独行法反対首都圏ネットワーク

国立大学の法人化・市場原理導入は地方にしわ寄せ(2/17福井新聞)
(2000.2.29 [he-forum 641] Fukui Shinbun 02/17)

『福井新聞』2000年2月17日付論説

国立大学の法人化・市場原理導入は地方にしわ寄せ
2000年2月17日

 国立大学の法人化に対し、福井大をはじめ、全国の大学が反発している。文部省は行政改革の一環として独立行政法人化を大学に適用できないかを提示、四月にも方針を出す考え。予算の重点配分なども志向しているといわれ、地方の国立大がしわ寄せを受ける可能性がある。効率化や単純な評価だけで地方国立大が縮小される道を開くようなことは好ましくない。地方文化の担い手でもある地方国立大学には教育・研究面はもちろん、生涯学習や地域プランニングのアドバイザーとして充実させることが必要だ。

 国家財政が危機的状況になろうとしているとき、国家公務員のスリム化を柱とする、行政改革は推進しなければならない。試験研究機関、博物館、美術館などを法人化する計画で二〇〇一年度から四年間で九十の国の機関と業務が独立行政法人に移行する。

 ところが昨年秋になって、文部省は国立大も法人化に向けての検討を行い二〇〇〇年度の早い段階で結論を出したいとの方針を打ち出した。法人化により文部省は各大学からの聴取などに基づき、業務上の目標を決め、効率の悪いところへの予算削減を示唆している。

 大学に市場原理の導入については議論のあるところだ。大学が教育や研究で成果を上げることは当然だが、それをどのように評価するのか。一律に大都市の著名大学と比較し、地方の大学への予算カットとなれば問題がある。政府は地方分権、一極集中化の緩和をいいながら逆行することになる。大都市圏の大学が持つ機能の一部を地方に移転させる発想があっても良いくらいだ。

 しかし、政府が進めている国立大学の独立行政法人化が実現してしまうと各大学とも効率化を追求せざるを得なくなり、教育環境をゆがめてしまう恐れもある。また、研究部門でも基礎研究がおろそかになり、わが国の科学技術力衰退にならないか心配だ。

 国立大学の場合、地方に設置されている大学のほうが地域に対する貢献度は大きい。一概には比較できないが、教職員、学生を合わせて四千人規模の福井大学は福井市において大きな存在だ。さまざまな形で地域の活性化の一助になってきた。

 少子化の時代、国立大の改革は進めなければならない。県民に生涯学習の機会を与えることでその機能を増すこともできるはずだ。

 地域情報化の担い手として、人材育成機関として大学への期待は大きい。多くの教育者を育ててきた役割は今後も変わらない。小中学校が抱える問題をともに考える機関として、地域に国立大学は必要と考える。地域住民を含めた議論なしに制度を変えてしまうことには反対していきたい。同時に国立大の独立行政法人化問題で福井大や福井医大がどうなるのか注視していく必要がある。


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