独行法反対首都圏ネットワーク

『東京新聞』2000年3月11日付「筆洗」
(2000.3.14 [he-forum 685] Tokyo Shinbun 03/12)

『東京新聞』2000年3月11日付
筆洗

 難問に頭をひねる受験の春だが「予備校が大学入試問題つくります」には、首をかしげてしまう▼名古屋の大手予備校が来春から大学の委託をうけて、入試問題の作成を代行するというものだ。試験をする側が受験する側に問題をつくってもらうというのは、いかがなものか、と素朴な疑問をいだく▼要は「需要」があるからということらしい。すなわち、大学の側が広範囲にわたって良い問題をつくることが難しくなっている。また、設問ミスがこれほど追及されてくると、できることならその責任から逃れたくなる▼つまりは「そちらで良い問題、つくって」となった。予備校の方は出題予想を業としているから、良問、悪問の研究が進んでいる。出題能力は進化してしまっている。投手の技量を打者が上回るようになって「そんならそちらで投げてみて」となるのに似てはいないか▼基礎的教養を問う大学入試問題の出題能力が落ちたことについては、最近の大学の教養部、教養課程の「整理」が影響しているだろう。教養科目を「無益」なものとしてはずしてしまうことが「出題できる先生がいない」につながった▼今度の「出題外注」の底に流れているのは、効率優先の考えである。需要と供給の経済原理が教育という垣根を越えて流れ出した。大学のビジネス化ともいえようか▼大学の法人化、合併統合も、同じ流れのなかにあるように思われる。予備校にお金を出して出題を頼むということも、それである。教育、研究は単なるビジネスではないことを思い起こしたい。



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