶち上げたのだ。これを受け、公安委が機能するよう事務局に法務省、裁判所、弁護士会、市民団体出身など6人を送り込む改革案が検討されたが、警察庁の反対で実現しなかった経緯がある。
警察不祥事では国家公安委員長の自治相との兼任も問題となり、委員長の専任閣僚案も浮上した。ところが小渕内閣では省庁再編を先取りして閣僚数を18人に削減していたため、首相は消極姿勢に終始した。
省庁再編後は閣僚は最大17人まで置ける。これに対し、新省庁のうち法律で閣僚を充てると定めているのは国家公安委を含めても15。枠は2人余っており、国家公安委員長はわざわざ兼任などにしなくてもよさそうだ。

◆「目玉」のはずが・・・
小渕政権が掲げた行政スリム化の目玉は「10年で国家公務員(00年度予定で54万4000人)を25%削減する」こと。その鍵が大学の独立行政法人化だ。
独立行政法人になると、総定員法の管理外となって「削減」と見なされる。削減目標13万6000人のうち、既に独立行政法人化が決まっている90機関・法人だけで、6万7000人ものマイナスを稼いだ。さらに、国立大学職員13万人が独立行政法人に移れば、残る削減目標6万9000人は一挙に達成できる。このため、政府は「大学の自主性を尊重しつつ、03年までに結論を得る」と、同法人化を強く促してきた。
しかし、国立大側は「独立行政法人化は高等教育とは無縁なところで議論されている」(国立大学協会長の蓮實重彦・東京大学長)と強い反対姿勢を変えていない。国大協は今月16日にも、小渕首相に同法人化反対を強く申し入れた。
さらに自民党の教育改革実施本部も今月、「スリム化が目的の独立行政法人では高い教育水準は保てない」として別の「国立大学法人」構想をまとめたほか、文部省も大学の自主性を尊重する特例措置の必要性を認めて3者が見直しで歩調をそろえており、見直しは避けられないとの見方が強い。ただ、新たな法人化案も、それを「削減」と見なすかなどの問題も出てくることが予想され、本来のスリム化との乖離に対する批判も出そうだ。



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