独行法反対首都圏ネットワーク

自民党高等教育研究グループの「国立大学法人」案に惑わされてはならない
/独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局(3/15)
(2000.3.15 [he-forum 693] 自民党高等教育研究グループの「国立大学法人」案に惑わされてはならない)

自民党高等教育研究グループの「国立大学法人」案に惑わされてはならない

2000年3月15日
独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局

1.自民党高等教育研究グループ(以下、「麻生委員会」)は2月末以降急テンポで各大学からヒアリングを行っている。また、「麻生委員会」が発足する際、文部省から全国立大学の事務局長宛にe-mailで報告があり(2/25)、議事概要も添付されている。

2.上記の件や周辺情報から、「麻生委員会」の活動には文部省が深く関わっており、事実上、文部省の別働隊の役割を果たしているとの疑いを払拭できない。文部省は、公式には9.20「検討の方向」をなお掲げてはいる。しかし、独立行政法人化は、「25%定員削減の数合わせから発したもの」、「大学に全く適合しない制度」、「大学を破滅に導く」等々の厳しい批判を受け、その破産が明らかになっている。その中で、文部省は「検討の方向」に代わる案を提出できないために、「麻生委員会」の提案という形をとって、独立行政法人化の実現を図っているのではないか。

3.読売新聞(3月6日)が、「麻生委員会」は「国立大学法人」という「新たな枠組み」の検討に入り、「国立大学を独立行政法人から除く」と報道したため、一部に独立行政法人とは全く異なった法人の形態が模索されているのではないか、との幻想が生まれている。
しかし、共同通信の速報(3月6日)や日本経済新聞の報道(3月7日)によれば、「麻生委員会」の案は、通則法に特例法を加味した独立行政法人の実現に他ならない。

4.諸種の情報を総合すると、現在「麻生委員会」で検討されている「国立大学法人」の内容は、概略次のようなものと思われる。

 1)現在の国・公・私立の設置形態を維持し、たとえ国立大学に「法人格」を付与するとしても、国による相当程度の関与を前提とした法人化を検討する。

 2)その「法人化」の内容は、「国立大学法人」と称しつつも、実質的には「通則法+特例法」の範囲を出ない。

 3)中期目標・中期計画の大臣による指示・認可、大臣による学長任命・解任、文部科学省の評価委員会による評価など、大学が強く問題にしてきた論点に関しては、一定の譲歩をする。しかし、「国立大学法人」には、98年大学審議会答申路線の実現が強く求められることになる。第三者評価機関による評価とそれに基づく資源配分、経営担当副学長などの設置、運営諮問会議や評議会の権限強化、教員への任期制の導入、などがその内容である。

 4)高等教育への公的投資を欧米諸国並みに拡充せよ、という大学側の要求には応える姿勢は示す。ただし、その実現の方途については沈黙している。

 5)研究大学・職業大学・教育大学といった大学の種別化、統合再編が求められ、大学間競争を強いるシステムの構築が目指されている。また、地域間格差の拡大に対する検討は行われていない。

 6)以上の内容は、たとえ法律の名称が「国立大学法人法」となっても、基本的に維持されるものと考えられている。

 なお、細部は確定していないものの、「麻生委員会」の唱える「国立大学法人」とは、"通則法+特例法+「国立大学法人」の名称"と規定できるのではないか。

5.「国立大学法人」なる名称に幻惑されてはならない。現状は、「国立大学法人」という美名の下に、単に9.20「検討の方向」を焼き直したものが検討されているに過ぎない。事態は「通則法+特例法」vs「国立大学法人法」の次元には全くない。また、問題の本質は法律や法人の名称にあるのではない。

我々の側が、今大学には何が必要か、何が大学にふさわしい「制度」かを、独立行政法人に対する本質的な批判の地点から議論し、提起することが緊急に求められている。
国大協や各大学は、3月末にまとめられるという「麻生委員会」の結論を受けて、それがいかなる名称であろうとも、独立行政法人化と98年大学審議会答申路線の実現へと雪崩れ込むべきではない。


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