独行法反対首都圏ネットワーク

「独法化反対請願」山形市議会委員会審議を傍聴して
(2000.3.22 [he-forum 720] 「独法化反対請願」市議会委員会審議を傍聴して)

高等教育フォーラム読者 各位  3/22/00

 全大教中央執行委員・山大職組理学部支部書記長 品川 敦紀

 山形大学職員組合が山形市議会に提出していた「国立大学の独立行政法人化に反対する請願」が、17日午後の産業文教委員会で審議されました。結果は、継続審議ということになりました。採択にはなりませんでしたが、不採択を主張する委員も何人かいる中、とりあえず不採択にならなかったのは一応成果かと思います。

 その審議の模様を傍聴して参りましたが、その中で二三思うところが有りましたので、意見を披露させていただきます。

 審議の模様は下記の通りですが、そこで感じられたのは、国立大学の実体について、保守系委員を中心に大きな誤解が有ると言うことです。すなわち、「国立大学は私立に比べ甘えていて努力が足りない」とか「教授は論文を一つも書いてないのがごろごろいる」などといった議論があいも変わらずなされているという事です。

 ただ、有る意味でそういった保守系議員の認識というのは、多くの一般国民の国立大学に対する認識のレベルを如実に反映した面もあると思いますので、国民への啓蒙活動の必要性を益々痛感したところです。

 そこで、その啓蒙活動の一環として、現在の国立大学が以下に少ない予算の中で多数の学生を育て、多数の業績をあげているか、客観的事実となる資料を整理して国民に知らせていく必要があるのではないかと思っているところです。
 例えば、国立大学は甘えているとの議論などに対しては、政府から支出されている予算あたりの論文数(特に購買力平価ベースでの各国比較)だとか、あるいは教授は論文を書いていないと言う議論には、一人当たりの論文数を出すとか、また実際には教授を始め大学教員がいかに忙しいか(特に旧帝大を除く地方大とか中小の大学などで)を、担当する時間割を示すなどする必要が有ろうかと思います。

 客観的事実の前には、そう行った誤解や偏見あるいはためにする議論は吹き飛んでしまいます。各種議員などへの説明の際にもそう言った資料が有れば説得力が有ろうかと思います。

 本来そういったことは全大教本部などがなすべき事かも知れませんが、同本部書記局の弱体な体制では限界があるようですので、ネット読者の皆様の積極的な資料提供など頂ければ、有り難く存じます。

以下は、独法化問題山形大学ネットワークへの市議会傍聴報告です。
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「国立大学の独立行政法人化に反対する請願」審議傍聴報告

 山大職組理学部支部書記長 品川敦紀

 17日午後山形市議会産業文教委員会で「国立大学の独立行政法人化に反対する請願」が審議されました。結論的には、継続審議と言うことになりました。
 審議では、まず酒井委員(保守系会派)から「請願主旨の文章中の「・・・6学部中4学部の9割以上という圧倒的多数・・・」の表現の4学部とは何学部か?ということと「授業料の大幅な値上げが予想されます」ということは値上げされると言うことなのかどうなのかと」いう質問が出されました。しかしこれに答えられる委員がいなかったので、紹介議員に聞くため暫時休会となり、紹介議員の一人の渡辺ゆり子議員(共産)の到着を待って審議が再開されました。
 これは私どもの手落ちですが、渡辺議員(共産)に詳細を充分説明してなかったため、同議員は6学部中4学部は、教育、人文、農学部とあと工学部か理学部だ(実際は理学部が全学最高の100%でした!)と答えました。また、授業料値上げの予想の件については、独立行政法人通則法によって独立法人化によって効率的運営が求められ、評価による予算の配分決定がされたなら、授業料の値上げもあり得るこということだと答えました。
 同議員退出の後審議がつつけられましたが、先の酒井委員(保守系会派)は「今の説明では納得いかない」と発言しました。
 つづいて、須貝委員(保守系会派)から「成果の上がっている大学が生き残るというのは、それでいいのではないか。いい教育・研究のためには独法化したほうがいい」との発言がありました。
 今野委員(共産)からは、「請願に賛成する」との発言がありました。
 次に阿部委員(社民)から「独法化は問題が多い。地元の大学が国立大学として存続することには、一応賛成だ」との発言がありました。
 峯田委員(保守系会派)からは、「良くわからないところが多いので、継続審議にしてはどうか」との発言がありました。
 武田委員(保守系会派)からは、「国立大学としての意義もあるが、国立として甘えがあるのではないか。独法化に賛成なので、請願は不採択にすべきだ」との発言がありました。
 枝松委員(保守系会派)からは、「明治以降の国立大学の歴史の問題もあるが、国立としての甘えがあるのではないか。教授になったら一本も論文を書いてないというのがたくさんいるという話もある。国立でなくしてもいいのではないか」などの発言がありました。
 尾形委員(保守系会派)からは、「不採択にすべきだが、勉強をかねて、公聴会というか参考人を呼んでの勉強会を開いたらどうか」との発言がありました。

 以上のようなやりとりの後、委員長(保守系会派)から「同請願を継続審議とし、参考人を呼んで勉強会をする方向で検討する」という提案が出され、了承されました。

 全体を通じての反省ですが、まず、請願書を出したのが今回が初めてということで不慣れで、事前の根回しが不十分だったという事です。実際に審議する産業文教委員への説明が不足しており、俗説に基づく誤解が多いように思いました。とはいえ、おそらく世の中一般の理解もその程度であり、それを端的に反映したものとも考えられ、市民・議員への啓蒙が不可欠のように思いました。特に、同委員会でリード的発言をする酒井委員(保守系会派)、須貝委員(保守系会派)、枝松委員(保守系会派)への啓蒙は鍵と思われます。
 次に、今回紹介議員になってもらったのが、高橋伸行建設委員長(保守系会派・山形大学元事務官)だったため、同委員会開催により、産業文教委員会での趣旨説明が出来なかったことは残念でした。やはり審議してもらう産業文教委員に紹介議員になってもらわなければいけないと痛感しました。阿部典子委員(社民)あたりに紹介議員に加わってもらうこと、今野委員(共産)などにももっと理解を深めてもらうことも重要だと思いました。
 さらに、説明する立場にある市の教育委員会幹部への啓蒙も重要かと思いました。というのも、同じ委員会に出された「県に30人学級を求める請願」には、市の教育長から色々説明もあり、基本的にどの委員も反対はなく同請願は採択されましたので、この請願のやり方もすこし見習いたいものだと思いました。
 最後に、請願も文書ももう少し練って、揚げ足取りのようなつっこみをされないよう工夫も必要かと思いました。

 とりあえず、簡単にご報告いたします。なお、同委員会は私(品川)と岩鼻本部執行委員が傍聴致しました。



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