独行法反対首都圏ネットワーク

大学連合 明確なビジョンを前面に(2/29 毎日新聞社説)
(2000.3.2 [he-forum 648] Mainichi Shinbun 02/29)

『毎日新聞』2000年2月29日付社説

2000年02月29日
大学連合 明確なビジョンを前面に

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 大学改革、とりわけ大学間の連携に向けての動きが加速化している。
 一橋、東京外国語、東京工業、東京医科歯科の国立4大学が、2001年4月に「大学連合」を結成することで合意した。国立山梨大学と山梨医科大学は、大学院を共同で設立し、将来的には「統合」も視野に入れて、検討を進めている。

 東京都の石原慎太郎知事も、都立大学、都立科学技術大学など、都立の4大学を統合し、新しい大学を創設する構想を打ち出した。

 根底にあるのは、大学を取り巻く環境の激変に伴う危機感だろう。国立大学の独立行政法人化が現実のものになりつつあることも大きい。

 戦後、大学は拡大に次ぐ拡大を続けてきた。昨年5月1日現在、大学数は622(うち国立99)、学生数は270万人(同62万人)に及ぶ。1955年に比べ、大学数は3倍、学生数は5倍だ。大学・短大進学率は当時10%に過ぎなかったが、今は49%に達している。

 しかし、さしもの拡大熱も限界に来た。少子化の進展で、18歳人口が減り続け、10年後には、希望者はほぼ全員が「どこかの大学」に入れるようになると予想されるに至っている。器の方が過剰という、まったく新しい段階に入りつつある。

 そうなると、大学の多様化は必然だ。かつてのエリート教育の場から大衆教育機関へと性格を大きく変えた大学は、それぞれ個性化、特色化を競うことになる。しかも国際化が進み、競争の対象は、海外の高等教育機関にまで広がっている。自らを魅力ある存在にする努力を怠れば、一挙に沈んでしまう。学生が集まらなければ、存続さえできなくなる。大学といえども淘汰(とうた)されてしまう厳しい時代になってきたのである。

 今回の新たな動きは、そうした状況に敏感に対応したものといえる。大学の魅力アップの一つの方策としての大学間の連携・協力は、これまで単位互換制度を軸に進められてきた。5年の歴史を持つ「大学コンソーシアム京都」(京都にある46大学・短大で構成)では、今年度は約200科目が開講され、6000人が他大学で受講している。当初は私立大学同士だけだったが、文部省の措置により国立大学の参加も可能となった。この単位互換制度は、質量ともに年々充実し、全国に広がっている。

 国立4大学の連合構想は、単位互換にとどまらず、学際的な共同授業を設定し、恒常的な編入学制度を想定するなど、さらに踏み出した。受験生は何を学びたいかより、偏差値を基準に大学を選ぶことが多いが、こうしたシステムが整えば、選択の余地が広がり、入試や、硬直的・閉鎖的な大学制度にも影響を及ぼす可能性がある。注目したいところだ。

 大学改革は、今後さらに進むだろうが、大切なのはどんな大学にしたいのかというビジョンをはっきりさせることだ。4大学のように「世界に通用する大学」を目指すところも出てきてほしいが、世界水準はあきらめて、例えば教育から就職まで一人一人を丁寧に指導することを売り物にする大学があってもいい。

 ただ受験生にアメをばらまくような目先の生き残り策や、経費削減しか頭にない後ろ向きの改革では、おそらく通用しないだろう。これは、国立大学の独立行政法人化を考えるうえでも共通する課題である。

(毎日新聞 2000/02/28 23:12:00)



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